お金を整える(家計の最適化)

教育費はいつから貯める?不安な家庭が最初に考えるべき準備の順番とコツ

「教育費にいくらかかるかは、なんとなく分かった。でも、本当に貯められるのか不安が消えない……」

教育費の総額を目にして、このように感じる方は少なくありません。特に、今の生活で精一杯という状況では、数百万、一千万という数字はあまりに現実離れして見えるものです。

SNSやネット掲示板では、「0歳から始めないと間に合わない」「月5万円は貯めないと詰む」といった極端な意見も目立ちますが、家計の状況は家庭ごとに異なります。準備の話がややこしくなるのは、多くの情報が「貯め方(手法)」ばかりを優先し、肝心の「自分の家計に合った準備の順番(考え方)」を置き去りにしているからです。

本記事では、損をしないための基準と、今の貯金がゼロからでも着実に教育費を準備するための「判断の軸」を整理します。読み終える頃には、我が家が「いつ」「いくら」のペースで動けばいいのか、明確な道筋が見えているはずです。


教育費は「いつから貯めるか」で9割決まる

教育費の準備において、もっとも強力な武器になるのは「お金」ではなく「時間」です。準備を始めるタイミングが少しずれるだけで、毎月の家計にかかる負担は劇的に変わります。ここでは、なぜ「いつから」が重要なのか、その真意を解説します。

早く始めるほど「月々の負担」が劇的に楽になる理由

教育費の準備を「早く始める」最大のメリットは、月々の積立額を小さく抑えられることです。例えば、大学入学時の資金として「500万円」を目標にする場合、準備期間の違いで毎月の負担額がどれほど変わるか、簡易的なシミュレーションで比較してみましょう。

準備開始時期 準備期間 毎月の積立額(目安)
0歳(出生直後) 18年間 約23,100円
3歳(幼稚園入園) 15年間 約27,700円
6歳(小学校入学) 12年間 約34,700円
10歳(小学校高学年) 8年間 約52,000円

※金利・運用益を考慮しない単純計算(1,000円未満切り上げ)

この表から分かる通り、0歳から始めれば月2万円台で済むものが、10歳からでは月5万円以上の負担になります。毎月の家計から5万円を捻出するのは容易ではありませんが、2万円台であれば「今の生活を少し見直せば可能かも」と感じられるのではないでしょうか。

「少額でもいいから、今すぐ始める」。この一歩が、将来の自分を助ける最大の手立てとなります。

「貯め始めが遅れる家庭」の共通点

準備が遅れてしまう家庭には、ある共通の思考パターンが見られます。それは、「今は出費が多いから、生活に余裕ができたら始めよう」という考え方です。

しかし、子育て世帯の家計において「余裕ができる時期」は、意識的に作らない限りなかなか訪れません。未就園児期のオムツ代、幼稚園期の習い事、小学校低学年のレジャー費など、支出の形が変わるだけで、常に「今が一番大変」と感じてしまいがちだからです。教育費負担が本格化する中学・高校以降に比べれば、小学校低学年までは家計における最大の「貯め時」といえます。この時期を「余裕がない」と見過ごしてしまうことが、後々の焦りにつながるのです。

今、手元に貯金がなくても「詰まない」ための考え方

「もう子どもが小学生なのに、貯金が全然ない……」と絶望する必要はありません。過去を悔やむよりも、「今から大学入学まで何年あるか」を逆算し、現実的な計画を立てることが重要です。

もし、今からの積立だけでは目標額に届かないと分かった場合は、以下の3つの視点で計画を修正します。

  • 「貯金」以外の原資を探す:児童手当を全額教育費に充てる(これだけで約200万円になります)
  • 働き方を工夫する:子どもが成長して手が離れた分、仕事の時間を増やすなど
  • 支出の優先順位を変える:固定費(通信費、保険料など)を削り、その分を教育費にスライドさせる

教育費の準備は「全部を現金で貯める」必要はない

「大学4年間で500万円かかるなら、高校卒業までに500万円の貯金を作らなければならない」という思い込みが、多くの親を苦しめています。しかし、教育費のリアルな準備方法は、もう少し柔軟に考えても大丈夫です。

教育費=すべて貯金という誤解を解く

教育費を準備する際、必ずしも「ストック(貯金)」だけで賄う必要はありません。実際には、以下の2つを組み合わせて支払うのが一般的です。

  • ストック(貯金・運用):これまで貯めてきたまとまったお金
  • キャッシュフロー(毎月の収支):その時の給料から捻出するお金

例えば、年間の学費が120万円かかるとしても、毎月の家計から5万円(年間60万円)を学費として出せるのであれば、事前に貯めておくべき「ストック」からの持ち出しは残りの60万円で済みます。「総額500万円」という数字に怯えるのではなく、「毎月の給料からいくら出せて、足りない分はいくらなのか」を切り分けて考えることが、不安を解消する第一歩です。

子どもの成長とともに「収入が増える時期」を予測する

教育費の準備期間中、家計の収入は一定ではありません。多くの家庭では、子どもの成長に伴い、親の収入が増えるタイミングが訪れます。時短勤務からフルタイムへの復帰や昇給など、将来のキャッシュフローが増える見込みがあるなら、今は無理に積立額を増やして家計を破綻させる必要はありません。「今は月1万円、子どもが小学校高学年になったら月3万円」といったステップアップ型の計画も有効です。

家計を壊す準備と、壊さない準備の決定的な違い

家計を壊さないための鉄則は、「生活防衛資金」を確保した上で、教育費の準備をすることです。貯金のすべてを引き出しにくい学資保険や積立NISAに入れてしまい、急な出費でカードローンに頼るようでは本末転倒です。万が一の時のための現金を手元に残しつつ、余剰資金の中で着実に積み立てるバランスが、持続可能な準備の鍵となります。


家庭によって「正解の備え方」が違う理由

教育費の準備に「これ一択」という正解はありません。家計の安定性や家族構成によって、取るべきリスクや優先順位が全く異なるからです。

共働き・片働きで変わる「貯めるスピード」と「リスク許容度」

ダブルインカムの世帯は、片方の収入を貯蓄に回せるなどスピード感が違います。また、一方が減収してもカバーできるため、新NISAなどの「運用」を取り入れやすい傾向にあります。対してシングルインカムの世帯は、確実性を重視した預貯金や保障(保険)を優先し、守りを固めるのが定石です。

兄弟がいる家庭が陥る「重複期間」の罠

子どもが2人以上いる場合、もっとも注意すべきは「上の子の大学在学」と「下の子の高校・大学入学」が重なる時期です。この時期は家計からの持ち出しが最大化するため、1人目の資金を使い果たさないよう、家計全体の「教育費予備費」として全体像を把握しておく必要があります。

住宅ローンがある家庭の優先順位

教育費の目処が立つまでは、無理な繰り上げ返済は控えるのが賢明です。住宅ローンは調整が効く場合がありますが、教育費には「待った」が効きません。教育ローンを借りる事態を避けるためにも、まずは現金の確保を優先しましょう。


教育費を考えるときにやりがちなNG行動

よかれと思って始めたことが、実は効率を下げている場合があります。よくある3つの落とし穴を確認しましょう。

いきなり「どの学資保険がいいか?」と商品を探し始める

「目標金額」「時期」「無理のない支払額」が決まっていない状態で商品を選んでしまうと、途中で家計が苦しくなった時に解約して元本割れを起こすリスクが高まります。戦術(商品)の前に戦略(計画)が必要です。

正解を「一つ」に決めようとする

「NISA一本」や「保険だけ」といった全振りは避けましょう。運用には暴落のリスクがあり、貯金だけではインフレに対応できません。性格の違う手段を組み合わせることが、もっとも賢いリスクヘッジになります。

SNSや他人の成功例をそのまま真似する

各家庭には、住んでいる地域の物価や親の援助など、見えない背景があります。他人の成功例はあくまで一事例とし、自分の家計の数字と向き合うことが確実な不安解消法です。


「教育費の不安」を最小化するために、今すぐやるべき3ステップ

漠然とした不安を消すには、具体的に「数字」で捉えることが近道です。

  1. 必要総額を我が家のスケジュールに当てはめる:「18年後」ではなく、中学・高校・大学それぞれのイベントを年表に書き込みます。
  2. 現状の「家計の余力」をざっくり把握する:1万円単位で構いません。毎月いくら残せるかを確認し、固定費を見直して捻出します。
  3. 夫婦で「どんな教育環境を望むか」の温度感を合わせる:私立か公立か、進路の方針を共有することで、目標金額のブレを防げます。

次に考えるべきこと(具体的な制度選びへ)

考え方の軸が固まれば、金融機関の提案に流されることなく、自分たちに必要なものだけを選び取れるようになります。教育費は子どもへのプレゼントであると同時に、親の老後を守る防衛策でもあります。「今の生活」「子どもの未来」「自分たちの老後」の3つのバランスを大切にしてください。

100点の準備を求めて足踏みするより、まずは月数千円からでも仕組みを作り、動き出すこと。その一歩が、将来の大きな安心へとつながります。

出典

-お金を整える(家計の最適化)