お金を増やす(資産運用の基本)

つみたて投資は本当にリスクが高い?不安の正体を冷静に整理してみた

「将来のお金が不安だから、何か始めなきゃ」と考えて、つみたて投資(新NISAなど)に興味を持つ方は増えています。しかし、いざ調べてみると「投資は自己責任」「元本割れのリスクがある」といった言葉が並び、結局一歩を踏み出せないという声も少なくありません。

特に、家計を預かる世代にとっては「もし大切なお金が減ってしまったら……」という不安は、単なるわがままではなく、切実な問題です。テレビやSNSでは「長期・積立・分散が正解」と繰り返されますが、理屈で分かっていても、自分の資産が減るかもしれない恐怖を拭い去るのは簡単ではありません。

なぜ、つみたて投資に対して「リスクが高い」と感じてしまうのか。本記事では、その不安の正体を冷静に分解し、納得して資産形成を進めるための「判断基準」を整理します。


つみたて投資は「リスクが高い」と感じやすい理由

「つみたて投資はリスクを抑えた手法だ」と説明されることが多い一方で、初心者の方が「やっぱりリスクが高い(怖い)」と感じてしまうのには、いくつかの明確な理由があります。まずは、多くの人が感じる「不安の正体」を整理してみましょう。

値動きがある=リスクが高いと感じてしまう

私たちの日常生活において、お金の基準は「銀行預金」であることがほとんどです。100万円を預ければ、明日も100万円(+わずかな利息)がある。これが当たり前の感覚です。

対して投資信託などを利用したつみたて投資は、日々その価値が変動します。

  • 預金: 常に一定、もしくは増える(減らない)
  • 投資: 上がることもあれば、下がることもある

この「価格が上下に動くこと」そのものが、元本確保に慣れた感覚からすると「非常に不安定で、リスクが高いもの」として脳にインプットされてしまいます。

元本割れの数字が毎日見えるストレス

現代の投資環境は、スマートフォンのアプリ一つで、いつでも自分の資産状況が確認できます。これは便利な反面、大きなストレスの原因にもなります。

つみたて投資を始めたばかりの時期に、世界情勢の影響で評価額がマイナス(元本割れ)になると、画面には大きく「マイナス〇〇円」という赤い数字が表示されます。まだ何も損を確定させていないのに、お金を失ったような感覚になり、「このまま下がり続けたらどうしよう」という想像が膨らんでしまうのです。このように、リアルタイムで「減っている状態」を視覚的に突きつけられることが、リスクを過大に感じさせる要因となっています。

「長期なら大丈夫」が抽象的すぎる問題

金融機関のパンフレットやニュースサイトでは、決まって「15年、20年と長期で続ければ元本割れのリスクは低くなる」と解説されます。しかし、家計を守る立場からすれば、10年後や20年後はあまりに遠い未来です。

「今の生活費を削って捻出しているお金なのに、20年後まで結果が分からないのは不安」「もし、お金が必要になったタイミングで暴落していたらどうするのか?」といった「今この瞬間の安心」と「遠い未来の不確実性」のギャップが、長期投資という言葉をどこか信用しきれないものにさせています。

家族持ちだと“失敗できない”心理が働く

独身時代とは異なり、結婚したり子供ができたりすると、お金の役割が変わります。「子供の教育資金」「住宅ローンの繰り上げ返済」「家族のもしもの時の備え」など、使い道が決まっているお金であればあるほど、「絶対に減らせない」というプレッシャーが強くなります。この責任感があるからこそ、「投資で減る可能性がある」という事実を、単なる数字の変動ではなく「家族への責任を果たせなくなるリスク」として重く捉えてしまうのです。


そもそも「リスクが高い」とはどういう状態か?

投資の世界で使われる「リスク」という言葉は、日常会話で使う「危険・損をする」という意味とは少し異なります。ここを混同してしまうと、正しく判断ができなくなります。

投資におけるリスク=「振れ幅」の話

金融用語でのリスクとは、「収益(リターン)の振れ幅」のことを指します。

表現 意味
リスクが高い 上がる時も大きいが、下がる時も大きい(振れ幅が広い)
リスクが低い 上がる時も小さいが、下がる時も小さい(振れ幅が狭い)

例えば、ジェットコースターを想像してください。「リスクが高い」とは、急勾配で激しく上下するコースのことです。一方、「リスクが低い」とは、メリーゴーランドのように緩やかに動くコースを指します。どちらも「動いている(変動している)」ことに変わりはありませんが、その激しさが違うのです。

損をする可能性と、損を確定させる行動は別

つみたて投資において、もっとも誤解されやすいのが「評価損」と「実現損」の違いです。

  • 評価損: 一時的に価値が下がっている状態(まだ売っていない)
  • 実現損: 売却して、損が確定した状態

多くの人が「リスクが高い」と怖がるのは評価損の状態ですが、実際にお金を失うのは、不安に負けて「下がったタイミングで売ってしまう」という自らの行動によるものです。「価格が動くこと(リスク)」は避けられませんが、「実際に損をすること」は、仕組みを理解していればある程度コントロールが可能です。

短期で見るか、長期で見るかでリスクの意味が変わる

以下の表は、一般的に言われている投資期間とリスクの関係を簡潔にまとめたものです。

期間 リスク(振れ幅)の捉え方
短期(数ヶ月〜1年) 運の要素が強く、大きくマイナスになる可能性も高い。
長期(15年〜20年) 世界経済の成長に収束しやすく、年平均の収益が安定しやすい。

短期的には「リスク=大きな不安」となりますが、10年単位の長期で見れば、その激しい上下運動も「平均的な成長」という波の一部に飲み込まれていきます。「今のマイナス」だけを切り取って見るとリスクは高く見えますが、「20年間の線」で見ると、リスクの形は全く違って見えるのです。

銀行預金にも別のリスクがある

「投資はリスクがあるから、預金が一番安全だ」と考えるのも、一つの視点ではあります。しかし、現代においては「預金だけをすることのリスク」も無視できません。

  • インフレリスク: 物価が上がると、お金の価値(買えるものの量)が実質的に減る。
  • 購買力の低下: 20年前の100円で買えたものが、今は150円出さないと買えない場合、預金の価値は目減りしている。

「数字が減らない安心」の裏側には、「価値が目減りしていくリスク」が隠れています。つみたて投資のリスクを考える際は、この「何もしないことによるリスク」と比較して、どちらが自分たち家族にとって許容できるかを考えるのが健全な姿勢と言えます。


つみたて投資のリスクが「見えやすい」だけの話

「つみたて投資は怖い」と感じる理由の多くは、実はリスクそのものの大きさよりも、その「見え方」にあります。投資の仕組み上、避けて通れない情報の性質を理解するだけで、心の持ちようは大きく変わります。

価格変動がある=失敗ではない

投資信託などの価格が上下することを「元本が割れた、失敗だ」と捉えてしまいがちですが、つみたて投資において価格変動は「単なる状態」に過ぎません。つみたて投資(ドル・コスト平均法)の仕組みでは、価格が下がっている時期は「同じ金額でより多くの数量(口数)を購入できている」という側面があります。

  • 価格が高いとき: 少ない数量を買う
  • 価格が低いとき: 多くの数量を買う

このように、価格が下がっている時期は「将来の利益のための仕込み時期」とも言えます。価格が動くことは、むしろ効率的に資産を積み上げるためのエンジンであると捉え直すことが大切です。

日々確認できること自体が不安を増幅させる

ネット証券の普及により、私たちは24時間いつでも、1円単位で資産の増減を確認できるようになりました。しかし、この「便利さ」が、長期投資においては皮肉にもリスクを感じさせる要因となります。

人間には「得をした喜びよりも、損をした痛みを2倍以上強く感じる」という心理(プロスペクト理論)があると言われています。1万円増えても「まあ、こんなものか」と思う一方、1万円減ると「大変なことになった、どうにかしなきゃ」と焦る。毎日スマホで残高を確認していると、どうしても「減ったとき」の記憶が強く残り、常にリスクにさらされているような感覚に陥ってしまいます。

比較対象が「買った瞬間の価格」になっている罠

一括投資であれば、買った時の価格が唯一の基準になります。しかし、毎月積み立てていく場合、購入価格は常に平均化されていきます。現在の評価額が「始めた瞬間の価格」を下回っていたとしても、その途中で安くたくさん買えていれば、トータルではプラスになっているケースも少なくありません。「今の価格」と「過去の特定の点」を比べるのではなく、「平均してどれくらいの価格で持っているか」という視点を持つことが、不要な不安を消す鍵となります。

情報を見すぎることで起きる心理的リスク

SNSやニュースでは、「暴落の予兆」「今すぐ売れ」といった極端な言葉が飛び交います。これらの情報の多くは「短期的な予測」であり、10年、20年というスパンで資産形成を目指す人にとっては、ほとんどが「ノイズ(雑音)」です。情報を集めすぎて混乱し、本来の目的(老後資金や教育資金の準備)を忘れてパニック売りをしてしまうことこそが、つみたて投資における最大の「心理的リスク」と言えるでしょう。


不安を減らすために「今すぐできる整理ポイント」

リスクをゼロにすることはできませんが、管理可能なレベルにまで整理することは可能です。不安を抱えたまま走り続けるのではなく、以下の4つのポイントで「頭の整理」を行ってみましょう。

何年後のお金かを明確に分ける

すべての貯金を一括りに「大切なお金」と考えてしまうと、少しの変動でも怖くなります。まずは、お金を「使う時期」によって色分けしてみましょう。

お金の区分 目安の時期 管理方法
生活防衛費 今すぐ〜6ヶ月分 銀行預金(絶対減らさない)
近いうちの資金 1年〜5年以内 銀行預金、または低リスク商品
将来の資産 10年〜20年以上 つみたて投資(変動を受け入れる)

このように「当面使わないお金」だけを投資に回していることが明確になれば、日々の値動きに一喜一憂する必要がなくなります。

下落時の行動を先に決めておく

相場が悪くなったときに「どうしよう」と考えるのは、パニックの元です。あらかじめ「もし〇%下がったらどうするか」という自分なりのルールを作っておきましょう。

  • ルール例: 「10%下がっても、淡々と積み立てを続ける(何も変えない)」
  • ルール例: 「不安になったら、証券アプリを1ヶ月開かない」

「何もしない」という決断をあらかじめルール化しておくだけで、感情に流されるリスクを大幅に抑えることができます。

投資額ではなく「生活への影響度」で考える

「毎月3万円投資している」という金額そのものよりも、それが「家計にとってどの程度の重みか」を確認してください。「もしこの3万円が一時的に半分になったとして、来月の食費や家賃が払えなくなるか?」と問いかけてみます。もし「払えなくなる」と感じるなら、それは投資額が大きすぎます。「最悪、半分になっても今の生活は変わらない」と思える金額に設定し直すことが、もっとも確実な不安解消法です。

家族内で言語化しておく重要性

一人で不安を抱えていると、相場急変時に家族から「なんであんなもの始めたの?」と責められ、それがきっかけで挫折してしまうケースがあります。「これは20年後のお金だから、今は減っても大丈夫」「もしニュースで大暴落と言っていても、うちは続けるよ」といったように、投資の目的とリスクについて家族で共通認識を持っておくことは、家計管理における強力な防御策となります。


まとめ:不安は「失敗」ではなくサイン

「つみたて投資が怖い」という感情は、大切なお金を守ろうとする健全な防衛本能です。この記事を通じて、その不安の正体が少しずつ見えてきたのではないでしょうか。

不安=やめる理由ではない

価格が下がったときに感じる不安は、投資に向いていない証拠ではありません。むしろ、「リスク(価格の振れ幅)」という投資の仕組みが正常に動いている証拠です。大切なのは、不安を感じたときに「怖いからやめる」と短絡的に動くのではなく、「今は仕込みの時期だ」「将来のための変動だ」と、学んだ知識を思い出すことです。

整理できていないだけの可能性

もし、どうしても夜も眠れないほど不安が続くのであれば、それは投資そのもののせいではなく、「家計の整理」がまだ不十分であるというサインかもしれません。

  • 生活防衛費は足りているか?
  • 投資額が今の生活を圧迫していないか?
  • 家族との共有ができているか?

これらを一つずつ確認し、調整していくことで、投資は「怖いギャンブル」から「確実な将来への備え」へと変わっていきます。

次のステップ:どう組み合わせて「安心」を作るか

リスクの正体が分かれば、次は「自分に最適な配分」を見つける段階です。いくらまでなら投資に回しても心が穏やかでいられるのか。あるいは、投資以外で家計を支える「節約」や「保険の最適化」とどう組み合わせるのがベストなのか。次の記事では、より具体的な「家計のポートフォリオ(組み合わせ)」の作り方について詳しく解説します。


出典:

-お金を増やす(資産運用の基本)