お金を増やす(資産運用の基本)

新NISAは子育て世帯に向いてる?教育費と家計から考える現実的な使い方

「将来のために何かしないと…」
そう頭では分かっていても、日々の家事や育児、仕事に追われ、具体的な行動に移せていないという家庭は少なくありません。

特に新NISA(少額投資非課税制度)は大きな話題になっていますが、制度が恒久化・無期限化されたことで、逆に「いつ始めればいいのか」「教育費や住宅ローンがある中で、投資に回すお金なんてあるのか」という判断が難しくなっています。

読者からよく聞かれる声(30代・子育て世帯 Aさん)
「周りの友人が新NISAを始めたと聞いて焦っています。でも、これから子供の教育費がかかるし、住宅ローンも残っている。もし投資で損をして、いざという時にお金が足りなくなったらと思うと怖くて踏み出せません。」

SNSなどの口コミを見ても、「子育て世帯こそ新NISAを活用すべき」という意見と、「大事な教育資金をリスクに晒すべきではない」という意見が混在しており、結局どちらが正解なのか迷ってしまうケースが目立ちます。

本記事では、新NISAの制度そのものの解説ではなく、「子育て世帯が新NISAとどう向き合うべきか」という判断基準を整理します。「やる・やらない」を決めるための材料として、リスクとメリットの両面から解説します。

子育て世帯が新NISAに不安を感じる理由

独身時代や子供が独立した後とは異なり、子育て中の家計には「不確実性」がつきまといます。制度の良し悪し以前に、生活の実情として「投資に踏み切れない理由」がいくつか存在します。まずはその不安の正体を整理しましょう。

教育費がいつ、いくら必要か分からない

最大のリスク要因は「教育費の不透明さ」です。
公立に進むか私立に進むか、文系か理系か、あるいは留学や浪人といった想定外のルートに進むかによって、必要となる資金額は数百万〜1千万円単位で変動します。

  • 時期の制約: 大学入学時など、支払いの期限(デッドライン)が決まっている。
  • 金額の変動: 進路変更により、急遽まとまったお金が必要になる可能性がある。

文部科学省の調査によると、私立大学の初年度納付金(授業料、入学金、施設設備費等の合計)の平均は約148万円となっています。さらに、自宅外通学となれば仕送り費用も加わります。「とりあえず100万円あればなんとかなる」という感覚では、いざという時に不足する可能性があります。

投資の基本は「長期・分散・積立」ですが、これは「当面使う予定のないお金」であってこそ精神的に安定して続けられるものです。「数年後に必要になるかもしれないお金」を投資に回すことに対し、元本割れのリスクを懸念するのは、家計管理として非常に健全な感覚と言えます。

住宅ローン・生活費が優先になりがち

現実的なキャッシュフロー(現金の流れ)の問題もあります。
子育て世帯の多くは、住居費(家賃や住宅ローン)と教育費、食費などの生活費で毎月の収入の大半が固定されています。

金融庁などが推奨する資産形成のステップでも、まずは生活防衛資金(生活費の数ヶ月分〜)の確保が最優先とされていますが、子育て中は突発的な出費(医療費、習い事、家電の買い替え等)も多く、なかなか「余剰資金」が生まれないのが実情です。

「毎月カツカツの中で、さらに投資にお金を回して大丈夫なのか?」という不安は、家計を守ろうとする責任感の裏返しでもあります。

「投資=余裕がある家庭のもの」という思い込み

「投資は資産家や、お金に余裕がある人がやるもの」というイメージが、心理的なハードルになっているケースもあります。

確かにかつての投資は、ある程度まとまった資金が必要なものでした。しかし、現在の新NISA(つみたて投資枠など)は、月100円や1,000円といった少額から始められるよう設計されています。

それでも、「生活に余裕がないのに投資をする」ということ自体に罪悪感や恐怖心を感じてしまう心理は、多くの投資初心者に共通するものです。これは知識不足というよりは、「損をしたくない」という防衛本能によるものでしょう。

新NISAと教育費は相性がいいのか?

では、子育て世帯の最大の関心事である「教育費」を作る手段として、新NISAは適しているのでしょうか。
結論から言えば、「資金を使う時期までの長さ」によって向き不向きがはっきりと分かれます。

教育費は「使う時期が決まっているお金」

教育資金、特に大学費用などは「使う時期」が明確に決まっています。子供が18歳になるタイミングで確実にお金を用意しておかなければなりません。

投資信託などで運用する場合、相場の変動リスクを避けることはできません。もし、大学入学のタイミングでたまたま世界的な不況が起き、株価が暴落していたらどうなるでしょうか。
「今は損をしているから引き出したくない」と思っても、入学金や授業料の支払いは待ってくれません。結果として、資産が目減りした状態で売却(現金化)せざるを得ない可能性があります。

投資におけるリスクと教育費の性質
項目 教育費の特徴 投資(株式・投信)の特徴 相性
時期 18歳など決まっている 売り時は自分で選ぶべき △(タイミングが合わないリスク)
金額 進路により必須額がある 元本保証ではない △(不足するリスク)
流動性 必要時にすぐ現金化したい 数日で現金化可能 ○(手続き上は問題なし)

このように、「必ず使う時期が決まっているお金」を「全額」投資で用意しようとするのは、リスクが高いと言わざるを得ません。

それでも新NISAが選択肢になるケース

一方で、新NISAが教育費準備に全く使えないわけではありません。以下の条件に当てはまる場合は、有力な選択肢となります。

  1. 子供がまだ小さい(0歳〜数歳)
    • 大学入学まで15年以上の期間があれば、長期運用の効果で元本割れのリスクを低減しやすくなります(過去の長期積立分散投資のデータ上、保有期間が長いほどリターンが安定する傾向があります)。
  2. 教育費の一部として考える
    • 「最低限必要な学費」は現金や保険で確保し、「プラスアルファの費用(仕送りや留学、大学院など)」をNISAで準備する、という二段構えの考え方です。

時間が味方につけられる場合、単に銀行に預けておくだけではインフレ(物価上昇)によってお金の実質的な価値が目減りするリスクに対抗する手段として、新NISAは有効です。

学資保険・貯蓄との役割分担

「学資保険か、新NISAか」という二者択一で悩む声も多く聞かれますが、これらは対立するものではなく、役割が異なります。

  • 学資保険・預貯金:守りの資産
    • 特徴: 元本割れリスクが低い(または契約条件で確定している)、強制的に貯まる。
    • 役割: 「何があっても絶対に確保しておきたい最低ライン」の準備。
  • 新NISA:攻めの資産
    • 特徴: インフレに強い、高いリターンが期待できる(リスクあり)、資金拘束がなくいつでも解約可。
    • 役割: インフレ対策、将来のゆとり、教育費の上振れ分への備え。

子育て世帯においては、「確実性」を現金や保険で確保しつつ、無理のない範囲で新NISAを取り入れて「成長性」も持たせるという、ハイブリッドな運用が現実的な解の一つとなります。

家計を壊さずに新NISAと付き合う考え方

「投資を始めるなら、ある程度まとまった金額じゃないと意味がないのでは?」
そう考える方もいますが、子育て世帯にとって最も重要なのは「リターン(利益)」よりも「家計の安全性」です。家計を危険にさらしてまで行う投資は本末転倒です。

ここでは、無理なく制度と付き合うための「守り」の基準を設定しましょう。

まず守るべきは生活防衛資金

投資にお金を回す前に、必ず確保しておきたいのが「生活防衛資金」です。これは、急な病気や怪我、失業など、人生のトラブルに備えるための現金のことを指します。

一般的な目安としては「生活費の3ヶ月〜6ヶ月分」と言われますが、子育て世帯の場合はもう少し手厚く見積もっておくのが安心です。

  • 独身・共働き(子なし): 生活費の3ヶ月分程度
  • 子育て世帯(特に片働き): 生活費の6ヶ月〜1年分程度

例えば、毎月の生活費が30万円の家庭なら、最低でも180万円〜360万円程度は、銀行預金など「すぐに引き出せる形」で持っておくべきです。この土台ができて初めて、投資という「リスクを取る行為」が可能になります。

毎月いくらなら「なかったこと」にできるか

積立額を決める際、「家計簿の余った分を全額」とするのは危険です。おすすめの考え方は、「最悪、ゼロになっても今の生活が変わらない金額」を設定することです。

これを「なかったことにできる金額」と呼びます。

  • 月3,000円: 外食1〜2回分
  • 月5,000円: サブスクや嗜好品の見直し分
  • 月10,000円: 児童手当の一部

「これくらいなら、もし全部なくなっても明日のご飯には困らない」と思える金額が、その家庭にとっての適正な投資額です。新NISAのつみたて投資枠は、証券会社によっては月100円から設定可能です。「増やす」ことより「慣れる」ことを優先し、極端に低い金額からスタートするのも賢い戦略です。

途中でやめても失敗ではない

iDeCo(個人型確定拠出年金)は原則60歳まで資金を引き出せませんが、新NISAは「いつでも売却(現金化)可能」であり、「積立の停止・減額」も自由です。

  • 「今月は出費が多いから積立をお休みする」
  • 「車検があるから一部を解約して現金にする」

これらは決して「投資の失敗」ではありません。ライフイベントに合わせて柔軟に使えるのが新NISAの強みです。「一度始めたら絶対に続けて、枠を埋めなければならない」というプレッシャーを感じる必要はありません。

新NISAは「やらない」という選択もあり

ここまで新NISAの活用法をお伝えしてきましたが、すべての家庭が今すぐ始めるべきとは限りません。状況によっては「今はやらない」と決めることが、最も賢明な家計判断になることもあります。

新NISAを急がなくていい家庭の特徴

以下のような状況にある場合、無理に投資を始める必要はありません。まずは家計の地盤を固めることが、結果的に資産形成の近道になります。

  1. 生活防衛資金が貯まっていない
    • まずは現金を貯めることが最優先です。
  2. 近い将来(1〜3年以内)に大きな出費がある
    • 住宅購入の頭金、車の買い替え、入学費用などが控えている場合、元本割れリスクのある投資に資金を移すのは推奨されません。
  3. 高金利の借入(カードローン等)がある
    • 投資のリターンよりも、借金の利息の方が高くなるケースがほとんどです。返済を優先しましょう。

周囲の成功談は参考程度でいい

SNSや職場では「NISAでこれだけ増えた!」という景気の良い話が聞こえてくることがあります。しかし、他人の成功体験は、その人がたまたま相場の良い時期にリスクを取った結果に過ぎません。

  • 家庭状況の違い: その人には十分な余剰資金があったかもしれません。
  • 時期の違い: 始めたタイミングが良かっただけかもしれません。

他人の「結果」だけを見て焦る必要はありません。ご自身の家庭のリスク許容度(どれくらい損に耐えられるか)は、他人とは全く異なります。

やらない=損、ではない理由

「投資をしないとインフレで資産価値が減るから損だ」という意見もあります。これは経済学的には一理ありますが、絶対的な正解ではありません。

投資をしなければ「資産が増えるチャンス」は逃しますが、同時に「資産が減るリスク」も回避しています。
子育て中は精神的な安定も重要です。「株価が気になって仕事や育児に集中できない」という状態になるくらいなら、元本保証の預貯金で堅実に管理するのも立派な戦略です。

「新NISAをやらない」という選択は、怠慢ではなく「リスク管理」の一つです。

それでも新NISAを検討するなら、次に考えること

リスクやデメリットを理解した上で、「やはり将来のために少しでも増やしたい」と考えるなら、以下のステップで慎重に進めていきましょう。

少額から試すという考え方

最初から「老後資金2000万円」のような大きな目標を立てる必要はありません。まずは「お試し」感覚でスタートすることをお勧めします。

ネット証券などを利用すれば、口座開設費や維持費は無料です。まずは口座だけ作り、月数千円程度の積立設定をして、実際の値動きを体感してみる。
「これくらいなら怖くないな」と実感できてから、徐々に金額を増やしていけば十分です。

制度を「完璧に使おう」としない

新NISAには、一人あたり最大1,800万円の非課税保有限度額があり、年間最大360万円まで投資できます。
しかし、これはあくまで「上限」であり、「埋めなければならないノルマ」ではありません。

一般的な子育て世帯で、年間360万円もの余剰資金を捻出できるケースは稀です。
「枠が余っているともったいない」と考えるのではなく、「自分たちのペースで使える枠だけ使う」というスタンスで十分恩恵を受けられます。

家庭ごとに答えが違うという前提

新NISAはあくまで「道具」です。
包丁が料理に役立つ道具である一方で、使い方を誤れば怪我をするのと同じように、投資も使い方次第です。

  • A家: 教育費は全額貯金、老後資金だけNISA
  • B家: 子供が小さいので教育費の一部もNISAで運用
  • C家: 今は住宅ローン返済に集中し、NISAは口座開設のみ

どれも正解です。
「みんながやっているから」ではなく、「我が家にはこれが必要だから」という納得感を持って判断すること。それが、将来の安心を作る第一歩となります。


出典・参考リンク

-お金を増やす(資産運用の基本)