お金を増やす(資産運用の基本)

教育資金に新NISAは使っていい?老後資金と両立させる現実的な組み込み方

「将来のお金が不安…」そう考えていても、何から始めればいいのか分からないという声が目立ちます。特に「教育資金」と「老後資金」は、人生の二大支出。どちらも数千万円単位の資金が必要になるため、新NISAをどちらの目的に優先させるべきか、判断が難しいポイントです。

SNSや家計相談の現場では、「教育費のために新NISAを始めたけれど、暴落したら学費が払えなくなるのでは?」「老後資金が足りなくなるのが怖くて、教育費に回す余裕がない」といった切実な悩みが数多く寄せられています。

結論から言えば、新NISAは教育資金と老後資金の「両立」に非常に適した制度です。ただし、それには「出口戦略」と「資産の切り分け」という明確なルールが必要になります。本記事では、損を避けるための判断基準と、家計を守りながら着実に資産を増やすための具体的な組み込み方を整理します。

教育資金と老後資金を“別々に考える”と失敗しやすい理由

「教育資金は学資保険、老後資金は新NISA」というように、目的ごとに金融商品を完全に切り分けて考えている家庭は少なくありません。しかし、家計全体を俯瞰(ふかん)せずに個別最適を進めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

教育費と老後資金は「性質が違うお金」

まず理解しておきたいのは、この2つのお金は「使う時期の確定度合い」が全く異なる点です。

  • 教育資金: 子供の年齢に応じて「いつ、いくら必要か」がほぼ正確に決まっています。支払いの延期ができない「デッドラインのあるお金」です。
  • 老後資金: 引退時期や寿命によって変動します。また、生活費の調整などである程度の融通が利く「柔軟性のあるお金」です。

この性質の違いを無視して、「とりあえず新NISAで全部まとめて運用すればいい」と考えてしまうと、いざ大学入学というタイミングで相場が冷え込んでいた場合、大きな損失を抱えたまま資産を引き出さざるを得なくなります。

同じ新NISAでも役割はまったく違う

2024年にスタートした新NISAは、非課税保有期間が無期限化されました。これにより、10年〜15年スパンの「教育資金」と、20年〜30年以上の「老後資金」を同じ口座内で管理できるようになりました。

しかし、制度は同じでも運用戦略は変える必要があります。教育資金は「必要時期に向けて徐々に安定資産へ移す」ことが求められる一方、老後資金は「できるだけ長く運用を続けて複利効果を最大化させる」ことが基本です。この役割分担を曖昧にすると、教育費を支払った後に「老後資金が全く残っていない」という事態を招きかねません。

家計全体で見ないと判断を誤る理由

家計を「教育」「老後」と切り離して考えすぎると、どちらか一方に資金が偏りすぎるリスクが生じます。

項目 教育資金に偏りすぎた場合 老後資金に偏りすぎた場合
リスク 老後の準備が遅れ、定年後に困窮する 学費が足りず、高利な教育ローンを組む
機会損失 運用期間が短くなり、複利の恩恵が減る 子供の進路選択肢を狭めてしまう

新NISAの枠(最大1,800万円)をどう配分するかは、現在の貯蓄額だけでなく、世帯年収や子供の人数、住宅ローンの有無など、家計全体のキャッシュフローから逆算して決めるのが正解です。

教育資金に新NISAを組み込む場合の考え方とリスク

教育資金の準備といえば「現金(預貯金)が一番安全」と考えられがちですが、今の時代、現金のみで持つことにもリスクが存在します。新NISAを賢く取り入れるための基準を見ていきましょう。

教育費をすべて現金で持つリスク

現在、日本を含め世界的に物価が上昇する「インフレ」の傾向にあります。

  • インフレリスク: 18年後に必要な大学費用が、今の価値のままとは限りません。授業料や下宿代が値上がりすれば、現金(預貯金)だけでは実質的に目減りしているのと同じ状態になります。

新NISAを活用して世界経済の成長を取り入れることは、このインフレに対する有力な防衛策となります。

投資に回してはいけない教育費のライン

ただし、「教育資金のすべてを新NISAで運用する」のは危険です。金融庁の資料等でも示されている通り、投資には元本割れのリスクが常に伴います。以下の基準で、投資に回していい金額を判断しましょう。

  1. 3年以内に使うお金: 原則としてすべて現金(普通預金・定期預金)で保有。
  2. 3年〜10年以内に使うお金: 一部を投資に回しても良いが、元本確保を優先。
  3. 10年以上先に使うお金: 新NISAでの積極的な運用を検討。

目安として、「高校卒業までに必要な資金の半分から3分の2」は現金で確保しておき、残りを新NISAで上乗せを狙うといった「ハイブリッド型」の準備が、最もバランスが良いとされています。

暴落時に「詰む家庭」と「耐えられる家庭」の違い

もし、大学入学の直前に「リーマンショック級」の暴落が起きたらどうなるでしょうか。ここで家計の命運を分けるのが「キャッシュポジション(現金比率)」です。

  • 詰む家庭: 資産のほぼ全てを新NISAに投じている。暴落時に学費を払うため、マイナスの状態で売却せざるを得ない。
  • 耐えられる家庭: 少なくとも初年度の学費+αの現金を別途持っている。運用分が回復するまで売却を待つ、あるいは運用分には手を付けず現金で対応できる。

新NISAを教育資金に使うなら、「最悪、運用分がゼロになっても学費が払えるか?」あるいは「不足分を給与や他の貯蓄から補填できるか?」という視点を常に持っておくことが、致命的な損失を避ける鍵となります。

老後資金は新NISAでどう守る?教育費に引きずられない設計

子育て世帯にとって、最大の懸念は「子供の教育費にお金がかかりすぎて、自分たちの老後資金が底をつくこと」ではないでしょうか。新NISAを活用する上で、老後資金を「聖域」として守り抜く考え方が重要になります。

老後資金は「最後まで触らない前提」で考える

新NISAの最大の武器は、運用益が非課税になる期間が無期限であることです。この恩恵を最も受けるのは、長期で運用し続けた場合です。

  • 複利の力を活かす: 運用で得た利益がさらに利益を生む「複利効果」は、期間が長ければ長いほど雪だるま式に大きくなります。
  • 途中で引き出さない: 老後資金として設定した分は、たとえ教育費が一時的に不足しそうになっても「最後まで触らない」という強い意志が必要です。

一度売却して現金化してしまうと、その後の複利効果を捨てることになり、老後の資産形成スピードが大幅にダウンしてしまいます。

教育費ピークが老後資金を削る危険性

最も注意すべきなのは、子供が大学に通う「教育費のピーク時」です。この時期、多くの家庭で家計が赤字になりやすく、新NISAの積立を停止したり、最悪の場合は老後用に貯めていた分を取り崩したりするケースが見られます。

注意点:積立停止のダメージ
大学費用のために5年間積立をストップした場合、その5年間に得られたはずの運用益だけでなく、将来に向けた「資産の種」を植える機会も失われます。これを防ぐには、教育費ピーク時でも「月々5,000円だけでも積み立てを続ける」といった、継続を優先する姿勢が求められます。

教育費と老後資金を混ぜない心理的メリット

一つの口座(新NISA)で管理していても、頭の中、あるいは管理シート上で「これは教育用」「これは老後用」と明確に分けておくことが、長期投資を成功させるコツです。

「教育費は子供が18歳になるまで」「老後資金は65歳から」と時間軸で線を引くことで、目先の家計の苦しさに振り回されず、将来の安心を確保しやすくなります。

新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の役割分担

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠があります。これらをどう使い分けるかが、教育資金と老後資金を両立させるカギとなります。

つみたて投資枠は何年後のお金向きか

つみたて投資枠は、その名の通り「長期・積立・分散」に適した商品のみが対象となっています。

  • 主な役割:老後資金の土台作り
  • 理由: 毎月一定額を自動で買い付けるため、手間がかからず、20年〜30年といった超長期の資産形成に最適です。日々の価格変動を気にせず、淡々と資産を積み上げる「老後への守り」に割り当てるのが基本戦略となります。

成長投資枠を教育費に使う場合の注意点

一方で、成長投資枠は一括投資も可能で、投資対象も幅広くなっています。これを「教育資金」の準備に活用するのも一つの手です。

  • 教育費への活用: 児童手当やお祝い金など、まとまったお金が入った際に「成長投資枠」で投資信託を購入する。
  • 注意点: 成長投資枠は自由度が高い分、売買のタイミングを自分で判断しがちです。しかし、教育資金は「使う時期」が決まっているため、不必要な売買は控え、あくまで「積立の補完」として活用するのが賢明です。

枠を分けることで迷いが減る理由

例えば、「つみたて投資枠は絶対に売らない老後用」「成長投資枠は教育費の上乗せ用」と自分なりにルールを決めておくと、管理が非常にシンプルになります。暴落が起きた際も、「老後用は30年先の話だから放置」「教育用はあと3年で使うから、今のうちに少し利益確定しておこう」といった、目的別の冷静な判断が可能になります。

教育費ピーク時に家計が壊れないための「逃げ道」設計

資産運用は「増やすこと」に注目しがちですが、実は「どう止めるか」「どう引き出すか」という出口の設計こそが、家計の破綻を防ぐ鍵となります。

取り崩し前提で考えておく重要性

新NISAで教育資金を準備する場合、「いつ、どのくらい売却するか」のシミュレーションを事前に行っておきましょう。教育資金の場合は、入学金などのまとまった支払いには「スポット売却」、在学中の生活費や授業料の補填には「定額取り崩し」を組み合わせるのが現実的です。

「売らない」以外の選択肢

もし大学入学時に相場が大きく暴落していたらどうすべきでしょうか。無理に新NISAを解約して損失を確定させる必要はありません。

  • 奨学金の活用: 無利子や低利子の奨学金を利用し、新NISAの資産は運用を続けたままにする選択肢です。運用利回りが奨学金の利息を上回るなら、経済的にも合理的と言えます。
  • 教育ローンの検討: 一時的な資金不足をローンで補い、相場の回復を待ってから新NISAを取り崩して返済に充てる方法もあります。

やらない判断(投資を控える)も戦略になる話

家計が苦しい時期に、無理をして投資を続ける必要はありません。投資を優先してしまい、手元の現金(生活防衛資金)が枯渇するのは本末転倒です。急な病気や失業に対応できる「現金」が不足しているなら、新NISAの積立を一時停止したり、減額したりするのは立派な戦略です。

結論:新NISAは「教育か老後か」ではなく「時間で役割を分ける」

教育資金と老後資金。この二大支出を新NISAでどう扱うべきかという問いに対し、導き出される答えは「どちらか一方を選ぶ」のではなく、「時間軸で役割を分担させる」ことです。

  • 教育資金=中期のお金: 目標額に向けて着実に積み上げつつ、使う時期が近づくにつれて徐々に現金比率を高めていく。
  • 老後資金=超長期のお金: 多少の暴落には目をつぶり、非課税枠をフルに活用して複利効果を最大化させる。

最後になりますが、お金の計画に「正解」はありません。しかし、「損をしたくない」「将来が不安」という気持ちを解消するために最も効果的なのは、家族でリスクを共有し、納得感のあるプランを立てることです。本記事で紹介した「時間による切り分け」と「逃げ道の確保」を参考に、無理のない資産設計を始めてみてください。


出典:
金融庁/NISA特設ウェブサイト(2025年12月24日確認)
日本証券業協会/投資の基本(2025年12月24日確認)

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