「ニュースで『金利が上がった』と聞くけれど、自分の投資にはどう関係するの?」
「せっかく始めた積立投資や株が、金利のせいで下がったら怖い…」
将来のために資産形成を始めても、金利のような難しい経済用語が出てくると、どう判断すべきか迷ってしまうという声は少なくありません。特に「金利が上がると株価は下がる」という定説はよく耳にしますが、すべての銘柄が一律に下がるわけではなく、影響を受けやすいものとそうでないものが存在します。
本記事では、金利上昇が投資先に与える影響の仕組みと、具体的に注意が必要な国内銘柄・業種について、初心者の方にもわかりやすく整理します。
金利が上がると株価や投資先はなぜ下がるのか(全体像)
投資の世界では、「金利」と「株価」はシーソーのような関係にあるとよく言われます。金利が上がると、株価などの資産価格は下がりやすくなる傾向があります。
なぜそのような動きになるのか、まずはその「仕組み」を理解することで、漠然とした不安を解消しましょう。
金利上昇=お金の“レンタル料”が高くなる
最もシンプルなイメージは、金利とは「お金を借りるときのレンタル料」であるという点です。
私たち個人が住宅ローンを組むとき、金利が上がれば毎月の返済額が増えるのと同様に、企業もビジネスを行うためにお金を借りています。銀行から融資を受けたり、「社債」を発行して投資家からお金を集めたりする際、金利が上昇していると、企業が支払わなければならない利息(レンタル料)が増加します。
- 金利が低いとき: 企業は安いコストでお金を借りられ、積極的に設備投資ができる。
- 金利が高いとき: 借金の返済負担が増え、手元に残る利益が減りやすくなる。
この「コスト増」が、企業の業績を圧迫する要因の一つとなります。
企業価値(株価)が下がりやすくなる理由
株価は、その企業が将来どれくらい利益を出せるかという「期待」によって決まります。金利上昇は、以下の2つのルートでこの期待を冷やしてしまいます。
- 利益の減少懸念
前述の通り、借入金の利息払いが増えることで、純利益が減ると予想されます。利益が減れば、株価の元となる企業価値も下がります。 - 投資家の資金移動(相対的な魅力の低下)
金利が上がると、銀行預金や「債券(国債など)」の利回りも高くなります。これまでリスクを取って株式投資をしていた投資家の一部が、「株のリスクを取らなくても、債券で安全にそこそこの利息がもらえるならそちらに移そう」と考えます。
株式から資金が抜け、債券へ流れることで、株価全体に対する売り圧力となります。
出典: 金利水準の変化は、企業の資金調達コストや投資家の運用判断に影響を与え、株価変動の要因となります。(確認日:2025/12/09)
参考:日本証券業協会「株価はどうやって決まるの?(株価変動の要因)」
家計・投資商品に波及する3つのルート
金利上昇の影響は、個別の株式だけでなく、私たちが保有する投資信託や家計全体にも波及します。
| 影響するルート | 具体的な現象 | 家計への影響 |
|---|---|---|
| ① 住宅ローン・借入 | 変動金利の上昇 | 毎月の返済額が増え、投資に回せる余力が減る。 |
| ② 債券価格の下落 | 既発債券の価値低下 | 債券を含む投資信託の基準価額が一時的に下がる可能性がある。 |
| ③ 成長株の調整 | グロース株の下落 | 積立投資で人気の「世界株」や「米国株」に含まれるハイテク企業の株価が不安定になる。 |
このように、金利は「企業のコスト」と「投資家の心理」の両面から、資産価値にブレーキをかける役割を持っています。
金利が上がると株価の下がる国内銘柄・業種(メイン解説)
仕組みがわかったところで、具体的に「どのような特徴を持つ企業」が金利上昇の影響を受けやすいのかを見ていきましょう。国内株を例に挙げますが、基本的な考え方は海外株や投資信託選びにも共通します。
グロース株(成長株)が下がりやすい理由
最も金利上昇に弱いとされるのが、IT企業や新興企業などの「グロース株(成長株)」です。
グロース株は、「今は利益が少なくても、将来すごく儲かるはず」という期待値で株価が高く買われています。しかし、投資の世界には「将来のお金の価値を、現在の価値に換算して評価する」という計算ルールがあり、金利はこの計算において重要な役割を果たします。
- 金利上昇時: 「遠い将来の利益」の価値が、計算上大きく割り引かれて(低く見積もられて)しまいます。
- 結果: 実態のビジネスが変わっていなくても、計算上の理論株価が下がり、大きく売られる原因になります。
「ハイテク株は金利上昇に弱い」と言われるのは、この計算上の仕組みが大きく影響しています。
不動産株・REITが弱い理由(借入と利回りの関係)
不動産業界やREIT(不動産投資信託)も、金利上昇に対してネガティブな反応を示しやすいセクターです。理由は大きく2つあります。
- 巨額の借入依存
マンションやオフィスビルを建てる・買うには莫大な資金が必要です。多くの不動産会社は銀行から多額の融資を受けて事業を行っているため、金利上昇による返済コストの増加がダイレクトに利益を削ります。 - 利回りの魅力低下(イールドギャップの縮小)
不動産投資の魅力は「家賃収入による利回り」です。しかし、安全資産である「国債」の利回りが上がってくると、「リスクのある不動産を持たなくても、国債でいいのでは?」と投資家に比較されてしまいます。この利回り差(イールドギャップ)が縮まると、不動産株やREITは売られやすくなります。
資本集約産業(電力・通信)が影響を受けやすい構造
電力会社、鉄道、通信キャリアなど、ビジネスを維持するために巨大な設備投資(発電所、線路、基地局など)が必要な産業を「資本集約型産業」と呼びます。
これらの企業は、設備の新設や維持更新のために継続的に資金調達を行う必要があります。金利が上がると、新たな資金調達コストが上昇し、経営を圧迫する懸念が生まれます。
また、これらの銘柄は安定配当を好む投資家に人気ですが、「国債利回り」が上がると、高配当株としての相対的な魅力が薄れ、株価が軟調になるケースがあります。
銘柄を見分けるときの“金利依存度”チェックリスト
自分の持っている銘柄や、これから買おうとしている投資信託が金利上昇に弱いかどうかを見分ける簡易チェックリストです。
- 有利子負債比率は高いか?
借金が自己資本に比べて多すぎる企業は要注意です。 - PER(株価収益率)は極端に高くないか?
PERが何十倍・何百倍にもなっているグロース株は、金利上昇時の調整幅が大きくなる傾向があります。 - ビジネスモデルは「借入前提」か?
不動産リースや大規模設備産業など、借金なしでは回らない業種かどうかを確認します。 - 配当利回りと国債利回りの差は十分か?
配当狙いの場合、金利が上がってもその銘柄を持つ優位性があるかを比較します。
金利が上がると値下がりしやすい投資先(資産クラス別)
「個別株はやっていないけれど、投資信託(ファンド)は持っている」という方も多いでしょう。実は、投資信託の中身である「債券」や「REIT」といった資産クラス(資産の種類)ごとの特徴を知っておくことも、リスク管理には欠かせません。
ここでは、金利上昇時に価格が下がりやすい代表的な投資先について解説します。
債券価格が下がる仕組み
最も教科書的な動きをするのが「債券」です。「金利が上がると、債券価格は下がる」という逆相関(シーソー)の関係は、投資の基本ルールとしてぜひ覚えておきましょう。
なぜ下がるのか、簡単な例で説明します。
- あなたが持っている債券: 金利1%の時期に発行されたもの(年1万円の利息)
- 新しく発行された債券: 金利が3%に上がった後に発行されたもの(年3万円の利息)
世の中の金利が上がると、新しく発行される債券の利息も高くなります。すると、あなたが持っている「利息の低い古い債券」を欲しがる人はいなくなります。売りたくても、「安く値下げしないと売れない」状態になります。
これが、金利上昇局面で、すでに市場に出回っている債券(既発債)の価格が下落する仕組みです。
出典: 一般的に、金利が上がると債券価格は下落し、金利が下がると債券価格は上がります。(確認日:2025/12/09)
参考:投資信託協会「投資信託が持つリスク」
REIT・不動産投信が弱い時期に共通するパターン
REIT(リート)は、投資家から集めたお金で不動産を運用し、家賃収入などを分配金として還元する商品です。
前述の通り、不動産会社と同様に「借入金利の負担増」が収益を圧迫します。さらにREITという商品特有の弱点として、「国債などの安全資産との利回り比較」にさらされやすい点が挙げられます。
- REITの分配金利回り: 4%
- 国債の利回り: 0.5% → 2.5%へ上昇(仮定)
国債の利回りが低いうちは、多少リスクがあっても4%もらえるREITは魅力的です。しかし、国債で2.5%もらえるようになると、「リスクを取ってまでREITを持つメリットが薄い」と判断され、資金が逃げやすくなります。
高配当株が“金利上昇局面でも下がることがある”理由
「高配当株なら、株価が下がっても配当がもらえるから安心」と思われがちですが、ここにも落とし穴があります。
成熟した大企業が多い高配当株(電力、通信、食品など)は、債券に似た性質を持っており、「債券代わり」に買われているケースが多々あります。そのため、金利が上昇して本物の債券の利回りが魅力的になると、高配当株から資金が引き上げられ、株価が下落することがあります。
「高配当=金利上昇に強い」とは限らない点に注意が必要です。
投資信託・インデックス資産への金利波及の仕方
投資初心者の方に人気の「バランス型ファンド」や「債券ファンド」も影響を受けます。
特に「国内債券型」や、リスクを抑えるために債券を多く組み入れている「安定型バランスファンド」は、急激な金利上昇局面では基準価額(投資信託の値段)が下がることがあります。「守りの資産」だと思って安心していたら、意外と値下がりして驚くケースはこのパターンです。
積立投資をしている場合は、一時的な下落を過度に恐れる必要はありませんが、「債券が含まれているから絶対に安全」というわけではないことを理解しておきましょう。
金利上昇局面でやってはいけない投資判断(失敗例)
金利が上がって株価や基準価額が下がったとき、焦って誤った行動をとると、損失を広げてしまう可能性があります。ここでは、よくある「NG行動」を整理します。
「高配当だから大丈夫」の勘違い
株価が下がると、計算上の「配当利回り(配当金÷株価)」は上昇します。「利回りが良くなったからお買い得だ!」と飛びつくのは危険です。
金利上昇による業績悪化で、企業が将来的に「減配(配当金を減らすこと)」を発表する可能性があります。減配されると株価はさらに下がり、ダブルパンチを受けることになります。目先の利回りだけでなく、その企業が金利上昇に耐えられる財務体質かどうかを確認することが先決です。
「下がっているから買い増し」は危険な理由
保有している銘柄が値下がりしたときに、安く買い増して平均取得単価を下げる手法を「ナンピン買い」と言います。
通常の相場変動なら有効な場合もありますが、金利上昇という「大きな経済環境の変化(トレンド転換)」が起きているときは要注意です。金利が高い状態が数年続くと予想される場合、その銘柄(特にグロース株や不動産株)の低迷も数年続くかもしれません。
「いつか戻るだろう」という楽観的な予測だけで資金を追加投入するのは、傷口を広げるリスクがあります。
借入型ビジネスを軽視すると失敗する
「有名な企業だから潰れないだろう」というイメージだけで投資を続けるのもリスクがあります。
特に注意したいのが、ビジネスモデル自体が借金に依存している企業です。過去の低金利時代には、借金をテコにして急成長できた企業も、金利のある世界ではその借金が重荷になります。
財務諸表(決算書)までは読めなくても、ニュースなどで「有利子負債(借金)が多い」と指摘されている企業には警戒が必要です。
リスク資産の“重なり”に気づかない落とし穴
「私は分散投資をしているから大丈夫」と思っていても、実は中身が似通っているケースがあります。
- 保有資産A: 国内の不動産REIT
- 保有資産B: 高配当な電力株ファンド
- 保有資産C: グロース株中心の投資信託
一見バラバラに見えますが、これらはすべて「金利上昇に弱い」という共通点を持っています。これでは金利が上がった際、すべての資産が同時にダメージを受けてしまいます。
真の分散投資とは、金利が上がったときに強みを発揮する資産(例:銀行株や変動金利型の金融商品、現預金など)も組み合わせておくことです。
金利上昇に強い銘柄・投資先の見つけ方(逆張り視点)
ここまで「下がるもの」に注目してきましたが、投資の世界には必ず「逆」の動きをする資産があります。金利が上がることを追い風にして、業績や株価が上がりやすくなる銘柄も存在します。
すべての資産がダメになるわけではないと知るだけで、過度な不安は和らぎます。ここでは、金利上昇局面で強さを発揮しやすい代表的なセクターを紹介します。
銀行株が上がりやすい背景
「金利上昇メリット銘柄」の筆頭と言われるのが、銀行株です。
銀行の主な収益源は、預金者から預かったお金を企業や個人に貸し出し、その金利差(利ザヤ)で稼ぐことです。低金利時代はこの「利ザヤ」が極端に薄く、銀行にとっては厳しい冬の時代でした。
しかし、金利が上昇し始めると、貸出金利を引き上げることができるため、本来の収益力が回復します。「金利が上がる=銀行が儲かりやすくなる」という連想から、投資家の資金が集まりやすくなる傾向があります。
金利と為替が連動するケース
一般的に、日本の金利が上がると、日米の金利差が縮小し、「円高」に進みやすくなると言われます(※為替は各国の経済状況など複合的な要因で動くため、必ずしもそうなるとは限りません)。
もし円高傾向になれば、輸入コストが下がって利益が出やすくなる企業(輸入産業、電力会社の一部、食品原材料など)や、国内内需型の企業に注目が集まるケースがあります。逆に、円安で儲かっていた輸出企業は少し勢いが落ちるかもしれません。金利を見る際は、セットで「為替の動き」もチェックするのがポイントです。
コスト構造の軽い企業が強くなる理由
金利上昇は「借金のコスト増」を意味します。つまり、そもそも借金がほとんどない企業にとっては、痛くも痒くもない話です。
手元に現金をたくさん持っている(キャッシュリッチな)企業や、自己資本比率が高い「無借金経営」の企業は、金利上昇による財務悪化リスクがありません。それどころか、保有している現金の運用利回りが良くなるため、相対的に安全で強い投資先として再評価されることがあります。
家計の投資配分を整えるときの考え方
では、私たちはどうすればいいのでしょうか?「持っている株や投信を全部売って、銀行株を買うべき?」と考えるのは早計です。極端な売買は手数料もかかりますし、予測が外れたときのリスクも大きくなります。
おすすめなのは、「少しだけバランスを整える」という考え方です。
- 積立投資(インデックス)はそのまま継続する(長期では平均化されるため)。
- もし追加で投資する余裕があるなら、下落リスクのあるグロース株ではなく、割安なバリュー株や銀行株関連のファンドを少し組み入れてみる。
- 日本円(現金)の比率を高めに保ち、バーゲンセール(暴落)が来たときに備える。
これくらいの「微調整」が、家計を守りながら資産形成を続けるコツです。
まとめ|“金利と投資の関係”を理解すればブレない判断ができる
金利上昇は、投資家にとって「向かい風」になることが多いのは事実です。しかし、仕組みさえ理解していれば、ただ怖がる必要はありません。
最後に、本記事のポイントを整理します。
- 金利は「重力」: 金利が上がると、株価(特に成長株)や債券価格は下に引っ張られる。
- 弱い銘柄を知る: 借金が多い不動産・インフラ企業や、期待先行のグロース株は警戒が必要。
- 強い銘柄もある: 銀行株や財務が健全な企業(キャッシュリッチ)は、金利上昇を味方につけやすい。
- 家計防衛が最優先: 投資の調整も大切だが、住宅ローンの金利タイプ確認や、無駄な固定費削減など、足元の「守り」を固めることが先決。
「金利が上がったから投資をやめる」のではなく、「金利がある世界に合わせたポートフォリオ(資産の組み合わせ)に微調整する」。
この視点を持つことで、どんな経済環境でも着実に資産形成を続けていくことができます。
まずは、ご自身の保有している投資信託や株が、どのタイプに当てはまるかチェックすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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