お金を活かす(住まいと資産の活用)

マンション売却で後悔しないための全知識|「高く売る人」と「安く売る人」の決定的な違いとは?

「長年住んだマンションを売却して、新しい生活を始めたい」「今のマンションを高く売って、次の住み替え資金を作りたい」そう考えたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「どこに頼めば一番高く売れるのか?」という悩みです。

しかし、SNSや不動産売却のコミュニティなどで交わされる「集合知」を紐解くと、一つの残酷な事実が浮かび上がります。それは、「不動産会社選びを間違えただけで、数百万円単位の損失を出してしまった」という声が後を絶たないことです。

「大手だから安心だと思ったのに、3ヶ月経っても案内すら入らなかった」
「査定額が一番高い会社に決めたのに、結局大幅に値下げすることになった」

こうした失敗の多くは、マンション売却の「仕組み」を知らないまま、不動産会社の言葉を鵜呑みにしてしまうことに起因します。マンション売却は、単に「家を売る」という作業ではありません。適切な戦略を立て、市場の動きを読み、賢く立ち回るための「技術」が必要です。

本記事では、資産形成の観点から「損をしないマンション売却」を実現するために必要な知識を整理しました。「難しい言葉は苦手だけど、大切なお金を守りたい」という方に向けて、価格が決まる仕組みから、失敗しない準備の進め方までをステップ形式で解説します。この記事を読み終える頃には、自信を持って最初の一歩を踏み出せるようになっているはずです。


マンションの売却価格はどう決まるのか?仕組みを正しく理解する

マンションを売却しようと考えたとき、多くの方はまず「自分の家がいくらで売れるのか」を気にします。しかし、ここで最も重要なのは「査定価格」と「成約価格(実際に売れる価格)」は全く別物であるという理解です。

価格を決めるのは不動産会社ではなく「市場」である

まず大前提として理解しておきたいのは、マンションの価格を最終的に決めるのは、不動産会社でも売主でもなく「市場(買い手)」であるということです。

不動産会社が出してくる「査定額」は、あくまで「これくらいの価格なら、おおよそ3ヶ月以内に売れるだろう」というプロによる予想価格に過ぎません。中古マンションを探している検討者は、ポータルサイトなどで常に複数の物件を比較しています。「同じエリアで、同じような広さなら、少しでも安くて綺麗なほうがいい」という買い手のシビアな視点にさらされた結果、市場価格から外れた物件は、検討の土台にすら乗らないのが現実です。

査定額の高さだけで選ぶのが危険な理由

「1円でも高く売りたい」と願う売主心理を逆手に取った、不動産業界特有の「高預かり(たかあずかり)」という手法に注意が必要です。これは、媒介契約を取りたいがために、相場を大きく上回る「売れもしない高額査定」を提示し、契約を結ばせる手法を指します。

  • 高預かりのリスク:
    1. 売り出しから数ヶ月経っても全く売れない
    2. 「反響がないので値下げしましょう」と、結局相場以下まで下げさせられる
    3. 最も注目される「売り出し直後」のチャンスを逃す

「査定額が高い=優秀な会社」とは限りません。提示された金額に対して、「なぜこの金額なのか?」という明確な根拠(近隣の成約事例など)を提示できるかどうかが、信頼のバロメーターとなります。

買い手目線で考える「成約価格」の決まり方

実際の成約価格は、主に以下の3つの要素のバランスで決まります。

要素 内容
近隣の競合状況 同時期に同じマンション内や近隣で売り出されている物件の価格。
住宅ローンの壁 買い手が銀行から借り入れできる限度額。相場を逸脱するとローン審査が通らなくなる。
物件の希少性 「南向き」「角部屋」「眺望が良い」「管理状態が良い」などの付加価値。

特に資産形成を意識するなら、「自分の希望価格」ではなく「買い手がローンを組んでまで買いたいと思うか」という客観的な視点を持つことが、早期売却と高値売却を両立させる近道です。


高く売れる人が必ずやっている「売却前の徹底準備」

マンション売却の成功は、不動産会社に相談する前の「事前準備」で8割決まると言っても過言ではありません。何の知識も持たずに相談へ行くと、主導権を不動産会社に握られ、不利な条件で進められてしまうリスクがあるからです。

自分で「周辺相場」を調べる3つの公的ツール

不動産会社に査定を依頼する前に、まずは自分自身で「だいたいの相場」を把握しておきましょう。現在では、プロも参考にしている情報を一般の人でも簡単に閲覧できるツールが整っています。

  1. レインズ・マーケットインフォメーション
    指定流通機構(レインズ)が保有する、過去の実際の成約価格を確認できるサイトです。
  2. 土地総合情報システム(国土交通省)
    不動産の取引当事者へのアンケート結果に基づいた、実際の取引価格が公開されています。
  3. 各不動産ポータルサイト(SUUMO、LIFULL HOME'Sなど)
    現在進行形で「ライバル」となる物件がいくらで売り出されているかを知るのに最適です。

これらのツールを使って、自分のマンションと同じ築年数、広さ、駅距離の物件が「いくらで売り出され、いくらで成約しているか」をメモしておきましょう。この「自分なりの基準」があるだけで、不動産会社の査定額の妥当性を判断できるようになります。

余裕を持った売却スケジュールの組み方

売却を急ぎすぎると、買い手からの値引き交渉に対して強気に出られず、結果として安く売らざるを得なくなることがあります。一般的なマンション売却には、3ヶ月から6ヶ月程度の期間を見ておくのが理想的です。

  • 準備・査定(2週間〜1ヶ月): 相場調査、会社選び、書類準備
  • 売り出し・内覧(1ヶ月〜3ヶ月): 広告開始、見学対応、価格交渉
  • 契約・引渡し(1ヶ月〜2ヶ月): 売買契約の締結、住宅ローン手続き、引越し

「○月までに売らなければならない」というデッドラインが迫っていると、焦りが表情や対応に出てしまい、買い手優位の交渉を許してしまいます。スケジュールには最低でも半年のゆとりを持つことが、精神的な余裕、ひいては手残り資金の最大化につながります。

住み替え(買い先行・売り先行)のメリット・デメリット

次に住む家を探している場合、「先に売るか(売り先行)」「先に買うか(買い先行)」の選択は非常に重要です。

手法 メリット デメリット 向いている人
売り先行 資金計画が確定するため、予算オーバーを防げる。納得いくまで価格を粘れる。 仮住まいの費用がかかる可能性がある。新居探しを急ぐ必要がある。 住宅ローンの残債が多い人。資金計画を確実にしたい人。
買い先行 納得いくまで新居を選べる。引越しが一度で済むため手間と費用が抑えられる。 二重ローンのリスクがある。早く売るために値下げを迫られる可能性がある。 資金に余裕がある人。住みたい物件が明確に決まっている人。

資産形成を優先し、損を最小限に抑えたいのであれば、「売り先行」が基本となります。売却価格が確定してから新居を探すことで、無理のないローン計画を立てることができ、家計の安定を守ることができるからです。


不動産会社選びが「手残りの現金」を左右する

マンション売却において、不動産会社は単なる仲介役ではなく、あなたの資産を最大化するための「共同経営パートナー」に近い存在です。会社選びの基準を「知名度」や「査定額の高さ」だけにしてしまうと、最終的に手元に残る現金が数百万円単位で減ってしまうリスクがあります。

1社だけの査定が「大きな損失」を招くリスク

「昔から知っている会社だから」「近所にある大手だから」といった理由で、1社だけに査定を依頼し、そのまま契約してしまうのは非常に危険です。

不動産価格に絶対的な「定価」は存在しません。複数社の査定を比較することで、初めて自分の物件の「適正な相場観」が身に付きます。1社のみの査定では、その会社が提示した金額が「わざと低く見積もって早期売却を狙ったもの」なのか、「契約欲しさに高く見積もったもの」なのかを判別する術がありません。少なくとも3〜5社には査定を依頼し、各社の意見を聞き比べるのが鉄則です。

「高く売れます」に要注意

査定時に「他社よりも300万円高く売れます!」と威勢の良い言葉を並べる会社には、慎重になる必要があります。前述の通り、不動産会社は「買い取る」のではなく「仲介」する立場です。市場価格を無視した高値で売り出しても、結局は買い手がつかず、数ヶ月後に「大幅な値下げ」を提案されることになります。

  • チェックポイント:
    • その価格で売れる「客観的な根拠」があるか?
    • 周辺の成約事例(似た条件の物件がいくらで売れたか)を提示しているか?
    • 売れなかった場合の「次の一手」を想定しているか?

「媒介契約」の種類と、自分に合った選び方

不動産会社と結ぶ契約には3つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分のライフスタイルや売却方針に合ったものを選びましょう。

項目 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
契約できる社数 複数社OK 1社のみ 1社のみ
自分で買主を探す OK OK NG
報告義務 なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上
特徴 競争原理が働くが、会社の注力度は下がる傾向。 窓口が一つで楽。会社のサポートが手厚い。 最も拘束力が強い。早期売却への責任感が強い。

「損をしたくない」と考える多くの方に選ばれているのは、バランスの良い「専任媒介契約」です。窓口を1社に絞ることで、担当者の責任感が増し、広告宣伝費もしっかり投入してもらいやすくなります。


戦略ひとつで差がつく!売り出しから成約までの実践ポイント

媒介契約を締結し、いよいよ売り出しが始まります。ここからは「ただ待つ」のではなく、戦略的に市場へアプローチしていくフェーズです。

成約率を高める「売り出し価格」の設定ロジック

売り出し価格を決めるとき、端数(はすう)を利用した「心理的価格設定」は非常に有効です。例えば、3,000万円で売り出すよりも、2,980万円と設定したほうが、購入検討者の検索フィルターに引っかかりやすくなります。多くの検討者は「3,000万円以下」という条件で検索するため、3,010万円で設定してしまうと、ターゲット層に物件情報が届かなくなるのです。

「いつ値下げするか」の判断基準を事前に決めておく

売り出しから1ヶ月経っても内覧予約が入らない場合、市場からは「価格が高い」と判断されている可能性が高いです。「いつまでに、いくら反響がなければ、いくら下げるか」という出口戦略を担当者と事前に共有しておくことで、感情に流されず冷静な判断が可能になります。

  • 値下げのタイミング目安:
    • 2週間〜1ヶ月: ポータルサイトの閲覧数(PV数)が少ない場合、写真やキャッチコピーを見直す。
    • 1ヶ月〜2ヶ月: PV数は多いが内覧が入らない場合、価格を100万〜200万円程度調整する。

内覧対応で見られているのは「部屋の状態」だけではない

内覧(物件見学)は、売却における最大のプレゼンテーションの場です。買い手は「自分がここで暮らす姿」をイメージしに来ます。

  • 第一印象を磨く: 玄関の靴を片付ける、カーテンを開けて部屋を明るくする、水回りの水滴を拭き取る。これだけで印象は劇的に変わります。
  • プロのクリーニングを検討する: 特にお風呂やキッチンなどの水回りが汚れていると、それだけで「マイナス100万円」の印象を与えてしまうことも。数万円のハウスクリーニング代を惜しまないことが、結果的に高値成約をグッと引き寄せます。

マンション売却でやってはいけない「5つのNG行動」

売却活動が始まると、大きなお金が動くプレッシャーから、冷静な判断ができなくなるケースが多々あります。ここでは、特によくある失敗(NG行動)を5つ整理します。

1. 希望価格にこだわりすぎて「旬」を逃す

マンションが最も注目されるのは、ポータルサイトに掲載された直後の「売り出しから2週間〜1ヶ月」の間です。この「旬」の時期に、相場から乖離した高値で放置してしまうと、感度の高い購入検討者たちに「この物件は高いな」という印象を与え、二度と検討の土台に乗らなくなってしまいます。

2. 不動産会社に「任せきり」にして報告を確認しない

「プロに任せているから安心」ではなく、定期的な活動報告書で「問い合わせ数」「内覧数」「検討者の反応」を数値でチェックしましょう。反響が少ない場合、広告の出し方に問題がないか担当者と協議する必要があります。

3. リフォームをしてから売り出す(原則NGの理由)

リフォーム費用を売却価格にそのまま上乗せできるとは限りません。最近の中古マンション購入者は、「自分好みにリフォームしたい」というニーズを持っており、売主が施したリフォームがミスマッチになるリスクがあるからです。

4. デメリット(告知事項)を隠して売却する

雨漏りや近隣トラブルなどの不都合な事実こそ、契約書に明記しましょう。現在の法律では、引き渡し後に不具合が見つかった場合、売主が修繕費用を負担する「契約不適合責任」を問われるリスクがあるからです。

5. 感情的になって最初の買付証明書を断る

売り出し直後の検討者は、そのエリアでずっと探していた「最も購買意欲の高い人」です。最初の大切な縁を逃した結果、その後数ヶ月間誰からも申し込みが入らず、結局100万円以上下げて売ることになった……というケースは枚挙にいとまがありません。


まとめ|納得のいく売却は「準備8割」で決まる

マンション売却は、人生の中でも最大級の「資産の組み換え」です。成功させるためには、不動産会社任せにせず、自分自身が知識という武器を持つことが欠かせません。

本記事の振り返りと「明日からやるべきこと」

  1. 「相場」を自分の目で確認する: 公的ツールを使い、客観的な数字を把握する。
  2. 「パートナー(不動産会社)」を比較する: 査定額の高さではなく、根拠の妥当性で選ぶ。
  3. 「戦略」を持って売り出す: 市場の反応に合わせて柔軟に動く。

マンション売却で得た資金を最大限に活かし、次の住まいでも「資産価値」を維持するためには、購入時の視点も欠かせません。もし「次はどんなマンションを選べば損をしないのか?」と気になっている方は、ぜひ以下の記事も併せてチェックしてみてください。

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【出典・参照媒体】

-お金を活かす(住まいと資産の活用)