お金を増やす(資産運用の基本)

繰上返済と新NISA、どっちを優先?住宅ローン家庭が後悔しない判断基準

「将来のお金が不安…」そう考えていても、何から始めればいいのか分からないという声が目立ちます。特に「住宅ローンの繰上返済」と「新NISAでの資産形成」は、どちらも家計改善の要でありながら、どちらを優先すべきか判断が非常に難しいポイントです。

SNSやネット上では「投資の方が利回りが高いからお得」「いや、借金は早く返すべき」と相反する意見が飛び交っており、読者の方々からも「損をしたくないけれど、どう選べばいいの?」という疑問が多く寄せられています。

本記事では、金融知識に自信がない方でも納得して判断できるよう、「数字上の損得」と「家計の安心感」の両面から、後悔しないための判断基準を整理します。あなたのご家庭にとって最適な選択肢を見つけていきましょう。

繰上返済と新NISAで迷うのは“お金の性格が違う”から

住宅ローンの繰上返済と新NISA。どちらも将来を楽にするための行動ですが、実はこの2つは「お金の性格」が正反対です。この違いを理解せずに比較すると、自分の家計に合わない選択をしてしまうリスクがあります。

繰上返済は「確実なリターン」を得る行為

繰上返済を一言で表すと、「将来支払うはずだった利息をゼロにする」という行為です。

例えば、ローン金利が1.0%であれば、繰上返済をした金額に対して「確実に1.0%分の利息をカット」できます。投資の世界で「確実に利益が出る商品」は存在しません。そのため、繰上返済は非常に堅実な資産運用の側面を持っていると言えます。

  • メリット:利息負担が減る、完済が早まる、精神的な解放感
  • デメリット:手元の現金がなくなる、一度返すと取り戻せない

新NISA・つみたて投資は「期待リターン」を狙う行為

一方の新NISAは、「経済成長に乗ってお金を増やすことを期待する」行為です。

過去のデータでは、長期のインデックス投資は年平均4〜7%程度の収益が見込めると言われています。住宅ローンの金利を大きく上回る可能性がありますが、あくまで「期待」であり、元本割れのリスクが伴います。

  • メリット:ローン金利以上の利益が出る可能性がある、非課税で効率が良い
  • デメリット:資産が減るリスクがある、成果が出るまで時間がかかる

家計に与える影響の違い(安心感 vs 成長性)

この2つの最大の違いは、「家計の守り」か「家計の攻め」かという点です。

項目 繰上返済(守り) 新NISA(攻め)
確実性 非常に高い(利息削減は確定) 不確実(元本割れの可能性あり)
流動性 できない(家に消える) できる(売却して現金化が可能)
家計への効果 毎月の支出減 または 完済時期の短縮 将来の大きな資産形成

「借金がある状態がストレス」と感じる方にとって、繰上返済は強力な安心材料になります。一方で、「将来の老後資金が足りない」という不安が強い場合は、リスクを取ってでも新NISAで増やす視点が必要になります。


数字で比較するとどうなる?繰上返済とつみたて投資の期待値

結局どちらが得なのかを判断するポイントは、「ローン金利」と「運用の利回り」の差にあります。

住宅ローン金利=「確定利回り」としての考え方

資産運用の視点では、繰上返済を「ローン金利と同じ利回りの金融商品への投資」とみなします。金利1.0%で借りている場合、繰上返済は「1.0%の確定利回り投資」と同じ効果を生みます。これはノーリスクで得られるリターンとしては優秀な数字です。

新NISAの期待利回りと税制メリットの整理

新NISAの武器は、運用益に約20%かかる税金がゼロになることです。期待利回り5%の投資信託に100万円預けた場合、通常ならかかる約1万円の税金が不要になり、利益がまるごと手元に残ります。単純な「利回り比較」では、新NISAが有利になるケースがほとんどです。

単純比較が危険な理由:住宅ローン控除の存在

ここで忘れてはいけないのが、年末のローン残高に応じて税金が戻ってくる「住宅ローン控除(減税)」の存在です。もし借入金利が0.5%で、控除率が0.7%なら、お金を借りていることで実質的にお金が増えている(逆ザヤ)状態になります。この期間中は、無理に繰上返済をして残高を減らさないほうが、家計全体の資産は増えやすくなります。


金利タイプ別|繰上返済を優先すべき家庭の特徴

数字の理屈だけでなく、ローンの条件やライフプランによっては、早めに借金を減らす「繰上返済」が最優先となる場合があります。

変動金利の上昇局面への備え

変動金利で契約している場合、将来的に金利が上昇すると利息負担が増えます。金利が低いうちに繰上返済を行い元本を減らしておくことで、将来金利が上がった際の「利息の膨らみ」を抑え、家計へのダメージを軽減できます。

固定金利だが支払利息が重い場合

比較的高い固定金利(例:1.5%以上)で借りている場合、繰上返済による利息削減効果は非常に大きくなります。不確実な投資に回すよりも、確実なコストカットである返済を選ぶほうが、家計の安定に直結しやすいと言えます。

完済時期が定年を大きく超えているケース

65歳以降もローン返済が続く計画の場合、年金生活のなかでの返済は大きなリスクになります。定年までに完済できる目途が立っていないなら、新NISAで資産を増やす前に、まずは「老後の負債」を確実に削っておくことが賢明です。

【精神的ストレスを無視しない】
「借金があること自体が不安で眠れない」という方は、迷わず繰上返済を優先しましょう。心の平穏を保つことは、長く働き続けるための重要な基盤です。


新NISAを優先してもいい家庭の条件とは

一方で、以下の3つの条件に当てはまる場合は、投資を優先するメリットが大きくなります。

生活防衛資金が確保できている

新NISAを優先するための絶対条件は、手元に十分な現金(生活費の半年〜1年分)があることです。繰上返済したお金は引き出せませんし、投資は暴落時に売ると損をします。「何があっても困らない現金」があるからこそ、安心して投資に回せます。

住宅ローン控除の期間内である

控除を受けている間は、新NISAを優先すべき強力な理由があります。実質的に低コストでお金を借りて運用に回せている状態のため、この期間に無理に繰上返済をするのは、もらえるはずの還付金を捨てることになり、もったいない選択といえます。

投資期間を15年以上確保できる若い世代

20代後半から40代前半であれば、運用期間を長く確保できます。歴史的に、世界の株式市場は15年以上の長期保有でプラスの収益に収束する傾向があります。時間を味方につけて資産を大きく育てるほうが、トータルの資産形成としては合理的です。


我が家はどっち?迷ったときの判断フローチャート

優先順位を整理するための簡易ステップです。上から順に確認してください。

  1. 【最優先】生活防衛資金(生活費6ヶ月分)はありますか?
    • NO → まずは貯金を優先。投資も返済も後回しです。
    • YES → ステップ2へ。
  2. 住宅ローン控除の期間内ですか?
    • YES → 新NISAを優先。税制メリットを最大活用しましょう。
    • NO → ステップ3へ。
  3. ローンの金利は1.0%以上ですか?
    • YES → 繰上返済の恩恵が大きいです。
    • NO → 新NISAの方が資産を増やせる可能性が高いです。

迷ったときは「両立(ハイブリッド)」も一つの手です。例えば余剰金の半分を返済用貯金に、半分を新NISAに回すことで、安心感と成長性の両方を得られます。


繰上返済も新NISAも「やり方次第」で失敗する

良かれと思った行動でも、バランスを欠くと家計を苦しめます。

繰上返済の罠:手元資金の枯渇

現金をすべて返済に回した直後に、急な入院や家電の故障が発生し、結局高い金利のカードローンを借りてしまう……。これでは本末転倒です。住宅ローンは低金利な借金であるため、ある程度の現金を残しておくリスク管理が重要です。

新NISAの罠:暴落時の狼狽売り

株価が下がったときに怖くなって売ってしまうと、資産形成は失敗します。ローンという確実な負債があるからこそ、投資は「暴落しても生活に困らない範囲」で淡々と続ける忍耐が必要です。


まとめ|優先順位の正解は「家計と気持ちのバランス」

数値上の合理性を取るなら「住宅ローン控除期間は新NISA」、精神的な安定を取るなら「繰上返済」が基本の考え方です。しかし、家計管理の目的は数字の最大化だけではなく、将来の不安を解消することにあります。

どちらか一方に決めきれないのであれば、少額ずつ両方を始める選択も立派な戦略です。まずはご自身の家計の「現在地」を知ることから始めてみませんか。今日、返済予定表を確認してみる。その一歩が、数十年後の安心へと繋がっていきます。

【出典】
金融庁|NISAを知る
国税庁|住宅借入金等特別控除
日本証券業協会|投資の基礎知識
(確認日:2025年12月24日)

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