お金を整える(家計の最適化)

生命保険・医療保険を整理するときの正しい順番|見直しで失敗しない進め方

「将来のお金が不安…」そう考えて保険の見直しを検討しても、何から手をつければいいのか分からず立ち止まってしまう方は少なくありません。特に生命保険や医療保険は、特約や更新の仕組みが複雑で、自分一人で判断するのが非常に難しい分野です。

「月々の支払いを減らして貯金に回したいんですが、どれが必要でどれが不要かさっぱり分からなくて…」と話すAさん(30代会社員)のように、資産形成に前向きな方ほど、固定費である保険料の負担が気になるものです。しかし、SNSなどでは「保険はすべて不要」「いや、これだけは入っておかないと一生後悔する」といった極端な声が飛び交い、結局自分にとって何が正解なのか分からず、結果として損をしてしまうケースも多く見受けられます。

保険を整理する際に最も大切なのは、いきなり「解約するか・残すか」を決めることではありません。本記事では、将来の安心をしっかり守りながら、ムダのない家計を実現するための「正しい整理の順番」を分かりやすく整理しました。読み終える頃には、自分の保険証券をどう読み解けばいいのか、その道筋がはっきりと見えているはずです。

生命保険・医療保険の整理は「順番」がすべて

家計の見直しにおいて、保険料の削減は即効性のある手段です。しかし、焦って手を付けると、必要な保障まで失ってしまうリスクがあります。まずは、なぜ「順番」が重要なのかを確認しておきましょう。

いきなり解約・減額から始めてはいけない理由

保険の整理を考えたとき、多くの人が真っ先に「どの保険を解約しようか」「いくら安くなるか」という出口の部分を考えがちです。しかし、この「出口」から考える方法は、失敗を招く典型的なパターンです。

  • 無保険期間のリスク: 新しい保険への切り替えが終わる前に古い保険を解約してしまうと、万が一の際に保障が受けられない空白期間が生まれます。
  • 再加入ができなくなる可能性: 一度解約したあとに「やはり必要だった」と思い直しても、その時の健康状態によっては、同じ条件で再加入できない(あるいは保険料が高くなる)ことがあります。

感情的に「高いから削る」と決めるのではなく、客観的なステップを踏むことが、将来の自分を守ることにつながります。

整理=削減ではないという前提を確認

ここでいう「整理」とは、必ずしも「保険を解約して安くすること」だけを指すのではありません。読者の方から寄せられる声の中には、「安くしすぎて不安になった」というものもあります。

保険における「整理」の定義
1. 現状、どのようなリスクに対して、いくらの備えがあるかを正確に把握すること
2. その備えが、今の自分や家族の生活スタイルに合っているかを確認すること
3. 過不足(重なりや抜け)を調整し、納得感のある形に整えること

つまり、整理の結果として「今のままで良い」と確信できることも立派な成果です。大切なのは、中身が分からないまま「なんとなく」でお金を払い続ける状態を解消することにあります。

整理前に最低限そろえておきたい情報

整理をスムーズに進めるために、まずは以下の情報を手元に準備しましょう。これらがあるだけで、判断のスピードが格段に上がります。

準備するもの 確認すべきポイント
保険証券 契約者、被保険者、受取人、保障内容の名称
ご契約内容のお知らせ 最新の保障金額、解約返戻金の有無、更新時期、現在の解約返戻金額
ねんきん定期便 万が一の際に受け取れる「遺族年金」の目安を把握し、民間保険での必要額を出すため

金額(月々の保険料)だけを見るのではなく、その保険がどのような「構造」になっているかを把握することが、正しい判断の第一歩となります。

ステップ1:生命保険と医療保険を分けて考える

保険が複雑に見える原因の一つは、一つの契約の中に「死亡保障(生命保険)」と「入院保障(医療保険)」が混ざっていることにあります。まずはこれらを切り分けて考えることで、思考がクリアになります。

生命保険の整理は「誰のためか」から

生命保険(死亡保険)の本来の役割は、被保険者が亡くなった際に、残された家族の生活を支えることです。そのため、整理の軸は「誰に、いつまで、いくら残したいか」という目的にあります。

  • 独身の場合: 主に自分の葬儀代や身辺整理の資金(数百万円程度)が目安となります。
  • 既婚(子供なし)の場合: パートナーが働き続けられるか、住居費(賃貸か持ち家か)はどうなるかを考慮します。
  • 既婚(子供あり)の場合: 子供の教育費や、独立するまでの生活費がメイン。末子が大学を卒業するまでの期間を重点的に考えます。

このように、「目的(誰のためか)」を明確にすると、過剰な保障額を設定しているケースや、逆に足りていないケースに気づきやすくなります。

医療保険の整理は「何に備えているか」から

医療保険は、病気やケガで入院・手術をした際の費用をカバーするものです。こちらは「誰のため」というよりは「自分の治療費や、入院中の収入減少への備え」という意味合いが強くなります。

整理の際は、以下の項目がどうなっているかを確認します。

  1. 入院日額: 1日いくら出るか(5,000円、10,000円など)
  2. 手術給付金: 手術の種類によっていくら出るか(一律か、倍率か)
  3. 特約: ガン、三大疾病、先進医療、通院保障などの上乗せがあるか

ここで重要なのは、日本の公的医療保険制度である「高額療養費制度」の存在です。一般的な所得(年収約370万〜770万円)であれば、1ヶ月の医療費の自己負担額には上限(約8万円〜+α)があります。この制度を念頭に置くと、「民間保険でどこまでカバーすべきか」の現実的な基準が定まってきます。

混ぜて考えると判断を誤りやすい理由

日本の保険商品の多くは、「主契約」にさまざまな「特約」が付帯する形をとっています。例えば、「終身保険(死亡保障)」に「入院特約」がついている場合、入院保障だけを解約しようとすると、主契約そのものの見直しが必要になるケースがあります。

  • 思考の混乱: 「死んだとき」と「入院したとき」の備えを一緒に考えると、どちらの優先順位が高いか分からなくなる。
  • コストの不透明化: 特約部分の保険料が更新で段階的に上がっていくことに気づきにくい。

まずは「これは死後のための備え」「これは治療のための備え」と、頭の中で付箋を貼り直すように分類してみましょう。

ステップ2:保障の「重なり」と「抜け」を確認する

生命保険と医療保険の分類ができたら、次はそれぞれの保障が今の自分にとって「多すぎないか(重なり)」「足りなくないか(抜け)」を客観的にチェックします。

特約・上乗せ保障が増えやすい理由

多くの保険証券を読み解くと、メインの保障(主契約)以外に、非常に多くの「特約」が付加されていることに気づきます。なぜこれほどまでに保障が膨らんでしまうのでしょうか。制度上明らかなのは、以下の2点です。

  • ライフイベントごとの「安心の積み増し」: 結婚、出産、住宅購入。人生の節目で保険の見直しを勧められる際、既存の契約に新しい保障を「上乗せ」する形を提案されることが一般的です。これが繰り返されることで、構造が複雑化していきます。
  • 「念のため」という心理的アプローチ: 「数百円のプラスでこの保障がつきます」という提案は、心理的なハードルが低く、断りにくいものです。しかし、その積み重ねが数千円、数万円という固定費の膨張を招いています。

保険会社の提案は、万が一の最大リスクを想定して設計されることが多いため、意識的にチェックしなければ、自然と「厚め」の保障になりやすいという構造的な背景があります。

重なりがあっても即NGではないケース

保障が重複していることが分かっても、すぐに「損をしている」と決めつける必要はありません。大切なのは、その重なりが「意図的かどうか」です。

重なりのパターン 判断の目安
医療保険の重複 「1日5,000円では不安だから、あえて2つの会社で1万円にしている」ならOK。
死亡保障の重複 「住宅ローンの団信があるが、教育費として別途生命保険も持っておきたい」ならOK。
無意識の重複 クレジットカードの付帯保険や、会社の団体保険と内容が全く同じなら整理対象。

このように、重複を知った上で「あえて残す」という選択は、立派なリスク管理です。まずは「自分が何にいくら払っているか」という現状把握そのものに価値を置きましょう。

見落とされがちな「抜け」の考え方

一方で、保障を削ることばかりに意識が向くと、重大な「抜け」を見落とすことがあります。現代のライフスタイルにおいて、特に注意すべきは以下の視点です。

  1. 就業不能リスク: 入院は短期間で済んでも、その後の療養で長期間働けなくなるリスクへの備え。
  2. 特定の病気への集中保障: ガンなどの治療が長期化しやすい病気に対し、入院日数に関わらず「一時金」が出る仕組みがあるか。
  3. 先進医療のカバー: 公的保険がきかない数百万単位の治療を受ける際、自己負担を肩代わりする特約があるか。

「保険料を下げる」という目的が先行しすぎると、本当に困ったときに役立たない中身になってしまう恐れがあります。整理とは、不足しているピースを埋める作業でもあるのです。

ステップ3:家計とのバランスで整理を考える

保障の内容が整理できたら、最後に「家計」という現実的な数字と照らし合わせます。保険はあくまで生活を豊かにするためのツールであり、保険料が今の生活を圧迫しては本末転倒だからです。

保険料だけを切り出して考えない

よく「保険料は手取り収入の〇%が目安」と言われますが、この数字だけを信じるのは危険です。家計の状況は世帯ごとに全く異なるからです。

  • 貯蓄が多い世帯: 多少のリスクは貯蓄でカバーできるため、保険を最小限に抑え、その分を投資に回す選択が可能です。
  • 貯蓄が少ない世帯: 万が一の際の「クッション」がないため、一定期間は保険を厚くしておく必要があります。

このように、保険は「現金(貯蓄)」とのバランスで決まるものです。保険料単体を見るのではなく、「今、手元にある現金でどこまで耐えられるか」をセットで考えるのがスマートな整理術です。

教育費・住宅費と同時に考える意味

資産形成を志す20代〜40代にとって、保険料は「住居費」や「教育費」と並ぶ大きな固定費です。当サイト(Fin-Toku)が推奨するのは、以下の将来視点です。

例えば、保険の見直しで浮いた月1万円を、もし20年間、年利3%で運用(NISAなど)できれば、元手240万円が約328万円になる可能性があります。保険の整理は単なる節約ではなく、「将来の資産を作るための原資作り」なのです。「将来の安心」を保険(保障)で作るのか、それとも投資(資産)で作るのか。この視点を持つことで、自分にとっての保険料の適正ラインが見えてきます。

「今の家計」と「将来の家計」を分けて考える

保険料の支払期間には、主に「終身払い(一生続く)」と「有期払い(60歳までなど)」があります。

  • 今の家計を優先: 保険料を抑えるために終身払いを選ぶ(ただし、収入が減る老後の支出は増える)。
  • 将来の家計を優先: 今のうちに払い込みを終えて、老後の固定費をゼロにする(ただし、現役世代の負担は増える)。

整理の際は、今の支払い能力だけでなく「収入がなくなる老後に、この保険料を払い続けられるか?」という時系列の視点を必ず持ちましょう。

保険整理でよくある判断ミス

保障の中身と家計のバランスが見えてくると、つい「今すぐ変えたい」という気持ちが強まります。しかし、整理の最終段階でこそ、慎重に見極めるべきポイントがあります。

一部だけを見て全体を変えてしまう

日本の保険商品の多くは、大きな土台となる「主契約」に、細かな「特約」がいくつも紐付いている構造をしています。この構造を理解せずに見直しを行うと、取り返しのつかない失敗をすることがあります。

特に、10年以上前に加入した「終身保険」などは、現在よりも予定利率(運用の効率)が良い、いわゆる「お宝保険」であるケースがあります。その一部についている古い医療特約を整理したいからといって保険全体を解約してしまうと、二度と入れない好条件の貯蓄機能まで手放すことになります。全体をゼロにする前に、「どのパーツを残すべきか」を、必ず保険会社に確認しましょう。

ネットの成功談をそのまま当てはめる

SNSや動画サイトでは「保険はすべて不要、その分を投資に回すべき」といった極端な意見が目立ちます。しかし、これが成立するのは「一定以上の貯蓄(生活防衛資金)がある人」に限られます。

状況 判断の基準
貯蓄が500万円以上ある 多少の入院や手術は貯蓄でカバーできるため、保険を最小限に絞ってもリスクは低い。
貯蓄が100万円以下である 万が一の際に生活が破綻する可能性があるため、保険という「掛け捨ての安心」を維持する価値が高い。

「誰かが成功した方法」ではなく、「今の自分の通帳残高」を見て判断するのが、失敗しないための鉄則です。

第三者の意見をうのみにする

保険の整理をしていると、知人や特定の専門家から「この保険はダメだ」「これに変えるべきだ」と強い口調でアドバイスを受けることがあります。しかし、保険は個人の人生設計(キャリア、家族構成、健康状態)に深く依存するものです。

他人のアドバイスは「一つの視点」として受け止め、最後は「自分の家庭の数字と健康状態」で決める意識を持ちましょう。特に健康状態に不安がある場合、解約後に新しい保険に入れないリスクは、アドバイスをくれた第三者は背負ってくれません。

整理の次に考えるべきこと(予告)

ここまでで、保険の「整理(現状把握と分類)」は完了です。頭の中がスッキリしたところで、いよいよ最終的な判断に向けた準備に入ります。

「この保障は本当に必要か?」という問い

整理が済むと、自分の加入している保障の「輪郭」がはっきり見えているはずです。そこで次に考えるべきなのは、「そのリスクが起きたとき、本当に自分は困るのか?」という本質的な問いです。例えば、1週間の入院で5万円の給付金が出る保障のために、毎年いくらの保険料を払っているでしょうか。その費用を「保険」で準備するのか、それとも「貯蓄」で準備するのか、という視点が生まれます。

考え方を整理してから最終判断する重要性

焦って結論を出さないことが、保険見直しの最大の成功の秘訣です。

  1. 現状を整理する(この記事のステップ)
  2. 不足額を計算する(具体的な数値化)
  3. 具体的な商品を選ぶ、または継続を決める

このプロセスを飛ばして「商品選び」から入ってしまうと、また数年後に「この保険で良かったのかな?」と悩むことになります。まずは、この記事で整理した「保障の分類」と「家計とのバランス」をノートに書き出すことから始めてみてください。納得感を持って次のアクションへ進めるようになるはずです。


出典・参照元

※確認日:2025年12月24日

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