お金を活かす(住まいと資産の活用)

住み替えは「先に買う?先に売る?」どっちがいいかを家計・ローン目線で徹底比較

「今の家が手狭になった」「子供の進学に合わせて住み替えたい」と考えたとき、避けて通れないのが「買うのが先か、売るのが先か」という選択です。

SNSなどの口コミを見ると、「先に買わないと良い物件を逃す」「先に売らないと二重ローンで破綻する」といった正反対の意見が飛び交っています。実際、不動産情報ポータルサイト等のアンケートでも、住み替え経験者の多くがこの「順番」の判断に最も頭を悩ませたという結果が出ています。

住み替えは、単なる「買い替え」ではなく、「今の家の売却」と「新しい家の購入」という2つの大きな取引を、限られた時間の中で同時に進める高度なパズルです。仕組みが複雑なうえ、判断を一つ誤れば家計に致命的なダメージを与えるリスクも含んでいます。

本記事では、特定の正解を押し付けるのではなく、あなたの家計状況やローンの残債に合わせて「どのルートが最も安全か」を判断するための基準を整理しました。不動産会社がなかなか口にしない「家計が詰むリスク」についても、客観的なデータに基づいて解説します。


住み替えで「先に買う」「先に売る」論争が起きる理由

なぜ住み替えの順番には、これほどまでに議論が絶えないのでしょうか。その理由は、売却と購入のタイミングを完璧に一致させることが、現実的には極めて難しいためです。

住み替えは“売却と購入を同時に考える”から難しい

通常の住宅購入と異なり、住み替えには「売る」「買う」という二つのゴールが存在します。

  • 売却: いつ、いくらで売れるか確定しない
  • 購入: 理想の物件がいつ市場に出るか分からない

この二つの不確定要素を同時にコントロールしようとすると、必ずどちらかが先行します。

「先に買う」を選べば、新しい家をじっくり選べますが、今の家が売れるまで住宅ローンが重なるリスクが生じます。一方で「先に売る」を選べば、手元資金は確定しますが、次の家が決まるまで仮住まいが必要になり、引っ越し費用やかさむ家賃といったコストが発生します。この「お金の確実性」と「住まいの安定性」のトレードオフが、論争の根本的な原因です。

不動産会社・銀行で答えが変わるカラクリ

相談する相手によってアドバイスが異なることも、読者を混乱させる要因の一つです。

不動産会社は「良い物件はすぐに無くなりますよ」と、購入先行(先に買う)を勧める傾向があります。これは、購入契約を先に結んでもらうことで、仲介手数料の目途を早めに立てたいという営業上の側面も否定できません。

一方、銀行などの金融機関は慎重です。今のローンの残債が多い場合、銀行側は「今の家を売ってローンを完済してからでないと、次のローンは組めません」と、売却先行(先に売る)を前提とした回答をすることが一般的です。

どちらも立場に基づいた「正論」を述べているに過ぎず、個別の家計が耐えられるリスクまで考慮してくれているとは限りません。

家族持ち世帯ほど判断が遅れる心理的要因

特に20代後半から40代前半の「子育て・仕事盛り」の世帯では、心理的な負担も判断を鈍らせます。

「子供の転校を避けたい」「受験シーズンに引っ越したくない」といった家族の事情が最優先されるため、家計にとって多少無理があっても、スケジュール優先で「先に買う」を選んでしまいがちです。しかし、無理なスケジュール設定は、結果として「今の家を安値で叩き売らざるを得ない」状況を招き、将来の資産形成に影を落とすことになります。


「先に買う(購入先行)」パターンのメリットと致命的な落とし穴

「先に買う」という選択は、精神的な余裕を生む一方で、家計管理の面では「見えない爆弾」を抱えることと同義です。

先に買う最大のメリットは「時間と精神的余裕」

購入を先行させる最大の利点は、納得のいくまで新居を選べることです。

  • 気に入った物件を他人に買い取られる心配がない
  • 仮住まいを挟まないため、引っ越しが1回で済む
  • 新居への入居時期に合わせて、今の家の売却活動をゆっくり進められる

特に、希望のエリアが限定されている場合や、特殊な間取りを求めている場合、理想の物件に出会えるチャンスは一期一会です。「先に売る」を選んで住む場所を失う恐怖がないことは、家族連れにとって大きなメリットとなります。

ダブルローンが発生する条件とは?

しかし、最大の懸念は「ダブルローン(二重債務)」です。

ダブルローンとは、今の家のローンが残っている状態で、新しい家のローン返済も始まる状態を指します。多くの金融機関では、以下の条件を満たせばダブルローンを認めますが、審査は非常に厳しくなります。

審査項目 内容
返済負担率 今のローン + 新しいローンの合計返済額が、年収の30〜35%以内に収まるか
完済計画 今の家が半年以内に売却できる見込みがあるか(媒介契約の提出など)
担保価値 今の家が、ローン残債をカバーできる価格で売れる見通しか

先に買って“詰む人”の典型パターン

「先に買う」を選んで家計が破綻、あるいは大きな損失を出すのは、以下のようなケースです。

  1. 売却価格を楽観視していた: 「3,000万円で売れる」と思っていた家が、実際には2,500万円の査定しかつかなかった。
  2. 売却期間が長期化: ダブルローンを抱えて半年が経過し、精神的・経済的に追い詰められ、最終的に相場より数百万円安い価格で業者買取に走る。
  3. 予備費がない: ダブルローンの支払いで貯金が底をつき、新居の家具代や修繕積立金の支払いが困難になる。

国土交通省のデータを見ても、売り急ぎによる成約価格の低下は顕著です。「先に買う」は、潤沢な現預金があることが前提の戦略といえます。

先に買う場合に最低限確認すべき3つの条件

もし「先に買う」ことを検討するなら、以下の3項目すべてに「YES」と言えるか確認してください。

  • 今の家のローン残債が、売却想定価格(最低ライン)を確実に下回っているか
  • 今の家が売れるまで、半年分のダブルローンを支払える貯蓄があるか
  • 万が一売れなかった場合、大幅な値下げ(または業者買取)を受け入れる覚悟があるか

「先に売る(売却先行)」パターンのメリットと見落としがちなリスク

「損をしたくない」と考える多くの家計にとって、王道とされるのが「先に売る(売却先行)」という選択肢です。しかし、家計の数字上のメリットとは裏腹に、生活面での負担が重くなる傾向があります。

資金計画が立てやすいのが最大の強み

売却先行の最大のメリットは、「次の家にいくら使えるか」が1円単位で確定することです。

今の家がいくらで売れるか、住宅ローンの完済後にいくら手元に残るか、頭金としていくら充当できるかが明確になるため、新居選びで予算オーバーになるリスクをほぼゼロにできます。金融機関からの融資審査においても、今のローンの完済が証明されているため、新しいローンの借入限度額を最大限に引き出すことが可能です。

仮住まいが必要になるケース/ならないケース

売却を先に完了させる場合、問題になるのが「新居への引っ越しまでの居場所」です。

  • 仮住まいが必要なケース: 今の家を引き渡した時点で、まだ新居が決まっていない、あるいは建築・リフォーム中の場合。
  • 仮住まいが不要なケース: 売却契約時に「引渡し猶予(ひきわたしゆうよ)」の特約を結べた場合。

「引渡し猶予」とは、売買代金を受け取った後も、1〜2週間程度そのまま住み続けさせてもらう特約です。これが成立すれば、売却資金を受け取った直後に新居の残代金を支払い、直接引っ越すことが可能になります。

売却を急いで価格を下げてしまう失敗例

「先に売る」ルートであっても、価格面での失敗は起こり得ます。よくあるのが、「新居の購入申し込みを先にしてしまった」ケースです。購入を急ぐあまり、今の家の売却期限が設定されてしまうと、期限までに売るために大幅な値引きを余儀なくされ、結果として資金の安定性が損なわれてしまいます。

先に売る場合に想定しておくべき生活面の負担

金銭的な損得だけでなく、以下の「見えないコスト」も見積もっておく必要があります。

項目 内容・影響
仮住まいの費用 敷金・礼金・数ヶ月分の家賃(数十万円単位になることも)
引っ越し費用 「旧居→仮住まい」「仮住まい→新居」と2回分発生する
家族のストレス 狭い仮住まいでの生活、子供の通学路の変化、荷物の預け入れ手間

住宅ローン審査で明暗が分かれるのはどっち?

住み替えの成否を握るのは、不動産会社ではなく「銀行」です。審査の仕組みを知ることで、自分がどちらの順番を選ぶべきかが明確になります。

先に買うとローン審査が厳しくなる理由

銀行が最も警戒するのは、「返済比率(返済負担率)」のオーバーです。年収に占める年間返済額の割合を、多くの銀行では30〜35%を上限としていますが、先に買う場合、一時的に「今の家のローン + 新しい家のローン」の合算で計算されることがあります。これにより、希望額の融資が受けられないケースが多発します。

売却前提ローン・つなぎ融資の現実

こうした事態を避けるため、金融機関は「住み替え専用」の仕組みを用意しています。しかし、「買い替えローン」は借入額が膨らむため審査が厳しく、「つなぎ融資」は一般的な住宅ローンに比べて金利が高く、事務手数料も別途かかります。「便利なサービスには、それ相応のコストがかかる」のが鉄則です。

金融機関が見ている“本当のリスク指標”

銀行の担当者は、単なる年収だけでなく「今の家がいくらで売れるかという確実性」を厳しく見ています。大手仲介会社の査定書や媒介契約の有無を確認し、「この価格なら3ヶ月以内に売れるだろう」と銀行が判断すれば、審査も通りやすくなります。逆に、売却見込みが甘いと判断されれば、売却先行を条件に突きつけられることになります。


【タイプ別】あなたは「先に買う」「先に売る」どっちが向いている?

ご自身の状況がどちらに適しているか、家計の健全性の観点からチェックしてみましょう。

貯蓄に余裕がある家庭(購入先行がおすすめ)

新しい家の頭金を支払ってもなお、生活防衛資金が手元に残る世帯は、「先に買う」という選択肢を無理なく選べます。万が一、売却に時間がかかっても、焦って値下げする必要がないからです。

ローン残債が多い家庭(売却先行が必須)

今の住宅ローン残高が査定価格よりも高い「オーバーローン状態」にある場合は、売却先行が鉄則です。家を売ってもローンが残る場合、その差額を現金で補填する必要があり、完済の目処が立たないまま新しい家を契約するのは極めて危険です。

エリア的に売却が読みにくい物件(売却先行が安全)

郊外の築古物件など、売却までに半年以上を要する可能性があるエリアに住んでいる場合も、売却先行が安全です。二重ローンの負担を完全に回避することを優先しましょう。

子どもの転校・入学時期が絡むケース(折衷案の検討)

期限がある場合は、「売却活動を早めに始め、購入は期限の直前に絞り込む」という折衷案が現実的です。家計を優先しつつ、必要に応じて「仮住まい」を許容する準備をしておきましょう。


住み替えで後悔しないために「順番」より大事なこと

「先に買うか売るか」という順番と同じくらい重要なのが、「正確な数字の把握」「時間の余裕」です。

先にやるべきは売却価格の把握

どちらの順番を選ぶにしても、複数の不動産会社から査定を取り、その中でも「もっとも保守的な価格」をベースに資金計画を立てることが重要です。これにより、「予定よりお金が足りない」という事態を防げます。

スケジュールを甘く見た家庭が失敗する

売却・購入・引き渡しの工程には、スムーズに進んでも半年程度の期間が必要です。これにリフォームなどが加わればさらに延びます。「最短で終わる」という楽観的な計画は捨て、バッファを持たせることが、家計を守る秘訣です。

中立的に比較する視点を持つ重要性

特定の会社のアドバイスだけを鵜呑みにせず、レインズの成約事例や住宅ローンのシミュレーションを自分で行う姿勢が求められます。「自分で調べて決める」プロセスが、冷静な対処を可能にします。


まとめ:正解は1つじゃないが「地雷ルート」は決まっている

住み替えの「先に買うか、先に売るか」に万人に共通する唯一の正解はありませんが、家計状況に照らせば「選んではいけないルート」は見えてきます。

先に買う/先に売るの結論整理

  • 先に買う(購入先行): 「理想の住まい」を最優先するルート。ただし、十分な現預金と高いローン返済能力が必須。
  • 先に売る(売却先行): 「家計の安全性」を最優先するルート。資金計画が破綻するリスクは極めて低い。

「自分で調べて決める」Fin-Toku的締め

住み替えを検討し始めたら、まずはローンの残債把握と、複数の会社への査定依頼から始めましょう。万が一、半年売れなかった場合の家計シミュレーションを行えば、自分がどちらの順番に進むべきかは驚くほど明確になります。「損をしたくない」という思いを、正しい情報で形にしていきましょう。


出典

-お金を活かす(住まいと資産の活用)