お金を整える(家計の最適化)

入りすぎていない?生命保険・医療保険を“減らさずに”整理する考え方

「将来のお金が不安だから、備えは多いに越したことはない」――そう考えて加入した保険が、いつの間にか家計を圧迫する重荷になっていないでしょうか。特に生命保険や医療保険は仕組みが複雑で、内容を完全に把握した上で契約を続けている人は、決して多くありません。

読者の方から寄せられる声の中でも、以下のような悩みは特に目立ちます。

「結婚や出産を機に勧められるまま加入したが、毎月の支払いが数万円を超えていて不安。でも、何かあった時に困るから解約は怖い」(30代・会社員 Aさん)

SNSや口コミサイトでも「保険料を減らしたいけれど、どれが必要でどれが不要か分からない」「結局、損をしているのではないか」という不安の声が後を絶ちません。しかし、不安に駆られて中身を理解しないまま解約してしまうのは、かえって将来のリスクを高めることにもつながります。

本記事では、「今すぐ解約や見直しをしない」ことを前提に、まずは今の保険が「入りすぎ」かどうかを判断するための材料を整理していきます。今日は結論を出さなくて構いません。まずはご自身の現状を客観的に眺めることから始めてみましょう。


なぜ生命保険・医療保険は「入りすぎ」になりやすいのか

「自分は慎重に選んだはずなのに、なぜか保険が増えてしまう」のには、保険という商品の特性と、日本のライフスタイルに共通する理由があります。まずは、多くの人が陥りがちな「入りすぎ」の構造を理解しましょう。

結婚・出産のたびに保険が足されていく構造

多くの家庭で保険が増える最大のタイミングは、結婚や出産といったライフイベントです。家族が増える際、責任感から「もしもの時のために」と備えを厚くするのは自然な心理です。

しかし、ここで注意が必要なのは、多くのケースで「古い保険に新しい保険を上乗せする」形で契約が進んでしまう点です。本来、ライフステージが変わったときには、それまでの保障を見直し、今の自分たちに最適な形に「組み替える」必要があります。しかし、実際には既存の契約はそのままに、特約を追加したり別個に新規契約をしたりすることが一般的です。この「継ぎ足し」の繰り返しが、保障の重複や過剰な保険料を生む主な要因となっています。

保障内容を正確に説明できる人が少ない理由

現在加入しているすべての保険について、「どんな時に」「いくら」「いつまで」受け取れるかを正確に説明できるでしょうか。金融庁の意識調査などを見ても、保険契約者が自分の契約内容を完全に把握している割合は必ずしも高くありません。

これには、保険商品の「言葉の難しさ」が大きく関係しています。例えば、「定期保険」と「終身保険」の違い、あるいは「入院日額」と「実損払い」の違いなど、専門用語の壁が契約者に判断を難しくさせ、「よく分からないけれど、プロが勧めるなら安心だろう」という、判断の放棄を促してしまいます。内容が不透明なまま契約しているという自覚こそが、「もしかして入りすぎでは?」という漠然とした不安の正体です。

保険料が高い=入りすぎ、とは限らない

ここで一つ、重要な視点をお伝えします。「毎月の保険料が高い=入りすぎ」と即断するのは早計です。なぜなら、保険の「適正量」は、その人の貯蓄額や家族構成、そして「どのようなリスクを許容できるか」という価値観によって全く異なるからです。

項目 入りすぎの可能性があるケース 適正である可能性があるケース
貯蓄額 すでに十分な貯蓄(数百万円〜)がある 貯蓄が少なく、今すぐの大きな出費に耐えられない
家族構成 独身、または共働きで自立している 幼い子どもがおり、片方の収入で家計を支えている
公的保障 会社の福利厚生や健康保険の制度が手厚い 自営業などで公的な保障が会社員より少ない

金額という「出口」だけを見るのではなく、「何のために備えているか」という「入り口」とのバランスが重要です。


まず確認したい|生命保険・医療保険の全体像を把握する

「入りすぎ」かどうかを判断する前に、まずは散らばっている情報を一箇所に集め、全体像を可視化する必要があります。具体的な整理のステップを見ていきましょう。

生命保険と医療保険の役割の違い(超シンプルに)

まず、混乱しがちな保険の役割を整理しましょう。大きく分けて、私たちが備えるべきリスクは2つだけです。

  • 1. 「亡くなったとき」のリスク(生命保険・死亡保障): 遺された家族が生活に困らないための資金を準備するものです。
  • 2. 「病気やケガをしたとき」のリスク(医療保険・がん保険など): 入院費、手術代、働けない期間の治療費などを補填するものです。

多くの保険証券が複雑に見えるのは、1の死亡保障に2の医療特約が「おまけ」のように付帯していたり、逆に2の医療保険に小さな死亡保障がついていたりするためです。まずは「これは死後に支払われるものか、生きて治療するために支払われるものか」という視点で分けてみましょう。

保障内容を紙に書き出すだけで見えること

全体像を把握するために、もっとも有効な手段は「書き出し」です。手書きのノートでもデジタルツールでも構いません。以下の項目を埋めてみてください。

  • 保険会社名 / 商品名
  • 毎月の保険料
  • 死亡時の受取額(例:3,000万円)
  • 入院時の日額(例:5,000円)
  • いつまで保障が続くか(例:65歳まで、または一生涯)

こうして一覧にしてみると、「医療保険に3つも入っていた」「がんの保障が複数の特約で重複している」といった事実が自然と浮かび上がってきます。この「気づき」こそが、健全な家計管理への第一歩です。証券が手元にない場合は、年に一度届く「契約内容のお知らせ」などを確認しましょう。

家計・貯蓄・会社の保障を含めて考える視点

保険を整理する上で、民間保険の証券だけを見つめていても答えは出ません。なぜなら、私たちはすでに「公的な保険」に加入しているからです。代表的なものに以下の制度があります。

  • 高額療養費制度: 1ヶ月の医療費支払いに上限を設ける制度。所得によりますが、一般的な所得層であれば月額8〜9万円程度が上限となるケースが多いです。
  • 遺族年金: 万が一の際、遺族に支給される公的な年金。
  • 傷病手当金: 病気やケガで働けなくなった際、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給される制度(会社員・公務員など)。

これらに加えて、ご自身が現在持っている「預貯金」も立派な保障の一部です。「民間保険 + 公的保障 + 預貯金」の合計が、将来のリスクに対して十分かどうか。この「トータルでの備え」という視点を持つことで、民間保険への過剰な依存から脱却する準備が整います。


「入りすぎかもしれない」と感じる典型的なサイン

棚卸しをした結果、具体的にどのような状態が「入りすぎ」のサインとなるのか、客観的なチェックポイントを整理しました。以下の3つのうち、1つでも当てはまるなら注意が必要です。

保障目的を自分の言葉で説明できない

もっとも多いサインは、保障の「内容」ではなく「目的」が不明確な状態です。「毎月5,000円の医療保険に入っている」という事実は言えても、「なぜ、その5,000円の保障が必要なのか」という理由を自分の言葉で説明できない場合、それはリスクに対して過剰、あるいは的外れな備えになっている可能性があります。

「勧められたから」「みんな入っているから」「なんとなく不安だから」といった理由は、自分自身のライフプランに基づいた判断ではありません。目的が曖昧なままの契約は、結果として「足りないかもしれない」というさらなる不安を呼び、不要な特約を重ねてしまう負のループを生む原因となります。

同じような保障が複数重なっている

棚卸しをした際、以下のような「保障の重複」が見つかることは珍しくありません。

  • 医療保険の入院日額と、生命保険につけた医療特約の入院日額がどちらもある
  • がん保険に加入しているが、医療保険にも「がん診断特約」がついている
  • クレジットカードの付帯サービスで、すでに加入済みの傷害保険と内容が重なっている

保険会社を分けて加入していると、一つひとつの支払額が小さいため重複に気づきにくいものです。しかし、これらを合算すると「公的な高額療養費制度を使えば十分な金額」を大きく上回る保障額を、高い保険料を払って維持しているケースがあります。これは「入りすぎ」の典型的なパターンです。

保険料が家計の優先順位とズレている

保険はあくまで「万が一」への備えであり、今現在の生活や、確実に来る未来(子どもの教育資金、老後資金など)を犠牲にしてまで優先すべきものではありません。一般的に、家計における保険料の割合は、可処分所得(手取り収入)の5%〜10%程度に収まるのが理想的なバランスだと言われることが多いですが、これも絶対ではありません。

例えば、「将来のために新NISAで資産形成を始めたいが、今の保険料が重くて捻出できない」という状態であれば、それは保険という「守り」に比重が寄りすぎており、家計の優先順位にズレが生じているサインだと言えるでしょう。将来のゆとりを作るための資金が、将来の不安に備えるための資金に食いつぶされていないかを確認してください。


この時点で「解約・見直し」をしなくていい理由

「もしかして入りすぎ?」と確信に近いものを感じたとしても、焦ってその日のうちに解約手続きを進める必要はありません。むしろ、この段階での急な決断には大きなリスクが伴います。

判断材料がそろっていない状態での見直しは危険

保険の整理で最も避けるべきは、「とりあえず解約して、後から考えよう」という行動です。一度解約してしまうと、その後の健康状態の変化によっては、新しい保険に入り直したくても加入を断られる、あるいは条件が不利になる(特定の部位が保障されない等)可能性があります。

また、解約から新しい備えを整えるまでの間に「空白期間」が発生し、その間に万が一のことがあった場合、全くの無保障状態になってしまいます。さらに、1990年代前半以前などに加入した保険の中には、現在の利率では考えられないほど有利な条件(高い予定利率)の「お宝保険」が含まれていることもあります。今の自分にとって「何がどれだけ必要か」というゴールを定める前に、現状という「足場」を崩すべきではないのです。

今日は「判断軸」を持ち帰るだけで十分

本記事の目的は、読者の皆さんに「現状を疑い、知る」というきっかけを提供することです。「自分の保険には重複があるかもしれない」「公的保障のことをもっと知るべきかもしれない」という判断軸を持つこと自体が、最大の収穫です。納得感のないまま誰かに言われて解約するのと、自分で「これは過剰だ」と理解して整理するのとでは、その後の家計管理の質に大きな差が出ます。今は「自分の家計の健康診断をした」と考え、焦らずに現状を受け止めるだけで十分なのです。

次に考えるべき2つの方向性

今回の棚卸しを経て、今後は以下の2つのステップへ進むことになります。

  1. 「どう整理するか」の最適化: 重複している保障を削る、あるいは特約を外すなど、今の契約を活かしながら家計を軽くする方法を検討する。
  2. 「そもそも何が必要か」の再定義: 公的保障や貯蓄額、将来のライフプランを元に、自分だけの「必要最低限の保障額」を算出する。

これらについては、また別の機会に詳しく解説していきます。まずは、「入りすぎ」かもしれないという気づきを大切に、手元の証券を眺める時間を設けてみてください。


まとめ:まずは「現状を知る」ことが安心の第一歩

「保険に入りすぎているかもしれない」という不安は、実は健全な家計管理への第一歩です。それはあなたが、ご自身の資産や家族の将来を真剣に考え始めた証拠だからです。保険は「一度入ったら終わり」の買い物ではなく、ライフステージに合わせてメンテナンスしていくべき道具です。

  1. まずは証券を引っ張り出し、保障内容を書き出してみる
  2. 「亡くなったとき」と「病気・ケガ」で分けて整理する
  3. 公的保障や貯蓄も含めた「トータルの備え」を意識する

今日これらを確認できたなら、あなたはすでに「損をしないためのスタートライン」に立っています。白黒つけるのは、もう少し先で大丈夫。まずは今の自分の状況を、ゆっくりと確認することから始めてみましょう。


【出典・参考元】

-お金を整える(家計の最適化)