「せっかく始めた新NISAの画面が真っ赤……」「このまま資産がゼロになったらどうしよう」と、夜も眠れない不安を感じていませんか?
投資信託や株の価格が急落する「暴落」は、どれだけ準備をしていても心に大きなダメージを与えるものです。特にお子さんの教育資金や老後の備えなど、大切な家計を預かっている世代にとって、数字上のマイナスは単なる記号以上の重みがあります。
「支払いを減らして貯金に回したくて投資を始めたのに、逆に減ってしまった……」
そう話すのは、30代会社員のAさん。家計のために始めた積立投資でしたが、最近の不安定な相場を見て、怖くなって解約を考えているといいます。
SNSやネット掲示板を見ても「今は売るべき」「いや、買い増しのチャンスだ」と正反対の意見が飛び交い、結局どうするのが正解なのか分からず、余計に不安が募っている方が多いのが現実です。
結論からお伝えすると、暴落時に最も大切なのは「感情で動かないこと」、そして「あえて見ない勇気を持つこと」です。本記事では、損を避けるための合理的な判断基準と、暴落に負けない家計のリスク管理術を整理して解説します。
投資で暴落が起きたとき、不安になるのは「正常な反応」
株価が急落した際、心拍数が上がったり、仕事中もスマホで評価額をチェックしてしまったりするのは、あなたが投資に向いていないからではありません。人間として非常に「正常な反応」です。まずは、なぜこれほどまでに不安を感じるのか、その正体を整理してみましょう。
暴落は投資の失敗ではない理由
まず知っておきたいのは、「評価額が下落すること」と「投資に失敗すること」は別物であるという点です。
長期投資の歴史を振り返ると、数年から十数年に一度、30%〜50%近い大きな暴落が発生しています。しかし、優良な資産(世界経済全体に分散されたインデックスなど)を持ち続けた場合、過去のデータ上ではいずれも暴落前の水準を回復し、さらに成長を続けています。
- リーマン・ショック(2008年): 世界的な金融危機で株価が半減。
- コロナ・ショック(2020年): 短期間で急落したが、その後の回復も早かった。
これらの局面で「失敗」した人は、暴落したから負けたのではなく、「暴落した瞬間に売って損失を確定させてしまった」人です。持ち続けている限り、それは「一時的な値下がり」に過ぎません。
家計を背負うと不安が増幅する理由
個人の趣味で行う投資と、家族の未来のための資産形成では、精神的なプレッシャーが全く異なります。
「このお金がなくなったら、子供の大学費用はどうなるのか」「老後の生活が破綻するのではないか」という不安は、あなたの責任感の強さの表れでもあります。家計を預かる立場であれば、資産が10%減っただけでも、それは単なる数字の減少ではなく「将来の選択肢が削られる恐怖」として感じられてしまうのです。
もし、今の含み損を見て食事が喉を通らないほどであれば、それは「性格の問題」ではなく、「現在の家計におけるリスク許容度(どれくらいの損失に耐えられるか)」の設定を見直すサインかもしれません。
「冷静でいられない自分」を責めなくていい
行動経済学の世界には、人間は「1万円得した喜び」よりも、「1万円損した痛み」を2倍近く強く感じるという「損失回避」という性質があることが示されています。
損失回避性(そんしつかいひせい)とは?
利益から得られる満足よりも、同額の損失から受ける苦痛の方が大きく感じられ、損を避けるために非合理的な行動をとってしまう人間の心理傾向のこと。
つまり、マイナスを見て「怖い」「逃げたい」と思うのは、人間の脳に備わった生存本能です。投資のプロでさえ、暴落時には冷や汗をかきます。大切なのは、冷静になれない自分を責めることではなく、「本能が自分を惑わせている」と客観的に認識することです。
合理的な判断としての「見ない勇気」は逃げではない
暴落時に多くの人がやってしまうのが、「1日に何度も証券口座にログインして、資産額を確認すること」です。しかし、実はこれが最も判断を狂わせる原因になります。
なぜ暴落時ほど判断を誤るのか
情報を集めれば集めるほど、安心できるかと思いきや、事態は逆転します。暴落時のニュースやSNSは、クリック率を稼ぐために「世界経済の終わり」といった過激な見出しであふれかえります。こうした刺激的な情報(ノイズ)を頻繁に浴びると、脳はパニック状態に陥ります。
パニック状態の脳は、長期的な視点を失い、「今すぐこの苦痛(含み損)から逃れたい」という短期的な欲求を優先させます。その結果、最もやってはいけない「安値での売却」に踏み切ってしまうのです。
相場を頻繁に見ない方がいい理由
「見ないこと」は、決して現実逃避ではありません。むしろ、「長期的な投資方針を維持するための最も合理的な戦略」です。
- メリット1: 感情的な売買を防ぎ、複利の効果を最大化できる。
- メリット2: 脳のメモリを投資以外の「家計の節約」や「自己研鑽」に回せる。
- メリット3: 余計なストレスを減らし、健康的な生活を維持できる。
資産形成の目的は「幸せに暮らすため」のはずです。投資のせいで今の生活がギスギスしてしまっては本末転倒といえるでしょう。
「何もしない」=「思考停止」ではない
暴落時に「何もしない」でいることは、非常に強い意志を必要とする立派な「行動」です。あらかじめ決めたルール(例:毎月3万円を積み立てる)を淡々と継続することは、相場の波に翻弄されるよりも遥かに難しく、価値のあることです。「今は嵐が過ぎ去るのを待つ時期だ」と決め、アプリを閉じることは、立派なリスク管理の一環なのです。
投資の暴落時にやってはいけない3つのNG行動
焦りからくる行動が、かえって致命的な損失を招くことがあります。家計を守るために避けるべき3つのNG行動を整理します。
1. 狼狽売り(感情に任せた売却)
暴落時に最も避けるべきなのが、パニックになって全ての資産を売却してしまう「狼狽(ろうばい)売り」です。売却した瞬間に、それまでは数字上のものだった「含み損」が「実際の損失」として確定してしまいます。暴落の直後には急激な回復局面が訪れることが多々ありますが、狼狽売りをしてしまうと、この「資産が回復する最もおいしい時期」を逃してしまうことになります。
2. 根拠のない「ナンピン買い」
「安くなったからたくさん買えばお得だ」と考え、予定になかった資金を投入するのも注意が必要です。資金計画を無視した買い増しは、さらなる下落が起きた際に家計を圧迫します。余剰資金のルールを守れない買い増しは、投資ではなくギャンブルになってしまいます。
3. 運用ルールの後出し変更
「暴落したから、今持っている株を売って債券に変えよう」といった方針変更は禁物です。資産配分の変更は、本来、心が落ち着いている「平時」に行うべきものです。暴落中にリスクを下げようとすると、「安い時に売り、高い時に買う」という、投資の鉄則とは真逆の行動をとることになります。
暴落を前提にした投資と家計のリスク管理
「暴落は必ず起きるもの」として家計を設計しておくことが、将来の安心に直結します。
資産配分と生活防衛費の考え方
暴落時に「見ない勇気」を持てるかどうかは、銀行口座にある「現金の量」で決まります。家計管理における優先順位を再確認しましょう。
- 生活防衛費: 生活費の6ヶ月〜2年分を現金で確保
- 直近の予定資金: 5年以内に使うお金を現金で確保
- 余剰資金: 10年以上使わないお金を「投資」へ
「現金という心の守り」があるからこそ、投資口座の数字がどれだけ減ろうとも、積立を放置し続けることができるのです。
積立投資が暴落と相性がいい理由
積立投資(ドル・コスト平均法)を行っている場合、暴落はむしろ「安く多く買える時期」となります。
| 状況 | 価格(基準価額) | 購入額 | 購入できる数量 |
|---|---|---|---|
| 好景気 | 高い | 3万円 | 少しだけ |
| 暴落時 | 安い | 3万円 | たくさん! |
暴落期にコツコツと多くの数量を仕込んでおくことで、将来価格が元に戻ったとき、資産の増え方は加速します。
結局、投資で暴落が起きたときどうするのが正解か
短期で判断せず、事前ルールを信じる
資産形成のゴールは10年後、20年後の「教育資金」や「老後資金」のはずです。暴落は、その長い線の中に現れる一時的な「くぼみ」に過ぎません。暴落が起きる前に決めていた「積立設定を変えない」「目標額まで売らない」というルールを淡々と実行しましょう。
不安なときは「見ない」という選択
SNSのタイムラインを眺めて不安になるくらいなら、スマートフォンから証券口座のアプリを一時的に削除しても構いません。「投資をしていることを忘れている時間」が長いほど、資産形成は成功に近づくといっても過言ではありません。
まとめ:日常を大切にすることが、最良の投資対策
投資で暴落が起きたとき、私たちが取るべき行動は「何かをすること」ではなく、むしろ「これまでの日常を変えずに過ごすこと」です。
- 暴落は一時的なものであり、過去の歴史がその回復を証明している。
- 「見ない勇気」を持つことで、感情的なミス(狼狽売り)を防げる。
- 生活防衛費の確保こそが、暴落時の最大の心の支えになる。
「またいつか上がるだろう」とゆったり構え、今日という日を大切に過ごしましょう。嵐はいずれ過ぎ去り、その先には着実に育った資産が待っているはずです。
出典・参考
- 金融庁|資産形成の基本
- 日本証券業協会|投資の基本
- 確認日:2025年12月24日