お金を整える(家計の最適化)

団信があるなら生命保険はいくら減らせる?子育て世帯の見直し基準

「マイホームを購入したら、家族のために保険を手厚くすべき」と考えている方は少なくありません。しかし、実際には住宅ローンを組んだ後のほうが、生命保険料を大幅に削れる可能性があることをご存じでしょうか。

その鍵を握るのが、住宅ローンとセットで加入する「団体信用生命保険(通称:団信)」です。仕組みが複雑で、「なんとなく安心」という理由で既存の保険をそのままにしていると、家計から無駄な保険料が垂れ流しになってしまうことも。

SNSや家計相談の現場では、「団信に入ったけれど、結局どの保険を解約していいか分からない」「保障が重複している気がして不安」という声が多く聞かれます。代表的な疑問を整理すると、「団信があれば生命保険はいらないのか?」「いくら残すべきなのか?」という点に集約されます。

本記事では、住宅ローン加入後の「死亡保障」に絞り、団信の役割と、生命保険を賢く削るための判断基準を整理します。住宅費という大きな固定費が保障されるからこそ可能になる、スマートな家計管理への第一歩を解説します。

団信で何が守られて、何が守られないのか

住宅ローンを組む際、ほとんどのケースで加入するのが「団体信用生命保険(団信)」です。これは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった際、保険金でローンの残債が完済される仕組みです。

家計の見直しにおいてまず理解すべきは、団信によって「どのリスクが消滅し、どのリスクが残るのか」という境界線です。

団信がカバーするリスクは「住宅費」

団信の最大の役割は、万が一のときに「家族に住む場所を遺し、かつ住居費負担をゼロにする」ことです。

賃貸住まいの時期は、世帯主に万が一のことがあれば、残された家族が家賃を払い続けなければなりません。そのため、以前は家賃相当額を生命保険で備える必要がありました。しかし、団信加入後はこの「将来の家賃(住宅ローン)」という巨大なコストが、保険によって一気にカバーされることになります。

つまり、団信は「住宅ローン専用の生命保険」であり、加入した時点で、すでに数千万円規模の死亡保障を手に入れたことと同じ意味を持つのです。

団信で消える支出・残る支出

団信があれば全ての不安が消えるわけではありません。家計改善を成功させるには、支出の「仕分け」が必要です。

項目 団信による変化 備考
住宅ローン返済 0円(消滅) 団信の保険金で完済されるため。
マンション管理費・修繕積立金 継続(残る) 団信の対象外。毎月支払いが必要。
固定資産税 継続(残る) 所有者として支払い義務が続く。
生活費(食費・光熱費等) 継続(残る) 家族の人数に合わせて必要。
子どもの教育費 継続(残る) 成長に合わせて増大する。

このように、団信がカバーするのはあくまで「ローンの返済」のみです。マンションの管理費や、一戸建ての維持管理費、そして日々の生活費や教育費は依然として「生命保険」や「遺族年金」で備える必要があります。

団信=生命保険ではない理由

「団信があるから生命保険は一切不要」と考えるのは危険です。なぜなら、団信と一般的な生命保険では、「お金の行き先」と「受け取り方」が根本的に異なるからです。

  • 団信:保険金は金融機関に支払われ、ローンが相殺される(現金は手元に残らない)。
  • 生命保険:保険金は受取人(遺族)に支払われ、自由な用途に使える。

団信は「借金を消す」ための仕組みであり、「生活費を補填する」ものではありません。したがって、住宅ローン加入後は「住居費分」の保障を削りつつ、残された家族の「生活費」や「教育費」をいかに過不足なく設計するかが、見直しの本質となります。

団信がある家庭で「重複しやすい死亡保障」

住宅ローン契約前に加入していた生命保険をそのまま継続している場合、高確率で「保障の持ちすぎ(過剰加入)」が発生しています。特に、以下の3つのパターンは重複が起こりやすいため、優先的にチェックが必要です。

定期保険がかぶりやすいケース

定期保険とは、「10年間で3,000万円」のように、一定期間に定額の保障を確保する保険です。

賃貸住まいの頃に「家賃+生活費」をベースに設定した保障額を、住宅ローン加入後も据え置いている場合、その「家賃相当分」が丸ごと団信と重複しています。

【保障の見直しイメージ】

  • 見直し前:生活費 15万円 + 家賃 10万円 = 月25万円相当の備えが必要
  • 見直し後:生活費 15万円 + 住宅費 0円 = 月15万円相当の備えで十分

もし、団信加入後も保障額を変えていないのであれば、住宅ローン残高に相当する金額分、高い保険料を払いすぎている可能性があります。

収入保障保険が過剰になりやすい理由

収入保障保険は、亡くなったあと毎月15万円などの「年金形式」で保険金を受け取るタイプです。年月の経過とともに受取総額が減っていく合理的な仕組みですが、団信と組み合わせる際は設定金額に注意が必要です。

多くの人が、住宅ローンの返済額を含めた金額(例:月額25万円)で契約しています。しかし、団信によってローンの支払いがなくなれば、必要な受取月額は「25万円 - ローン返済額」まで下げられるはずです。

「住宅ローンを組んだら、収入保障保険の受取月額を数万円引き下げる」という調整を行うだけで、月々の保険料負担を抑え、その分を新NISAなどの資産形成に回すことが可能になります。

終身保険が「貯蓄扱い」されやすい落とし穴

「一生涯の保障」と「貯蓄」を兼ね備えた終身保険も、見直しから漏れやすいポイントです。

「解約するともったいない」という心理が働き、高い保険料を払い続けてしまいがちですが、死亡保障としての役割は団信が大きく担っています。もし、保険料の支払いが家計を圧迫し、将来のための貯金や投資(iDeCo等)に回す余力がなくなっているのであれば本末転倒です。

終身保険の中には「低解約返戻金型」など、途中で払い済み(以降の保険料を止め、保障を小さく残す)にできるものもあります。団信という巨大な保障を得た今、高コストな「貯蓄型保険」に頼りすぎる必要はないのです。

それでも生命保険が必要になる家庭の条件

団信によって住宅ローンの不安が解消されたとしても、生命保険を「ゼロ」にできる家庭は多くありません。団信が肩代わりしてくれるのは、あくまで「住居費」という支出のパーツの一つだからです。

住宅費以外で守るべき生活費

世帯主に万が一のことがあった場合、公的保障として「遺族年金」が支給されます。しかし、遺族年金だけで全ての生活費を賄うことは困難です。以下の費用は、団信では一切カバーされません。

  • 食費・水道光熱費:家族が生活し続けるための基本コスト
  • 通信費・日用品:現代の生活に欠かせない支出
  • 車両維持費:地方在住などで車が必須な場合の買い替え費用
  • 予備費:冠婚葬祭や家のメンテナンス、急な出費への備え

団信によって住居費(月々数万〜十数万円)が浮いたとしても、残りの生活費を現在の収入や貯蓄、遺族年金で補えない場合は、その不足分を生命保険で準備する必要があります。

子どもの年齢で変わる必要保障

生命保険の必要額を左右する最大の要因は「教育費」です。子どもがまだ小さい家庭ほど、大学卒業までにかかる総額は大きくなり、必要な保障額も高くなります。

  • 未就学児〜小学生:教育費のピークが遠いため、長期にわたる生活費と多額の教育準備金が必要
  • 高校生〜大学生:教育費の出口が見えているため、必要な死亡保障額は減少傾向にある

文部科学省の調査によると、幼稚園から大学まで全て国公立だとしても一人あたり約1,000万円、全て私立の場合は約2,500万円以上の学習費が必要とされています。この「将来かかる教育費」の総額を把握することが、保険を見直す際の基準点となります。

配偶者の働き方で変わる考え方

残された配偶者がその後どのように収入を得るかも、保障設計に大きく影響します。

  • 共働き世帯:配偶者に安定した収入がある場合、必要保障額を抑えることが可能
  • 片働き(専業主婦・主夫)世帯:配偶者がすぐにフルタイムで働くことが難しい場合、当面の生活費を厚めに確保する必要がある

また、見落としがちなのが「配偶者が亡くなった場合」のリスクです。共働きでローンの返済を支え合っている場合や、専業主婦(主夫)が家事・育児を一手に引き受けている場合、その方が亡くなることで「外注費(ベビーシッターや家事代行)」が発生したり、世帯主の労働時間が制限されたりするリスクも考慮すべきでしょう。

死亡保障は「金額」より「期間」で考える

保険料のムダを省きつつ、必要な安心を確保するコツは「いつまで、いくら必要なのか」という時間軸の視点を持つことです。

一生必要な保障は本当にある?

人が亡くなった際にかかる費用は、大きく分けて2つです。

  1. 葬儀費用・整理資金:数百万程度。一生涯変わらない。
  2. 遺族の生活・教育資金:子どもの成長とともに減少していく。

「2」の資金は、子どもが独立してしまえば大幅に減額できます。一生涯高い保障額を維持する「終身保険」だけで備えようとすると、保険料が高額になり、今の生活や老後のための資産形成を圧迫してしまいます。

子育て期だけ厚くする考え方

賢い保険の組み方は、ベースを「小さな終身保険(または貯蓄)」で持ち、リスクの高い子育て期間だけ「大きな掛け捨て保険」を上乗せする構造です。特に「収入保障保険」は、子育て世帯との相性が抜群です。

  • 仕組み:契約直後の保障額が最大で、満期(子どもの独立など)に向けて徐々に受取総額が減っていく。
  • メリット:「必要な分だけ」を効率よく確保できるため、定額の定期保険よりも保険料が安く済む。

団信と期間設計の相性

住宅ローン(団信)も、返済が進むにつれて残債が減っていく、いわば「三角形の保障」です。生命保険(収入保障保険など)を同じように右肩下がりの設計にすることで、家計に過度な負担をかけない「スマートな保障の壁」を作ることができます。

期間 リスクの状態 最適な備え
ローン初期 / 子どもが小さい 住宅ローン残高大 + 教育費負担大 団信 + 厚めの収入保障保険
ローン中期 / 子どもが中高生 住宅ローン残高中 + 教育費の出口 団信 + 絞り込んだ収入保障保険
ローン完済間近 / 子どもが独立 住宅ローン残高小 + 教育費終了 団信 + 葬儀費用程度の終身保険

団信前提で保険を見直すときの注意点

住宅ローン(団信)を軸にした保険の見直しは、家計を劇的にスリム化するチャンスですが、安易な解約はリスクを招くこともあります。最後にチェックすべきポイントを整理します。

団信の保障内容は金融機関で違う

最近では、死亡・高度障害以外に「がん」「三大疾病」「全疾病」など、特約付きの団信が増えています。もし自身の団信が手厚い特約付きであれば、民間の医療保険やがん保険を以前のまま持ち続けるのは過剰かもしれません。逆に「一般団信(死亡のみ)」であれば、病気で働けなくなった際のリスクには別途備える必要があります。

夫婦どちらに団信がかかっているか

共働き世帯で特に注意が必要なのが、ローンの組み方です。ペアローンの場合、夫が亡くなっても妻側のローンは残ります。「夫に万が一のことがあっても家があるから大丈夫」と思い込み、妻側の生命保険を削りすぎてしまうと、残された夫が自身のローンと育児を一人で抱えることになりかねません。

次に考えるべき「死亡以外のリスク」への導線

団信によって「死亡リスク」に対する備えは強固になります。しかし、住宅ローンを抱える家庭にとって、実は死亡よりも家計へのダメージが深刻になりやすいのが「病気やケガで長期間働けなくなるリスク」です。

  • 死亡時:団信でローンが消え、遺族年金が入る。
  • 就業不能時(生存):ローンの支払いは続き、医療費がかさみ、収入だけが減る。

死亡保障の整理が終わったら、次は「生きて家族を支え続けるためのリスク管理」へ視点を移すことが、真に安心できる家計への近道となります。具体的な「働けなくなった時の備え」については、こちらの記事(内部リンク予定:就業不能保険の選び方)で詳しく解説しています。


出典・根拠一覧

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