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マンションの査定価格はどこまで信じていい?複数社査定の正しい見方と判断基準

「マンションを売るなら少しでも高く」そう考えて一括査定を利用してみたものの、届いた査定結果のバラつきに戸惑う声が多く聞かれます。A社は3,500万円、B社は3,200万円、C社にいたっては4,000万円近い……。これほど差が出ると、「結局、本当の価値はいくらなの?」「高い金額を信じて大丈夫?」と不安になるのも無理はありません。

SNSや口コミサイトでも、「高い査定額を信じて契約したのに、結局大幅に値下げすることになった」「会社によって言うことが違いすぎて、誰を信じればいいかわからない」といった悩みが散見されます。実は、マンションの査定価格には「絶対に正しい正解」というものが存在しません。それぞれの会社が異なる基準や戦略、そして時には「契約を取りたい」という意図を持って算出した、あくまで一つの「予測」に過ぎないからです。

本記事では、複数社の査定結果をどう読み解き、どの会社を信頼すべきかの判断基準を整理します。金額の高さだけに目を奪われず、損をしないための「査定書のチェックポイント」を一緒に見ていきましょう。この記事を読み終える頃には、バラバラの数字の裏にある根拠を見抜き、自信を持って次のステップへ進めるようになっているはずです。


なぜマンションの査定価格は不動産会社ごとに違うのか

一括査定を依頼すると、数百万単位で価格差が出ることが珍しくありません。なぜ同じ物件なのに、プロの判断がこれほどまでに分かれるのでしょうか。その背景には、不動産業界特有の事情と「査定価格」という言葉の定義が大きく関係しています。

査定価格は「売却保証額」ではなく、あくまで「3ヶ月以内に売れる予想価格」

まず大前提として知っておきたいのは、査定価格は「その金額で不動産会社が買い取ってくれる保証額」ではないということです。

不動産会社が出す査定価格の多くは、「現在の市場で売りに出した場合、概ね3ヶ月以内に成約に至るであろう価格」を指します。これは、公益財団法人不動産流通推進センターが定めた基準に準拠した考え方です。あくまで「売れる可能性が高い金額」の予測であり、最終的な売値を決めるのは、買い手との交渉です。

そのため、会社によって「少し強気の価格設定で様子を見ましょう」とチャレンジングな姿勢を取るか、「確実に売れる手堅い価格を提示して安心感を与えよう」と保守的な姿勢を取るか、その「売り方のスタンス」の違いが査定額の差となって現れます。

不動産会社ごとに参照する「過去の成約事例」や「市場の捉え方」が異なる

マンションの査定には、一般的に「取引事例比較法」という手法が使われます。これは、似た条件の物件(事例)が過去にいくらで売れたかをベースに、所在階や向き、築年数などの違いを補正して算出する方法です。

しかし、どの物件を「比較対象」として選ぶかは、担当者の裁量に委ねられています。以下の表のように、視点の置き方によって算出結果は変動します。

重視するポイント 査定への影響
同じマンション内の過去事例 精度は高いが、直近の事例がないと古いデータに引きずられる
近隣エリアの類似物件 市場全体のトレンドを反映しやすいが、マンション特有の価値が薄まる
現在売り出し中のライバル物件 今の買い手がどう比較するかという「実戦的」な視点になる

媒介契約(依頼)を取るために、意図的に高めの数字を提示するケース

不動産業界の構造的な問題として、「契約を取りたいがために、相場を無視した高額査定を出す」という手法が存在します。これは「高預かり」とも呼ばれます。

売主からすれば、1円でも高く評価してくれる会社に頼みたくなるのが人情です。その心理を突き、根拠の乏しい高値を提示してまずは媒介契約を結び、その後「反応が悪いので」と段階的に値下げをさせていく手法です。読者から寄せられる声の中でも、この「期待外れの高値提示」によるトラブルが最も多く見られます。

チェックポイント:
査定額が高いこと自体が悪いわけではありません。大切なのは「なぜその金額なのか」というロジックが、他社と比較して客観的に通っているかどうかです。

高すぎる査定が必ずしも「嘘」とは限らないケース

一方で、あえて高い査定を出すことに合理的な理由がある場合もあります。例えば以下のようなケースです。

  • 特定の購入希望者がいる: その会社が「このマンションのこの間取りなら高くても買いたい」という顧客(待機客)を既に抱えている場合。
  • 希少価値の見極め: 「最上階・角部屋」「大規模リフォーム済み」など、過去の平均データには現れない付加価値を正当に評価している場合。

納得感のある高い査定なのか、単なる「釣り」の査定なのかを見極めるには、次の章で紹介する「根拠の確認」が不可欠です。


複数社査定でチェックすべき「金額以外」の重要ポイント

査定書が手元に届いたら、真っ先に「価格」を見てしまいがちですが、本当に見るべきは「その数字に至ったプロセス」です。信頼できる不動産会社かどうかは、金額の多寡よりも、資料の質や説明の誠実さに現れます。

査定書に「具体的かつ客観的な根拠」が記載されているか

質の高い査定書には、誰が見ても納得できるデータが添えられています。国土交通省の指針でも、査定価格の根拠を明示することは不動産会社の義務とされています。

  • 比較事例の具体性: 築年数、駅距離、専有面積、方位などが自分の物件とどう違うか、具体的な調整率(プラスマイナス何%など)が示されているか。
  • 成約時期の鮮度: 参照している事例が1年以上前のものでないか。直近3〜6ヶ月以内の動向が反映されているか。
  • 市場動向の分析: エリア内の在庫数(ライバル物件の数)や、平均的な成約期間の推移など、マクロなデータが提示されているか。

近隣の類似物件の動き(競合状況)が考慮されているか

マンションを売る際、最大の障壁となるのは「同じエリアで現在売り出されているライバル物件」です。買い手は必ず「あっちのマンションは3,500万だけど、こっちは3,800万か。その差に見合う価値があるかな?」と比較します。

査定の説明の中で、過去のデータだけでなく、「今、近隣でどんな物件がいくらで出ているか」「それらと比較して、あなたの物件はどう有利・不利か」という現在進行形の分析に触れている会社は、現場の動きをよく見ていると言えます。

自分のマンション特有のプラス要素・マイナス要素が反映されているか

マンション全体の価値だけでなく、「あなたの部屋ならではの価値」を見てくれているかも重要です。以下のようなポイントが加味されているか確認しましょう。

  • 大規模修繕が完了したばかりで、共用部の管理状態が良い。
  • ペット飼育可、楽器使用可など、特定の需要に応えられる規約がある。
  • 室内が丁寧に使われており、ハウスクリーニング程度で住み始められる。

こうした、机上のデータだけでは分からない個別の事情をヒアリングし、査定に反映させようとする姿勢がある担当者は、売却活動においても粘り強く魅力を伝えてくれる可能性が高いでしょう。

こちらの質問に対し、根拠を持って納得感のある回答をくれるか

査定結果を受け取ったあとに、あえて「なぜ、B社より300万円も高い(あるいは低い)のですか?」と質問を投げかけてみてください。

良い担当者は「他社さんは事例Aを使っていますが、現在のトレンドでは事例Bの方が買い手の心理に近いため、弊社ではこの設定にしています」と論理的に答えます。一方で、注意が必要な担当者は「弊社のブランド力ならこの価格でいけます」といった、根拠のない自信や精神論で押し通そうとします。マンション売却は数ヶ月にわたる共同作業です。金額の多寡以上に、「この人は信頼できるパートナーか」という視点が欠かせません。


高すぎる査定価格をそのまま信じてしまうと起こる「失敗パターン」

「少しでも高く売りたい」という気持ちは、すべての売主に共通する願いです。しかし、客観的な相場から大きく乖離した査定価格を真に受けてしまうと、結果的に売却期間が長引き、手元に残る金額が減ってしまうという本末転倒な事態を招きかねません。制度や市場の仕組みから明らかな「失敗の構造」を整理します。

「高値放置」によって物件の鮮度が落ち、最終的に相場以下で売る羽目に

不動産売却において、最も注目が集まるのは「売り出し直後」の2週間から1ヶ月程度です。新着物件としてポータルサイトの上位に表示され、購入検討者の目に留まりやすいからです。

しかし、相場より明らかに高い価格でスタートすると、以下のような悪循環に陥ります。

  1. 「高すぎる」と判断され、内覧の申し込みが入らない。
  2. 市場に長く滞留することで、買い手に「何か問題がある売れ残り物件では?」という疑念を持たれる。
  3. しびれを切らして値下げをした頃には、物件の「旬」が過ぎている。
  4. 買い手から「ずっと売れ残っているから、もっと安く買い叩けるはず」と足元を見られる。

結果として、最初から適切な相場価格で売り出していた場合よりも、低い金額で成約せざるを得なくなるケースは少なくありません。これを防ぐには、査定額の「一番高い数字」ではなく「一番納得感のある数字」からスタートすることが肝要です。

買い替え先の資金計画が崩れ、深刻なトラブルが発生するリスク

今の家を売ったお金で新しい家を買う「住み替え」を検討している場合、高すぎる査定額を信じるリスクはさらに増大します。売却予想額をベースに新居のローン審査や資金計画を立ててしまうと、実際にはその金額で売れなかった場合、資金がショートしてしまいます。

  • 新居の頭金が払えず、手付金を放棄して契約解除せざるを得なくなる。
  • 売却が完了するまで、旧居と新居の「二重ローン」を抱え続け、家計が破綻する。

住み替えを伴う場合は、最も高い査定額ではなく、「最低でもこれくらいでは売れる」という保守的な金額を基準に計画を立てるのが、堅実な資産形成の鉄則です。


複数社査定のあと、不動産会社をどう絞り込むか

複数の会社から査定結果が届き、その根拠も確認した。次はいよいよ、どの会社とパートナーシップを組むかを決める段階です。失敗しないための最終的な判断軸を紹介します。

価格の高さではなく、算出の「前提条件」が妥当な会社を選ぶ

査定価格を比べる際は、「金額」そのものではなく「どんな条件での売却を想定しているか」を比較してください。

  • 「3ヶ月以内に確実に売るための価格」を出している会社(安定重視)
  • 「ターゲットを絞り、半年かけてでも高値を狙う戦略」を持つ会社(利益重視)

どちらが正解ということはありませんが、自分のライフプラン(いつまでに現金化したいか)と、その会社の戦略(前提条件)が一致していることが重要です。

「いくらで売るか」ではなく「どうやって売るか」の戦略に具体性があるか

「頑張って売ります」という精神論ではなく、具体的な販売戦略を提示してくれる会社は信頼に値します。以下の項目について、提案があるかチェックしましょう。

  • ターゲット選定: どのような層(単身、新婚、周辺住民など)にアプローチするか。
  • 露出媒体: どのポータルサイトに広告を出し、どのような見せ方をするか。
  • 差別化提案: 室内を広く見せる工夫や、建物保証の付帯など、競合物件に勝つための具体的な武器があるか。

相性・レスポンスの速さ・誠実さ。最後は「人」としての信頼性

不動産売却は、担当者との二人三脚です。どんなに会社の知名度が高くても、担当者との相性が悪ければストレスが溜まり、適切な判断も難しくなります。メールの返信スピード、デメリットも正直に話す誠実さ、こちらの要望を汲み取った上でのプロとしての助言。こうした「コミュニケーションの質」こそが、最終的な満足度を左右します。


査定は「ゴール」ではなく、納得のいく売却に向けた「判断材料」

マンション査定は、売却活動のほんの入り口に過ぎません。届いた査定結果に一喜一憂するのではなく、それを「自分なりに市場を理解するためのデータ」として捉えることが、成功への第一歩です。

複数の査定額を並べて見えてくる「自分の物件の真の価値」

3〜4社から査定を取ると、多くの場合、ある一定の「ボリュームゾーン(価格帯)」が見えてきます。例えば3,200万円、3,300万円、3,800万円という結果が出たなら、真の相場は「3,200万〜3,300万円」のあたりにあると推測するのが合理的です。

3,800万円という数字は「最高の条件が重なった時の希望的観測」として捉え、3,200万円を「手堅い最低ライン」として資金計画を立てる。このように情報を多角的に使うことで、大きな判断ミスを防ぐことができます。

もし、まだ一括査定を利用するかどうかで迷っている、あるいはサービスの選び方がわからないという方は、まず「不動産一括査定サービスとの正しい付き合い方」をチェックし、適切な距離感を知ることから始めてみてください。

「いくらで売れるか」を正しく知ることは、あなたの将来の選択肢を広げ、資産を守ることにつながります。数字の裏にある根拠を冷静に見極め、納得のいく売却を目指しましょう。


【出典・参照元】

※本記事の内容は2025年現在の税制・法令に基づいています。実際の取引にあたっては、必ず専門家や各不動産会社へ詳細をご確認ください。

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