お金を増やす(資産運用の基本)

円高になると株価や投資先はどう変わる?家計目線でわかる“上がりやすい資産と国内銘柄”

ニュースで「急速な円高が進んでいます」と聞くと、なんとなく不安な気持ちになることはありませんか?
「円高=不景気」というイメージがあったり、あるいは「せっかく始めたNISAの資産が減ってしまうのでは」と心配になったりする方も多いようです。

30代の会社員Aさんもその一人です。「将来のために米国株への積立投資を始めましたが、円高になると評価額が下がると聞きました。損をする前に売ったほうがいいのか、それとも別の何かに投資すべきなのか、判断がつかず焦っています」と話します。

しかし、投資経験者の声や専門家の見解を整理すると、「円高は必ずしも悪いことばかりではない」という事実が見えてきます。実は、円高になることで「安く買えるチャンス」が生まれたり、「業績が上がりやすくなる日本企業」があったりと、家計にとってプラスになる側面も多いのです。

本記事では、難しい経済用語はできるだけ使わず、円高が家計や資産に与える影響を整理します。「円高になったらどうすればいい?」という疑問を解消し、為替の変動を味方につけるための基礎知識を解説していきます。

そもそも「円高」とは何か?家計・投資にどう関係するのか

「円高・円安」という言葉は毎日のように耳にしますが、いざ「どうして円が高いと“円高”と言うの?」と聞かれると、混乱してしまう人は少なくありません。まずはこの仕組みを、家計のお財布事情に置き換えて整理しましょう。

円高・円安の意味を家計に例えるとどうなる?

「円高」とは、文字通り「日本円の価値(パワー)が、外国の通貨に対して高くなること」を指します。

もっとも分かりやすいのは、海外旅行や海外のネットショッピングの例です。たとえば、アメリカで1個1ドルのリンゴを買う場面を想像してください。

  • 1ドル=150円のとき:
    リンゴを1個買うのに、日本円で150円払う必要があります。
  • 1ドル=100円のとき:
    リンゴを1個買うのに、日本円で100円払えば済みます。

この場合、同じ「1ドルのリンゴ」を手に入れるのに、少ない日本円(100円)で済むようになった状態が「円高」です。「日本円の価値が上がったので、少ない金額で海外のものが買えるようになった=円の力が強くなった」とイメージすると分かりやすいでしょう。

逆に、多くの日本円(150円)を払わないと買えない状態が「円安」です。

円高になると「海外のモノが安くなる」構造

この「円のパワーが強くなる」という現象は、私たちの家計に直接的なメリットをもたらすことがあります。

日本は食料品やエネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼っています。円高になると、海外から商品を仕入れる際のアコスト(輸入コスト)が下がります。これにより、以下のような変化が期待できます。

  • 輸入品の値下げ: 海外ブランドのバッグや衣類、輸入ワインやチーズなどが安く買えるようになる。
  • エネルギー費の抑制: 原油や天然ガスの輸入価格が下がれば、電気代やガス代、ガソリン価格の上昇が抑えられる可能性がある。
  • 海外旅行がお得に: 現地での食事や買い物が、日本円換算で割安になる。

家計の「支出」という側面だけを見れば、円高は生活費を抑える助けになるケースが多いのです。

投資における“円高の3つの基本影響”

一方で、資産形成や投資の視点では、円高は「嬉しいこと」と「注意すべきこと」の両面を持っています。大きく分けて3つの影響があります。

  1. 海外資産の価値が目減りして見える(注意点)
    米国株や全世界株式(オールカントリー)など、外国の資産を持っている場合、現地の株価が変わらなくても、円高になるだけで日本円に換算した金額は減ってしまいます。これが、冒頭のAさんが不安に感じているポイントです。
  2. 輸入企業の利益が出やすくなる(メリット)
    原材料を安く仕入れられるようになるため、輸入を中心とする企業の業績が上がりやすくなります。これは、特定の日本株にとっては追い風となります。
  3. 輸出企業の利益が減りやすくなる(注意点)
    自動車や機械メーカーなど、海外で商品を売って外貨を稼いでいる企業は、その外貨を日本円に戻すときに受取額が減ってしまいます。日本の大企業には輸出型が多いため、ニュースでは「円高=企業業績悪化」と報じられることが多くなります。

このように、円高は「家計にとっては支出減のチャンス」である一方、「保有している海外資産の評価額にはマイナス」という二面性を持っています。次章からは、この特徴を踏まえた上で、具体的にどのような資産や銘柄が円高に強いのかを見ていきましょう。

円高になると株価はどう動くのか?3つのパターンで整理

「円高になると日経平均株価が下がる」というニュースをよく目にしますが、すべての企業の株価が下がるわけではありません。
為替の影響は、その企業が「誰に商品を売っているか(国内か海外か)」「材料をどこから仕入れているか」によって正反対の結果になります。大きく3つのパターンで見ていきましょう。

① 輸入企業(原材料・エネルギーなど)が有利になりやすい

もっとも分かりやすく「円高メリット」を受けるのが、原材料を海外から輸入して、商品を日本国内で販売している企業です。

前章の「リンゴ」の例と同じく、海外から小麦、肉、原油、木材などを仕入れるコストが安くなるため、利益が出やすくなります。利益が増えれば、株価も評価されやすくなる(上がりやすくなる)傾向があります。

  • 主な業種: 食品メーカー、電力・ガス会社、製紙会社、家具・インテリア販売など
  • 家計への影響: これらの企業のコストが下がると、長期的には電気代の値下げや、食品の値上げ抑制につながる期待が持てます。

② 内需・サービス系企業が相対的に安定しやすい理由

「内需(ないじゅ)」とは、国内の需要のことです。日本国内でサービスを提供し、売上のほとんどを国内で立てている企業は、為替変動の直接的な影響を受けにくいという特徴があります。

円高によって輸出企業の株価が下がるとき、投資家の資金は「より安全で業績が読みやすい企業」へと逃避することがあります。その受け皿として、内需株が相対的に人気を集めることがあります。

  • 主な業種: 通信(携帯キャリア)、鉄道、小売(スーパー・ドラッグストア)、建設、情報通信(ITサービス)など
  • ポイント: 大きく株価が跳ね上がるというよりは、景気や為替に左右されず「守りに強い」投資先として見られることが多いです。

③ 輸出企業は円高でなぜ不利になりやすいのか

ニュースで「円高で株安」と言われる主因がこれです。自動車、電気機器、精密機械など、日本の代表的な大企業の多くは、製品を海外へ輸出して稼いでいます。

円高になると、海外で稼いだ「ドル」などの外貨を日本円に両替する際、手元に残る金額が減ってしまいます(為替差損)。
たとえば、海外で1万ドルの車を売った場合:

  • 1ドル=150円(円安)なら: 売上は150万円
  • 1ドル=100円(円高)なら: 売上は100万円

同じ台数を売っても、円高になるだけで売上が50万円も消えてしまう計算になります。これにより業績予想が下方修正され、株価が下がりやすくなるのです。

円高で“価格が上がりやすい”投資先(資産クラス別)

次に、株(個別銘柄)以外の資産について見ていきます。「円高になると資産が減る」と心配されがちですが、視点を変えれば「これから投資を始める人」や「買い増しをしたい人」にとっては絶好のバーゲンセールになります。

海外資産の価格がどう変わる?(米国株・ETF・外貨預金)

S&P500やオールカントリー(全世界株式)などの投資信託を持っている方にとって、円高は「日本円での評価額が下がる」要因です。

しかし、これはあくまで「円に換算した場合」の話です。
もしあなたが積立投資の途中であれば、円高は「同じ金額で、よりたくさんの口数(株数)を買えるチャンス」に変わります。

状態 すでに持っている資産 これから買う資産(積立など)
円高 円換算の評価額は下がる
(気分の落ち込みに注意)
安くたくさん買える
(将来の利益の種まき)
円安 円換算の評価額は上がる
(利益が出て嬉しい)
高くて少ししか買えない
(購入効率はダウン)

「資産形成期」にある現役世代にとっては、円高局面は「量を仕込む時期」としてポジティブに捉えるのが、長期投資のセオリーとされています。

コモディティ(原油・金)の円建て価格はどう動く?

金(ゴールド)や原油などのコモディティ(商品)は、国際的には「ドル」で取引されています。そのため、私たちが日本で買う「円建ての金価格」は、為替の影響を強く受けます。

  • 基本的な動き: 円高になると、日本円で買う金(ゴールド)の価格は下がりやすくなります。
    (※ドル建ての金価格自体が急騰している場合は別です)

これまで「金が高すぎて手が出ない」と諦めていた方にとっては、円高が進むと購入のハードルが下がります。守りの資産として金をポートフォリオに加えたい場合、円高局面は購入検討のタイミングと言えるでしょう。

旅行・輸入品好きママが得しやすい分野も解説

金融資産ではありませんが、家計全体を「資産」と捉えると、円高で価値が上がるものがあります。それが「海外体験」や「輸入品」へのアクセス権です。

  • 海外旅行: ホテル代、食事代、現地ツアー代が割安になります。円安で行くのをためらっていたハワイやヨーロッパ旅行の計画を立てるには良い時期です。
  • ブランド品・輸入家具: 海外通販サイトを利用したり、並行輸入品を購入したりする場合、円高還元で価格が下がることがあります。

「投資で損をした(評価額が減った)」と嘆くのではなく、「浮いたコストで家族の思い出(旅行)という資産を買う」と考えるのも、円高を賢く乗りこなす一つの視点です。

円高で株価が上がりやすい“国内銘柄・セクター”

前の章で、円高は「輸入企業」や「内需企業」にとって追い風になりやすいと解説しました。では、具体的にどのような業種(セクター)に注目すればよいのでしょうか。
代表的な3つの分野と、自分で銘柄を探すときのポイントを紹介します。

輸入比率の高い企業(食品・外食・小売)

原材料の多くを海外から仕入れている企業は、円高によるコストダウンの恩恵を最も受けやすいグループです。

  • 食品メーカー: 小麦、大豆、コーヒー豆、食用油などの原料価格が下がると、利益率が改善します。パン、製菓、ハム・ソーセージなどのメーカーが該当します。
  • 外食チェーン: 牛肉やワイン、チーズなどを大量に輸入しているレストランチェーンや、牛丼チェーンなどは、仕入れコストが下がることで業績が安定しやすくなります。
  • ニトリなどの小売業: 「製造小売業(SPA)」と呼ばれる、海外の工場で製品を作って輸入・販売するビジネスモデルの企業も、円高メリット銘柄の代表格としてよく挙げられます。

資源価格下落の恩恵を受ける産業(化学・電力など)

原油やナフサ、LNG(液化天然ガス)などのエネルギー資源を大量に使う産業も、円高メリットを享受します。

  • 電力・ガス会社: 燃料の輸入価格が下がるとコスト負担が軽くなります。ただし、電気料金には燃料費調整制度があるため、コスト減がそのまま即座に莫大な利益になるわけではありませんが、財務体質の改善には寄与します。
  • 製紙・パルプ・化学: 製造工程で多くのエネルギーを使ったり、原油由来の原料を使ったりするため、エネルギー価格の実質的な下落はプラス要因となります。

内需中心で為替影響が小さいセクター(通信・医療など)

「円高で儲かる」というよりは、「円高でも業績が崩れない」という安心感から買われるのがこのセクターです。これを「ディフェンシブ(守りの)銘柄」と呼ぶこともあります。

  • 情報通信(携帯キャリアなど): 景気や為替に関わらず、スマホの通信料収入は一定です。配当金が高い企業も多く、安定志向の投資家に好まれます。
  • 医薬品・ヘルスケア: 薬や医療への需要は景気に左右されにくいため、為替変動時の避難先として選ばれやすい傾向があります。

“円高メリット株”の見つけ方(財務指標・輸入比率のチェック法)

自分で銘柄を探してみたい場合、ニュースや四季報などで以下のキーワードに注目してみましょう。

  1. 「円高メリット」の記載があるか:
    会社四季報のコメント欄に「円高恩恵」「輸入採算改善」といった言葉があるかチェックします。
  2. 海外売上高比率が低いか:
    証券会社のアプリやサイトで確認できます。「海外売上比率」が低く(例えば20%以下)、かつ原材料を輸入している企業は、円高のポジティブな影響を受けやすいと言えます。
  3. 想定為替レートとのギャップ:
    企業はあらかじめ「今年は1ドル=〇〇円くらいだろう」と予想して業績計画を立てています(これを想定為替レートと言います)。
    実勢レートが想定レートよりも円高に進んだ場合、輸入企業にとっては「予想以上にコストが浮く」ことになり、業績の上振れ要因になります。

円高局面で投資判断をするときの注意点

「円高メリット株を買えば安心」かというと、投資はそう単純ではありません。特に家計を守りたい子育て世代が陥りがちな落とし穴があります。

急激な円高は株価全体にはマイナスになることも

「輸入企業は円高で有利」というのはあくまで理屈の話です。実際には、急激すぎる円高が進むと、日本経済全体への不安が広がり、メリットがあるはずの輸入企業も含めて「日本株全体が売られる(全面安)」という事態になることがよくあります。

「円高だからこの株は上がるはず」と思い込まず、「市場全体がパニックになっているときは、どんな良い株も下がる可能性がある」と理解しておくことが大切です。

為替単独ではなく「金利・景気」もセットで見るべき理由

為替(円高・円安)は、株価を動かす要因の一つに過ぎません。
例えば、円高になっていても、同時に「不景気でモノが売れない」状態であれば、いくら仕入れコストが下がっても企業の利益は増えません。
また、円高になる背景には「アメリカの金利が下がった」「日本の金利が上がった」といった金利の変化が関係していることが多く、この「金利」の動きの方が、株価にはより大きなインパクトを与えることがあります。

子育て家庭が気をつけたい“短期の値動きに振り回されるリスク”

もっとも避けたいのは、ニュースを見て「円高で資産が減るのが怖いから、積立投資をやめる・売却する」という行動です。

H2-3でも触れましたが、資産形成層にとっての円高は「積立のボーナスタイム」です。
短期的な評価額のマイナスを見て不安になり、慌てて円高メリット株へ乗り換えたり、投資をやめてしまったりすると、往復の手数料や税金で損をするばかりか、将来得られるはずだったリターンを手放すことになりかねません。

「家計防衛のための投資」は、為替の波に一喜一憂せず、淡々と続けることが最強の戦略であることを忘れないでください。

家計と投資をつなげる「円高の使い方」

最後に、投資だけではない「円高の家計活用術」について触れておきます。円高を「不安要素」から「生活を豊かにするツール」へと考え方を変えるヒントです。

旅行・教育費・買い物など“円高で家計が助かる分野”

円高は、海外と関わる支出がある家庭にとっては大きな味方です。

  • 教育費(留学・海外研修):
    お子さんの海外留学やホームステイを考えている場合、円高の時期に学費や滞在費を支払うと、数十万円〜数百万円単位で負担が減ることがあります。外貨預金口座に、円高のタイミングで学費分のドルを移しておくのも賢い手です。
  • エネルギー関連支出:
    直接的な値下げには時間がかかりますが、円高基調が続けばガソリン代や冬場の光熱費の急騰リスクが下がります。この浮いた分を貯蓄に回す意識を持つことが大切です。

投資の買い増しタイミングをどう考えるか

「円高だから投資を始めたい・買い増したい」という場合、一括で全財産を投じるのは避けましょう。為替はプロでも予測が難しく、さらに円高が進む(さらに安くなる)可能性も十分にあるからです。

おすすめは、「つみたて額を少し増やす」あるいは「資金を数回に分けて買う(時間分散)」方法です。「先月より安く買えたからラッキー」くらいの感覚で、淡々と買い付けるのが長く続けるコツです。

パパとママの価値観の違いをどう活かす?“家族会議”のススメ

家庭内では、夫婦で円高の捉え方が違うことがよくあります。

  • 理論派(パパなど):「円高で米国株の含み益が減った…どうしよう」と画面上の数字を見て落ち込む。
  • 生活実感派(ママなど):「海外旅行に行きやすくなった!輸入チーズが安い!」と消費面でのメリットを感じる。

このズレは悪いことではありません。投資で気分が落ち込んでいるときは、消費のメリットを楽しめば良いのです。「株は下がったけど、その分今度の旅行は少し贅沢しようか」と話し合うことで、家計全体としてのバランスと心の安定を保つことができます。

まとめ:円高を“怖いニュース”から“家計の味方”に変える視点

ここまで、円高が家計や投資に与える影響を見てきました。ポイントを振り返ります。

  • 円高=「円のパワーが強い」状態: 輸入品やエネルギーコストが下がり、家計の支出にはプラスになる側面がある。
  • 株価への影響は二極化: 輸出企業(自動車など)には逆風だが、輸入企業(食品・電力)や内需企業には追い風になることもある。
  • 資産形成中の人にはチャンス: 海外資産(投資信託など)の評価額は下がるが、積立投資においては「安くたくさん買える」仕込み時。
  • 焦って売らない: 短期的な値動きで投資をやめるのが一番のリスク。「長期・分散・積立」の原則を崩さないことが大切。

ニュースで「円高」という言葉を聞いたら、不安になる必要はありません。「今は将来のための種まき時期だ」「今夜の食卓には輸入品を取り入れてみようかな」と、ポジティブな側面に目を向けてみてください。

為替の波をコントロールすることは誰にもできませんが、その波をどう乗りこなすか、家計での対応策を決めておくことはできます。正しい知識を武器に、どっしりと構えた資産形成を続けていきましょう。

-お金を増やす(資産運用の基本)