「子どもの将来のために資産形成を始めたいけれど、ジュニアNISAが終わってしまって何を選べばいいか分からない…」
「未成年でも自分の名義で投資はできるの? 親のNISAとはどう違うの?」
こうした疑問や不安の声が、多くの子育て世代から聞かれます。教育資金や将来の独立資金を少しでも有利に準備したいと願うのは、親として当然の想いです。
特に、2024年から大幅に拡充された「新NISA制度」は連日話題になっていますが、「18歳未満の子ども」が具体的にどう関われるのか、その制度的な位置づけは意外と複雑で分かりにくいのが現状です。
SNSや口コミサイトでは、以下のような声も散見されます。
「とりあえず子ども名義の口座を作ったけれど、確定申告や税金の手続きが大変そうで後悔している」
「親のNISA枠を使った方が管理が楽だったかも…と、始めてから気づいた」
大切なお子さんのための資金作りで、制度を誤解したまま選択し、結果として手間やコストで損をしてしまうのは避けたいところです。
本記事では、ジュニアNISA終了後の「18歳未満の投資環境」について、最新の制度ルールに基づき徹底的に整理します。子ども名義で運用する場合の具体的なメリット・デメリット、そして多くの家庭で最適解となり得る「親名義での運用」との比較を行い、あなたの家庭にとって最適な選択ができるようサポートします。
18歳未満は新NISAを使えるの?制度改正と基本ルールをわかりやすく整理
まずは、もっとも基本的な「制度のルール」から確認していきましょう。ここを誤解していると、口座開設の手続きでつまずいたり、想定外の課税が発生したりします。
新NISAの対象年齢は「18歳以上」が原則
2024年からスタートした新しいNISA制度(少額投資非課税制度)ですが、利用できるのは「1月1日時点で18歳以上の方」に限られています。
以前存在した「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」は、2023年末をもって新規の口座開設・投資が終了しました。この制度廃止に伴い、現時点(2024年以降)において、0歳から17歳までの未成年の方が、NISA(非課税)口座を新しく作って投資することはできません。
- 新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠): 18歳以上のみ利用可能
- ジュニアNISA: 制度終了(新規投資不可)
この年齢制限は厳格に定められており、例外はありません。「親権者が代理で行うから」といっても、未成年の名義で新NISA口座を開設することは不可能です。
【注意点:過去のジュニアNISA口座について】
2023年までにジュニアNISAで投資した資産については、制度終了後も子どもが18歳になるまで非課税で保有し続けることが可能です(継続管理勘定への移管など)。しかし、これはあくまで「過去の資産の保有」に限った話であり、これから新しく資金を投入して投資することはできません。
出典:金融庁「新しいNISA」
ジュニアNISA終了後の「未成年口座」はどうなっているのか
「では、子どもは投資が一切できないの?」というと、そうではありません。NISA(非課税)という特別な枠組みが使えないだけで、通常の「課税口座(特定口座や一般口座)」であれば、未成年でも開設可能な証券会社が多くあります。
これを一般的に「未成年口座」と呼びます。主な特徴は以下の通りです。
- 親権者の同意: 開設には親権者の同意と代理手続きが必要です。
- 親権者の口座: マネーロンダリング防止等の観点から、親権者も同じ証券会社に口座を持っていることを条件とする会社が一般的です。
- 取扱商品: 投資信託や国内株式など、基本的な商品は取引可能ですが、信用取引やFXなどの高リスク商品は制限されています。
18歳未満が資産形成する“現実的な選択肢”とは
制度上、18歳未満の子ども名義で資産運用を始めるための選択肢は、事実上「課税口座(特定口座)」一択となります。
課税口座で運用する場合、利益が出るとその利益に対して20.315%の税金がかかります。NISAであればこの税金がゼロになるため、制度的な不利は否めません。
例えば、運用で10万円の利益が出た場合、NISAなら手取りは10万円のままですが、課税口座では約2万円が引かれ、手取りは約8万円になってしまいます。この「20%の差」は、長期運用になればなるほど大きな金額になります。
それでも「あえて子ども名義」で運用することには、資金の分別管理や将来的な贈与の観点から一定の意味があります。次項でそのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
ジュニアNISA廃止後に親が知るべきポイント:メリット・デメリットの整理
NISAが使えない今、あえて子ども名義の課税口座(特定口座)で運用する価値はあるのでしょうか? 損得だけでなく、税務リスクや家庭内の管理面からも整理します。
メリット:贈与税の基礎控除活用と「時間」の恩恵
子ども名義で口座を作ることの最大のメリットは、将来子どもに資産を渡す際、「贈与」の実績を明確に作りながら増やせる点です。
1. 暦年贈与の活用
日本の税制では、年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません(基礎控除)。
親の資金を子ども名義の口座に移し、そこで運用を行うことで、将来的にまとまった資産を非課税で子どもに移転できる可能性があります。例えば、毎年100万円を10年間移せば、元本だけで1,000万円の資産を子ども名義にできます。
ただし、これには注意が必要です。毎年決まった時期に同額を機械的に移すなどの方法は「定期金贈与(最初からまとまった額を贈与する約束だった)」とみなされ、課税されるリスクがあります。都度贈与契約書を作成する、振込時期や金額を変えるなどの対策が推奨されます。
2. 超長期運用の複利効果
子どもが0歳や数歳の時点から運用を始めれば、成人するまで15年〜20年近い期間があります。この「時間」を味方につけることで、リスクを抑えながら複利効果(雪だるま式に資産が増える効果)を最大限に活かせます。課税口座であっても、利益確定をせずに保有し続ければ、税金の支払いを先送り(繰り延べ)できるため、複利効果を阻害しません。
デメリット:特定口座ゆえの「税金」と「扶養」の注意点
一方、NISAではない「課税口座」ならではのデメリットは、家計に直接響く可能性があるため、制度をよく理解していないと痛い目を見ます。
1. 利益に対して約20%の税金がかかる
前述の通り、売却益や配当金に対して税金がかかります。教育資金作りとしての効率は、非課税のNISAに比べて明確に劣ります。
2. 扶養控除への影響(要注意!)
ここが最も複雑で、かつ重要なポイントです。子どもの口座で大きな利益が出た場合、親の税金(扶養控除)に影響する可能性があります。
- 特定口座(源泉徴収あり): 原則として確定申告は不要です。税金が自動的に引かれるため、どれだけ利益が出ても子どもの「合計所得金額」には含まれず、親の扶養控除にも影響しません。初心者はこれを選ぶのが無難です。
- 特定口座(源泉徴収なし) / 一般口座: 利益が出ると、金額によっては確定申告が必要になります。子どもの年間所得が一定額(48万円など)を超えると、親の扶養控除(扶養親族)から外れてしまいます。
扶養から外れると、親の所得税・住民税が数万円〜十数万円単位で増えることになり、運用の利益が吹き飛ぶどころかマイナスになるケースさえあります。
親が管理することのリスクと責任
制度やお金の計算以外で、多くの先輩パパママが懸念するのが「出口のリスク」です。子ども名義の口座にある資産は、法律上完全に「子どものもの」です。
子どもが18歳(成人)になると、親権者の管理から離れ、子ども自身が自由に解約・引き出しできるようになります。ここで問われるのが、親子間のコミュニケーションと金銭教育です。
- 「大学の入学金に使おうと思っていたのに、子どもが勝手に引き出して高額な趣味に使ってしまった」
- 「留学資金にしたかったが、友人と海外旅行に使ってしまった」
こうした事態を防ぐには、小さいうちから「このお金はどういう目的で積み立てているのか」「あなたの将来のためにどれだけ大切か」を伝え続ける覚悟が必要になります。法的に親がストップをかけることは難しいため、信頼関係の構築が不可欠です。
18歳未満にNISA運用は必要?やるべき家庭・やめるべき家庭の判断基準
ここまで運用の方法を解説してきましたが、そもそも「すべての子育て家庭が、子どものために投資を急ぐべき」なのでしょうか?
SNSなどでは「早く始めないと損」と投資を急かす声も目立ちますが、家計の状況によっては「今は投資をしない」という判断こそが、家族の生活を守る正解になることもあります。
投資経験・家計状況別の判断軸(貯金とのバランス)
投資には必ず「元本割れ」のリスクがあります。リーマンショックやコロナショックのような暴落が、教育資金が必要なタイミング(例えば大学入学直前)で起きると、学費が払えなくなる恐れがあります。
そのため、以下の条件を満たしていない場合は、無理に投資を始めず、現預金での貯蓄を優先すべきと言われています。
- 生活防衛資金があるか: 失職や病気などのトラブルに備え、生活費の3ヶ月〜6ヶ月分の貯金が確保できているか。
- 使用時期が近くないか: 3年〜5年以内に使う予定のお金(高校の入学金、受験費用など)は、リスクに晒さず定期預金などで確保する。投資はあくまで「10年以上使わない余剰資金」で行うのが鉄則です。
投資教育の観点から見たメリット
一方で、少額(月数千円など)から子ども名義で投資を始めることには、「教育的効果」という数字以上の価値があります。
- 「お金が働いて増える(時には減る)」様子を親子で観察する
- 投資先の企業を通じて、社会の仕組みに関心を持つ
ただし、これを行うには親自身のリテラシーが不可欠です。親が仕組みを理解せずに「なんとなく」始めると、暴落時にパニックになって売ってしまったり、子どもに「投資はギャンブルだ」という誤った認識を植え付けたりするリスクがあります。
「やる必要がない」ケースもある
「周りがみんなNISAをやっているから」と焦る必要はありません。教育資金において最も重要なのは「必要な時に、必要な現金が確実に手元にあること」です。
リスク許容度が低い(損をするのが怖い・ストレスになる)と感じる場合は、堅実に児童手当を全額貯金するだけでも、18歳までに約200万円以上の資金を作ることができます。元本割れのリスクを負わずに確実な資金を作ることも、立派な資産形成の一つです。
親名義での運用はどう?18歳未満の運用を親名義NISAで行う場合の違い
ここまで読まれて、「わざわざ子ども名義の口座を作るのは面倒…」「親のNISA枠が余っているなら、そっちじゃダメなの?」と感じた方も多いのではないでしょうか。
その感覚は非常に合理的です。実は、2024年の新NISA導入により、「あえて子ども名義にせず、親のNISA枠で教育資金を作る」という選択が、多くの家庭にとって正解になりつつあります。
親名義NISAで代替するという選択肢
新NISAでは、非課税で保有できる限度額(生涯投資枠)が一人あたり1,800万円まで拡大されました。夫婦2人であれば、世帯合計で3,600万円もの非課税枠があることになります。
一般的なご家庭において、老後資金と教育資金を合わせても、この3,600万円の枠を埋めきれるケースは限られます。
そのため、わざわざ課税される(税金が引かれる)子ども名義の口座を使わず、親の空いているNISA枠を使って運用し、必要な時に引き出して子どもに渡す方が、税制面では圧倒的に有利です。
子ども名義 vs 親名義:税・管理・出口での違い
それぞれの特徴を比較してみましょう。「どちらが得か」だけでなく、「どちらが管理しやすいか」も重要な視点です。
| 比較項目 | 親名義(新NISA) | 子ども名義(課税口座) |
|---|---|---|
| 税金(利益に対して) | 非課税(0%) | 課税(約20%) |
| 年間の投資枠 | 最大360万円(つみたて+成長) | 上限なし |
| 資金のコントロール | 親が自由に管理可能 | 原則、子ども本人のもの |
| 出口(成人時) | 親の判断で渡すか決められる | 18歳で子どもが管理権を持つ |
| 贈与税の扱い | 渡す時に注意が必要 | 入金時に贈与成立(運用益は子のもの) |
注意点:扶養・贈与・教育費扱いなど
親名義で運用する場合、大学入学時などに解約して現金を渡すことになります。この時、気になるのが「贈与税」です。
原則として、年間110万円を超える現金を渡すと贈与税の対象になります。
しかし、教育費や生活費として「必要な都度」渡す場合は、原則として贈与税はかかりません。
例えば、「入学金として今すぐ必要な100万円」「授業料として必要な50万円」を、その都度親の口座から振り込むことは、扶養義務の履行として非課税と認められます。一方、「将来のために」と数年分のお金を一括で子どもの口座に移すと、贈与税がかかる可能性があります。
つまり、「親名義で運用し、支払いのタイミングで解約して、直接学校に振り込む(または子どもに渡してすぐ払わせる)」のが、税務上もシンプルで賢い方法と言えます。
まとめ:18歳未満のNISA運用は「家庭の目的」から逆算して決める
本記事では、ジュニアNISA終了後の18歳未満の投資環境、そして親名義運用との比較について解説してきました。
制度は複雑に見えますが、結論はシンプルです。「誰の名義にするか」は、家庭の資産状況と目的によって決まります。
制度ありきで考えない重要性
最後に、これまでのポイントを再整理します。
- 18歳未満は新NISAを使えない:
子ども名義で運用するなら「課税口座(特定口座)」になります。利益に約20%の税金がかかることを覚悟する必要があります。 - 基本は「親名義」が有利:
親のNISA枠(夫婦で最大3,600万円)が余っているなら、まずはそちらを使って教育費を作るのが、税制上もっとも効率的です。管理も親の手元で完結するため、リスクコントロールが容易です。 - 子ども名義は目的を持って:
親の枠を使い切っている富裕層の方や、祖父母からの贈与を明確に分けたい場合、あるいは金融教育を目的とする場合に限定して検討しましょう。その際は、扶養への影響がない「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのが無難です。
自分たちの家庭に合う判断はどれかを再整理
子どもの将来を想うあまり、「なにかしなきゃ」と焦って複雑な金融商品に手を出したり、管理しきれない口座を増やしたりしてしまうのは本末転倒です。
まずは、ご自身の「NISA口座の利用状況」を確認することから始めましょう。
もし、つみたて投資枠や成長投資枠にまだ余裕があるなら、わざわざ子ども名義の口座開設手続きを急ぐ必要はありません。「子どものためのお金」というラベルを心のなかで貼り、親の口座内で積立額を月1万円でも5,000円でも増やしてみる。
それが、最も手軽で、かつ将来の可能性を広げる確実な第一歩になるはずです。