お金を整える(家計の最適化)

育児でもらえるお金を一覧で整理|申請しないと損する制度まとめ

「子どもが生まれると家計が厳しくなるのでは…」
「育休中は給料が出ないから不安」

出産や育児は大きな喜びである反面、このようなお金の不安が常につきまといます。特にはじめての育児では、オムツやミルク代といった目に見える支出だけでなく、将来の学費まで考えると「いくらあっても足りない」と感じてしまう方が少なくありません。

しかし、日本の公的な支援制度は非常に充実しており、「申請さえすればもらえるお金・戻ってくるお金」が数多く存在します。これらを正しく把握し、漏れなく活用することで、経済的な不安は大きく軽減できます。

本記事では、特に支出の変化が大きい0歳から3歳までの期間を中心に、育児世帯が使える制度を一覧で整理しました。「知らなくて損をした」という事態を防ぎ、賢く家計を守るためのガイドとしてお役立てください。

育児期はお金がかかる?家計が苦しくなる理由と対策

子どもが生まれると家計のバランスは大きく変化します。多くのご家庭で「なんとなく苦しい」と感じる背景には、収入と支出の構造的な変化があります。まずは敵を知ることから始めましょう。

産休・育休による「収入の壁」

会社員や公務員の場合、産前産後休業(産休)や育児休業(育休)を取得すると、原則として会社からの給与はストップします。
共働き世帯であっても、一方の収入が途絶えることで世帯年収は一時的に下がります。この「収入の減少」が、育児期の家計不安の最大の要因です。

しかし、ここで重要なのが「手取り額」の視点です。
給与はなくなりますが、代わりに「出産手当金」や「育児休業給付金」が支給されます。さらに、産休・育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除され、翌年の住民税も安くなる場合があります。
額面上の年収は下がっても、手取りベースで見ると「働いていた時の約8割程度」がカバーされるケースが多く、制度を正しく理解していれば過度に恐れる必要はありません。

おむつ・ミルク・被服費…「ちりつも」な支出増

収入面の変化に加え、支出も確実に増加します。
0歳児育児でかかる主な費用の目安は以下の通りです(内閣府や民間調査等の平均値を参考)。

  • おむつ・おしりふき代: 月額 3,000円〜5,000円
  • ミルク代(完全ミルクの場合): 月額 5,000円〜10,000円
  • 被服費・日用品: 月額 5,000円〜10,000円

これに加え、ベビーカーや抱っこ紐などの初期投資、予防接種の交通費、記念写真代など、突発的な支出も発生します。一つひとつは数千円でも、積み重なると月数万円の支出増となり、これが「貯金ができない」という焦りにつながります。

不安を解消するには「もらえる額」の把握から

「入ってくるお金」と「出ていくお金」が見えない状態こそが、不安の正体です。
支出を極限まで切り詰める節約はストレスが溜まりますが、「もらえるお金を確実にもらう」ことは、誰にでもできる最も効果的な家計防衛策です。

次章では、申請漏れを防ぐために、育児期に利用できる制度を一覧で確認していきましょう。

【早見表】育児でもらえるお金・戻ってくるお金一覧

育児に関連する支援制度は、「国」「自治体」「勤務先」など、財源によって窓口が異なります。ここでは全体像を把握しやすいよう、申請先別に整理しました。

国からもらえる制度(全員・会社員向け)

国の制度は金額が大きく、家計のベースとなるものです。

  • 児童手当
    • 対象: 0歳から高校生年代までのすべての子ども
    • 概要: 2024年10月の改正により所得制限が撤廃され、支給期間も高校生年代まで延長されました。第3子以降の加算も手厚くなっています。
  • 出産・子育て応援給付金
    • 対象: 妊娠届・出生届を提出した方
    • 概要: 妊娠時と出産時にそれぞれ5万円相当、計10万円相当が支給されます(自治体によりクーポンや現金など形態が異なる場合があります)。
  • 育児休業給付金(雇用保険)
    • 対象: 育休を取得する会社員(雇用保険被保険者)
    • 概要: 育休中の生活を支える給付金。当初180日は賃金の67%、以降は50%が支給されます。
  • 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
    • 対象: 子の出生後8週間以内に休業を取得した男性
    • 概要: 通常の育休とは別に、短期間の休業でも給付金を受け取れる制度です。

自治体からもらえる・助成される制度

お住まいの地域によって名称や内容が異なりますが、家計への恩恵が大きい制度です。

  • 子どもの医療費助成制度
    • 内容: 子どもの医療費(自己負担分)を自治体が全額または一部助成する制度。「マル乳」「マル子」などの名称で呼ばれます。
    • 注意点: 「窓口負担ゼロ」の地域もあれば、「一度払って後日還付」の地域もあります。
  • 自治体独自の祝い金・見舞金
    • 内容: 「出産祝い金」「次世代育成祝金」など、自治体が独自に現金を支給するケースがあります。数万円〜数十万円と差が大きいため、転居等の際は要チェックです。

会社からもらえる可能性がある手当

見落としがちなのが勤務先の福利厚生です。

  • 家族手当・扶養手当
    扶養家族の人数に応じて月額数千円〜数万円が給与に加算される場合があります。
  • 出産祝い金
    慶弔規定に基づき、一時金が支給されることがあります。

これらの制度は、待っていても自動的には振り込まれません。 大半が「申請」をトリガーとして支給されるため、次の章からは特に重要な制度の詳細と手続きについて解説します。

育児休業給付金|家計を支える最大の柱

共働きのご家庭や、会社員の方が最も頼りにすべき制度が「育児休業給付金」です。
「給料が出ない」という不安をカバーするための保険制度であり、正しい知識があれば、育休中の生活水準を極端に落とさずに過ごすことが可能です。

もらえる条件と対象者(パパ・ママともに確認)

この給付金は、雇用保険(失業保険)の一部です。そのため、以下の条件を満たす人が対象となります。

  1. 雇用保険に加入していること(パート・契約社員も条件を満たせばOK)
  2. 育休前の2年間に、月11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
  3. 育休終了後に職場復帰する意思があること

※専業主婦(夫)や、自営業・フリーランス(国民健康保険加入者)の方は対象外となるため注意が必要です。

いくらもらえる?給与の67%・50%の計算方法

給付額は「休む前の給与(額面)」を基準に決まります。

期間 給付率(計算式)
育休開始〜180日目(約半年) 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
181日目以降 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

ここが重要!「手取り」で考えると約8割

「給料の67%に減るのか…」と不安になるかもしれませんが、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除され、給付金自体には所得税がかかりません
そのため、実際に使えるお金(手取り)の感覚としては、働いていた時の約8割程度が維持されます。

いつ振り込まれる?申請のタイミングと注意点

最大の注意点は「振り込みの遅さ」です。
給付金は原則として「2ヶ月に1回」の申請・振り込みとなります。

  • 初回振り込みの目安: 出産から約3〜4ヶ月後
  • 注意点: 出産直後から最初の振り込みまで、数ヶ月間は「収入ゼロ」の期間が発生します。

この期間を乗り切るための生活費(貯金)は、妊娠中から計画的に確保しておく必要があります。「申請したのにすぐ入らない!」と焦らないよう覚えておきましょう。

パパの「出生時育児休業給付金(産後パパ育休)」とは

男性の育児参加を促すため、通常の育休とは別に設けられた制度です。

  • 時期: 子どもの出生後8週間以内
  • 期間: 最大4週間(2回に分割可能)
  • 給付率: 67%

「里帰りから戻るタイミング」や「産後のママの体調が辛い時期」に合わせて短期間でも取得しやすく、給付金もしっかり出るため、収入減を抑えつつ育児に参加できます。

児童手当|2024年制度改正のポイントと基本

児童手当は、子育て世帯に現金が給付される最も基本的な制度です。2024年10月に大きな制度改正(拡充)が行われ、これまで対象外だったご家庭も受け取れるようになっています。

支給額と対象年齢(改正後の内容を反映)

現在は、高校生年代(18歳到達後の最初の3月31日まで)の子どもがいる全世帯が支給対象です。

子どもの年齢・区分 支給月額(1人あたり)
0歳 〜 3歳未満 15,000円
3歳 〜 高校生年代 10,000円
第3子以降(※) 30,000円

※第3子以降のカウント方法:大学生年代(22歳年度末)までの上の子を含めて数えます。

所得制限の撤廃について

以前は「世帯主の年収が高いと減額、または支給なし」という所得制限がありましたが、2024年10月の改正で撤廃されました
現在は、親の年収に関わらず、すべての子育て世帯が上記の満額を受け取ることができます。

第3子以降の加算(多子世帯への優遇)

3人以上のお子さんがいる場合、3人目以降は月額30,000円に増額されます。
この「第3子」の数え方も拡充されており、例えば「21歳の長男(大学生)、17歳の次男(高校生)、10歳の三男(小学生)」がいる場合、大学生の長男を第1子とカウントするため、小学生の三男は「第3子」扱いとなり月3万円が支給されます。

申請しないと始まらない!手続きの落とし穴

児童手当は、原則として申請した翌月分から支給されます。

  • 「15日特例」: 月末に出産した場合、出産日の翌日から15日以内に申請すれば、申請月(生まれた月)に申請したとみなされ、損をしません。
  • 公務員の方へ: 一般的な会社員は「お住まいの自治体」に申請しますが、公務員は「勤務先」に申請する必要があります。退職や転職で民間企業に移った場合は、改めて自治体への申請が必要になるため、切り替え忘れに注意してください。

自治体独自・その他の支援制度も漏れなくチェック

国の制度に加え、お住まいの自治体が独自に行っている支援も見逃せません。特に「医療費」や「一時金」は、知っているかどうかで数万円単位の差がつくことがあります。

出産・子育て応援給付金(計10万円相当)

2023年から本格化した比較的新しい制度で、すべての妊婦・子育て家庭が対象です。

  • もらえる額: 妊娠届出時に5万円 + 出生届出時に5万円 = 合計10万円相当
  • 受け取り方: 現金振り込みのほか、自治体によっては電子クーポンやギフトカードで支給される場合もあります。
  • 注意点: 支給の条件として、保健師との面談やアンケートへの回答が必須となっているケースがほとんどです。「忙しいから」と面談を後回しにしていると、申請期限を過ぎてしまう恐れがあるため、案内が届いたら早めに対応しましょう。

子どもの医療費助成制度(地域による差と活用法)

子どもの医療費(健康保険適用分)の自己負担額を、自治体が助成してくれる制度です。
「マル乳」「マル子」といった医療証が発行されますが、内容は自治体によって大きな差があります。

  • 対象年齢: 「中学生まで」が一般的ですが、「18歳まで」「大学生まで」とする自治体も増えています。
  • 自己負担: 「完全無料」の地域もあれば、「1回500円」などの一部負担がある地域もあります。
  • 県外受診に注意: 里帰り出産などでお住まいの都道府県外の病院を受診した場合、その場では医療証が使えず、一旦3割負担などで支払う必要があります。この場合、後日領収書を役所に提出すれば差額が戻ってくるため、領収書は絶対に捨てずに保管してください。

高額療養費制度(医療費が高額になった場合)

これは自治体独自ではなく国の健康保険制度ですが、出産時に役立つ重要な仕組みです。
帝王切開や切迫早産での管理入院など、医療費が高額になった場合、月ごとの自己負担限度額(年収により約8万円〜など)を超えた分が払い戻されます。

  • ポイント: 事前に「限度額適用認定証」を入手して病院に提示すれば、窓口での支払いを最初から限度額までに抑えられます。帝王切開の予定がある場合などは、加入している健康保険組合へ早めに問い合わせましょう。

保育園・仕事復帰に関わるお金の仕組み

育休からの復帰を考える際、避けて通れないのが「保育料」です。
「働いた給料がほとんど保育料に消える…」という事態を避けるためにも、仕組みを理解しておきましょう。

保育料はどう決まる?住民税との関係

認可保育園の保育料は、一律ではなく「世帯の住民税額(所得割額)」によって決まります。つまり、パパとママの年収が高いほど保育料も高くなります。

  • 切り替え時期: 毎年9月に、算定基準となる住民税の年度が切り替わります。
  • 復帰直後の注意: 育休明けで時短勤務になり給与が減っても、保育料は「バリバリ働いていた前年(または前々年)の年収」を元に計算される期間があります。復帰初年度は「収入は減ったのに保育料は高い」という状態になりがちなので、事前の貯蓄が重要です。

幼児教育・保育の無償化(3歳児クラスからの適用範囲)

「保育園は無料になる」と聞いたことがあるかもしれませんが、年齢によって条件が異なります。

  • 0歳〜2歳児クラス: 住民税非課税世帯のみが無償化の対象です。一般的な共働き世帯(課税世帯)は保育料がかかります。
  • 3歳児クラス〜5歳児クラス: 全世帯が無償化の対象です(給食費や行事費などは実費負担)。
  • 注意点: 「3歳の誕生日を迎えたらすぐ無料」ではありません。原則として「3歳になった後の最初の4月(3歳児クラスに進級した時)」から無償化が始まります。

育休延長が必要な場合の給付金継続手続き

保育園に入れない(待機児童になる)場合、育休を1歳6ヶ月、あるいは2歳まで延長できます。この際、育児休業給付金も延長して受け取ることが可能です。

  • 必須書類: 自治体が発行する「保育所入所保留通知書(不承諾通知書)」など、保育園に申し込んだが入所できなかったことを証明する書類が必要です。
  • 落とし穴: 「どうせ入れないから」と申し込み自体をしていないと、延長の理由が証明できず、給付金が打ち切られてしまいます。延長を希望する場合でも、必ず入所申し込みの手続きを行ってください。

【シミュレーション】育児中にもらえる総額はいくら?

制度が多すぎて「結局いくらになるの?」と混乱しやすい部分です。ここでは一般的なモデルケースを用いて、出産から1歳までの間にもらえる・浮くお金を試算してみましょう。

モデルケースA:共働き(正社員)の場合

条件: 夫(年収450万円)、妻(年収350万円)、第1子
状況: 妻が産休・育休を1年間取得

項目 概算金額(目安) 備考
出産手当金(産休中) 約65万円 健康保険から支給
出産・子育て応援給付金 10万円 妊娠時・出産時の合計
育児休業給付金(育休中) 約160万円 給与の67%〜50%
児童手当(0歳〜1歳) 18万円 月1.5万円 × 12ヶ月
【合計】 約253万円 ※別途、社会保険料免除の恩恵あり

年収350万円の妻の手取り年収が約270〜280万円だとすると、働かない期間でも約250万円相当の現金給付がある計算です。「収入がゼロになる」わけではないことがよく分かります。

モデルケースB:片働き(扶養内)の場合

条件: 夫(会社員)、妻(専業主婦・扶養内パート)、第1子

項目 概算金額(目安) 備考
出産育児一時金 50万円 出産費用の補助として病院へ直接支払われるケースが多い
出産・子育て応援給付金 10万円 妊娠時・出産時の合計
児童手当(0歳〜1歳) 18万円 月1.5万円 × 12ヶ月
【合計】 約78万円 ※妻のパート勤務状況により育休給付金の有無は異なる

雇用保険に加入していない場合、育児休業給付金はありませんが、出産費用や児童手当などの公的支援はしっかり受け取れます。

現金給付と「支出の減免」をあわせて考える

上記の現金に加え、以下の「払わなくて済むお金」も家計を助けています。

  • 社会保険料免除: 育休中は月数万円の天引きが0円に。
  • 住民税の負担減: 前年の所得が減ると、翌年の住民税や保育料が安くなります。

これらを合わせると、国は子育て世帯に対して非常に手厚いバックアップを用意していると言えます。

申請しないと損!よくある勘違いと注意点

どんなに手厚い制度も、申請書を1枚出し忘れるだけで受け取れなくなってしまいます。最後に「ここだけは気をつけて」というポイントをまとめました。

「自動的に振り込まれる」は間違い

日本の公的制度は基本的に「申請主義」です。「役所が知っているはずだから振り込んでくれるだろう」ということはありません。
特に出産直後は心身ともに余裕がないため、パートナーと協力して「誰が・いつ・何を出すか」をリスト化しておくことを強くおすすめします。

里帰り出産や引っ越し時の手続き漏れ

  • 里帰り出産: 児童手当や医療証の手続きは、「住民票がある自治体」で行います。里帰り先(実家)の役所では手続きできないため、パパに頼むか、郵送での手続き準備が必要です。
  • 引っ越し: 転出・転入のタイミングで、児童手当や医療証の「受給資格」が一旦消滅し、新住所で再申請が必要になります。手続きが遅れると、その月分の手当がもらえなくなる(日割り計算されない)ことがあるため、転入届と同時に窓口で手続きを済ませましょう。

期限を過ぎると遡って受け取れないケース

多くの制度には「時効」があります。例えば、育児休業給付金の申請期限は「支給対象期間の末日の翌日から2年」ですが、申請が遅れると毎月の生活費が入ってきません。
児童手当に至っては、申請が遅れた月に関しては遡って支給されません(15日特例を除く)。「忘れていた」が数百万円の損失につながらないよう、期限管理は厳重に行いましょう。

まとめ:もらったお金と浮いたお金で「将来の学費」を準備する

育児期はお金が出ていくばかりに思えますが、制度をフル活用すれば、意外と手元にお金を残せる時期でもあります。

  • 制度を漏れなく申請する: 児童手当、育休給付金、医療費助成など。
  • 浮いたお金は「なかったこと」にする: 支給されたお金を生活費の赤字補填に使い切ってしまうのではなく、一部でも将来のために取り分けましょう。

特に児童手当は、0歳から高校卒業まで全額貯めると約230万円〜(第3子ならもっと高額)になります。これをそのまま大学費用の原資にするのも良いですし、インフレに負けないよう「新NISA」を活用して運用するのも賢い選択です。

「手続きは面倒」と感じるかもしれませんが、その手間は時給換算すれば数万円、数十万円の価値があります。まずは母子手帳を受け取った時に配られる冊子や、お住まいの自治体サイトをチェックすることから始めてみてください。


【参考文献・出典】
こども家庭庁|児童手当制度のご案内
こども家庭庁|出産・子育て応援交付金
厚生労働省|育児休業給付について
(確認日:2025年12月24日)

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