「将来のお金が不安だから、とりあえず保険には入っておかなければ」
そう考えて、言われるがままに加入した保険の支払いに追われていませんか?
特に、お子さんが生まれたばかりの世帯では、責任感から「手厚い保障」を求めがちです。しかし、中身をよく整理せずに加入した結果、毎月の固定費が家計を圧迫し、本来貯めるべき教育資金や老後資金に手が回らなくなっているケースが目立ちます。
SNSや口コミでも「結局どの保険が必要なのかわからない」「勧められるがまま入ったら月3万円を超えてしまった」といった悩みの声が多く寄せられています。一方で、賢く家計を管理している世帯は、「ある共通の順番」で保険を整理しています。
子育て世帯が保険で損をしないためのポイントは、特定の「商品」を選ぶ前に、正しい「判断の基準」を知ることです。本記事では、公的保障を土台にした、過不足のない保険の選び方を徹底解説します。この記事を読み終える頃には、あなたにとって本当に必要な保障が何かがはっきりと見えているはずです。
子育て世帯がまず知るべき「保険を考える順番」
「どの保険がおすすめですか?」という問いの前に、考えなければならないことがあります。それは、保険を検討する「順番」です。多くの家庭では、この順番が逆になっているために、無駄な保険料を支払い続けています。
多くの家庭が「逆から」保険を考えてしまう理由
保険選びで失敗する典型的なパターンは、いきなり「民間の保険商品」のパンフレットを見比べてしまうことです。テレビCMや知人からの紹介で目にした商品を入り口にすると、「月々いくらなら払えるか」「この特約があれば安心か」といった、商品のスペックに思考が奪われてしまいます。
不安な気持ちから「念のためこれも」と特約を付け足していくうちに、保障内容が重複し、結果として家計を苦しめる大きな固定費になってしまうのです。保険はあくまで「リスクが起きたときに、現在の貯金だけでは足りない分」をカバーするための手段であることを忘れてはいけません。
公的保障 → 会社制度 → 民間保険の正しい3ステップ
家計のムダを削ぎ落としている世帯では、以下の3ステップで保険の必要性を判断しています。このピラミッド構造を下から積み上げていくのが鉄則です。
- ステップ1:公的保障(国からのサポート)を確認する
日本には非常に手厚い社会保障制度があります。まずは「国からいくらもらえるのか」を把握するのが最優先です。 - ステップ2:会社の福利厚生を確認する
勤務先によっては、独自の慶弔見舞金や団体保険、付加給付などがあります。これらを知ることで、さらに必要な保障額を絞り込めます。 - ステップ3:足りない分だけ「民間保険」で補う
ステップ1と2を差し引いても、どうしても貯蓄だけでは生活が立ち行かなくなる部分。ここだけが民間保険の出番です。
この順番を守るだけで保険料は自然に最適化される
なぜこの順番が重要かというと、民間保険の役割を「家計のメイン」ではなく「不足分の予備」として再定義できるからです。例えば、万が一のときに国から月額15万円の遺族年金が支給されると知っていれば、民間保険で月額30万円の保障を準備する必要はありません。差額の15万円分だけを契約すればよいため、支払う保険料を大幅に抑えることが可能です。
実はかなり手厚い?子育て世帯の公的保障を整理する
「国は何もしてくれない」という不安を抱く方も多いですが、日本の社会保障制度は世界的に見ても非常に充実しています。特に子育て世帯にとっては、複数のセーフティネットが用意されています。
子どもの医療費助成と高額療養費制度の仕組み
まず、日常の病気やケガに対しては「健康保険」と「自治体の助成」があります。多くの自治体では、中学生や高校生までの子どもを対象に、窓口での医療費を無料、あるいは数百円程度の自己負担に抑える助成制度を設けています。
また、親自身の医療費についても「高額療養費制度」があります。これは、1ヶ月の医療費が一定の上限(一般的な年収の世帯であれば月8〜9万円程度)を超えた場合、超えた分が国から払い戻される仕組みです。
【チェックポイント】高額療養費制度の自己負担限度額(年収約370万〜770万円の場合)
計算式:80,100円 +(総医療費 - 267,000円)× 1%
※実質的に1ヶ月の支払いは約9万円前後で済むことがほとんどです。
万が一の際、国から支給される「遺族年金」
一家の働き手が亡くなってしまった場合、残された家族には「遺族年金」が支給されます。特に18歳未満の子どもがいる家庭では、国民年金から「遺族基礎年金」が、さらに会社員・公務員であれば「遺族厚生年金」が加算されます。
- 遺族基礎年金(2024年度): 子ども1人の場合、年間約105万円(月額約8.7万円)がベースとして支給。
- 遺族厚生年金: 亡くなった方の平均給与や加入期間に応じて上乗せ。
これに加えて、会社員なら「死亡退職金」や「弔慰金」が出る場合もあり、これらだけで最低限の生活の土台は作れるようになっています。
「知らない不安」が過剰な民間保険への加入を生む
「将来が不安だ」と感じる原因の多くは、こうした制度を具体的な金額として把握していないことにあります。私たちは既に、給与天引きという形で「最強の保険(社会保険)」に加入しています。まずはこの既にある保障を知ることで、過剰な民間保険への不安を解消しましょう。
子育て世帯で「不要になりやすい保障」の典型パターン
「みんなが入っているから」という理由で、家計にそぐわない保険に加入し続けるのは危険です。特に以下の3つは、見直しによって大きな節約効果が期待できる項目です。
貯蓄と役割がかぶる「学資保険」や「貯蓄型保険」
子育て世帯の定番である「学資保険」ですが、現代の低金利環境では「資金の固定化」という大きなデメリットがあります。一度加入すると、満期まで引き出しにくく、無理に中途解約すれば元本割れするリスクがあります。
現在は「新NISA」などの非課税で柔軟性の高い運用手段があります。教育資金は「保険」という枠組みに縛られず、流動性の高い貯蓄や投資で準備する方が、急な出費にも対応しやすく、合理的だと言えます。
発生確率が低すぎるリスク、または貯金で賄える小額保障
「入院1日1万円」の医療保険も、慎重に考えるべきです。前述の高額療養費制度があるため、数日の入院で家計が破綻することはありません。月々数千円の保険料を10年払い続けるよりも、その分を現金で貯めておく方が、病気以外の用途(車、修理、教育)にも使えるため、結果として家計の防御力は高まります。
「なんとなく安心」のために支払うコストの正体
保険でカバーしようとしている「不安」の多くは、実は「現金が足りないことへの不安」です。保険料として毎月数万円を支払い続ける行為は、皮肉にも、手元の現金を増やすスピードを遅らせています。保険はあくまで「貯金では絶対に解決できない巨大な損失」に絞るのが鉄則です。
それでも子育て世帯に「最低限必要」な保障とは
不要なものを削ぎ落とした結果、最後に残る「本当に必要な保険」は驚くほどシンプルです。
最優先は「親が亡くなった後の家族の生活費」
子どもが自立するまでの間に、働き手である親が亡くなってしまう。これこそが、貯蓄だけではカバーできない最大のリスクです。この備えには、一生涯の保障が続く「終身保険」ではなく、期間を限定した安い「掛け捨て型の保険」が適しています。
保障は「金額」より「期間」で考える(三角形の保障)
子どもが成長するにつれ、将来必要となる生活費や教育費の総額は減っていきます。これに合わせて保障額も自動的に減っていく「収入保障保険」を選ぶと、保険料を最も安く抑えつつ、必要な時期に必要な額を確保できます。
| 時期 | 必要な保障イメージ | 理由 |
|---|---|---|
| 子ども0歳 | 最大(数千万円〜) | 独立まで20年以上の生活費が必要だから |
| 子ども10歳 | 中(1,000万円〜) | 生活費の必要期間が半分になったから |
| 子ども20歳 | 最小(ほぼ不要) | 子どもが自立し、経済的責任がなくなるから |
就業不能リスクへの備え|住宅ローンとの兼ね合い
亡くなった時だけでなく、「長期間働けなくなった時」のリスクも重要です。ただし、持ち家で「団体信用生命保険(団信)」にがん特約などを付けている場合、民間の就業不能保険と役割が重複することがあります。見直しの際は、必ず住宅ローンの保障内容もセットで確認しましょう。
判断に迷ったらここをチェック|削りすぎを防ぐ視点
最後に、納得感を持って保険を見直すための具体的なアクションを整理します。
保険を減らしても「不安」が消えないときの向き合い方
不安を解消するのは保険証券ではなく「銀行の残高」です。保険を減らして浮いたお金(例えば月1万円)をそのまま使うのではなく、まずは「生活防衛資金」として専用の口座に積み立ててください。半年分の生活費が貯まったとき、あなたの不安は驚くほど軽減されているはずです。
「保険で解決すべき不安」と「別で考える不安」の切り分け
家計のリスク管理は、以下の2軸で判断しましょう。
- 民間保険で備えるべき: 発生確率は低いが、起きたら人生が破綻するレベルの損失(例:一家の大黒柱の死亡)
- 貯蓄・運用で備えるべき: 発生確率が高い、または数十万円で解決できるリスク(例:短期入院、子供の進学、老後の生活)
次のステップ:家計の全体最適へ
保険の見直しは、家計改善の大きな第一歩です。ここを整理できたら、次は「住宅ローンの見直し」や「新NISAを活用した資産形成」へとステップアップしていきましょう。一つひとつの固定費を納得感のあるものに変えていくことが、将来の安心への最短ルートです。
【出典・参考資料】
- 厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆様へ(確認日:2025年12月24日)
- 日本年金機構|遺族年金(確認日:2025年12月24日)
- こども家庭庁|自治体の子ども医療費助成の状況(確認日:2025年12月24日)
- 金融庁|基礎から学ぶマネーガイド(確認日:2025年12月24日)