お金を増やす(資産運用の基本)

円安で下がる資産とは?国内株・投資先の弱点と対策を家庭目線でわかりやすく整理

「ニュースでは『円安で株価上昇』と言っているのに、自分の持っている株や投資信託は全然増えていない…」

将来のお金に不安を感じて資産形成を始めたものの、このような「世間のニュースと手元の資産状況のズレ」にモヤモヤしている方は少なくありません。特に為替(円高・円安)と株価の関係は、教科書通りにいかないケースが多く、判断が難しいポイントです。

実際によくある悩み(30代会社員・Aさんの場合)

「将来のためにと、人気ランキング上位の国内株ファンドを積み立てていました。でも最近の円安ニュースの割に、成績はマイナス。『円安=日本株買い』じゃないんですか? 損切りすべきか悩みます…」

Aさんのように「円安ならすべての日本株が上がる」と誤解してしまい、知らないうちに円安に弱い資産ばかりを抱えてしまっているケースは珍しくありません。

SNSなどの口コミでも、「円安対策で外貨を買ったつもりが、手数料負けした」「内需株(国内向け企業)を持っていたら業績が悪化した」といった、仕組みを理解しきれずに損をしたという声が散見されます。

本記事では、難しい専門用語はできるだけ使わず、「なぜ円安で下がる資産があるのか」という仕組みと、「具体的に注意すべき銘柄・投資先の特徴」を整理します。ここを押さえれば、ニュースに振り回されず、家計を守るための堅実な判断ができるようになります。

なぜ円安で“下がる資産”があるの?仕組みを直感的に理解する

まず、「円安になると株が上がる」といわれる一般的な理屈と、実際には「下がる資産」が存在する理由を整理しましょう。ここを理解すると、投資の景色がガラリと変わります。

円安=日本の資産が全部上がるわけではない

ニュースでよく聞く「円安で日経平均株価が上がった」というフレーズ。これは主に、日本を代表する輸出企業(自動車メーカーなど)が、円安のおかげで利益を大きく伸ばすためです。

しかし、すべての日本企業が輸出をしているわけではありません。むしろ、私たちの生活に身近な企業の多くは、海外から原材料を輸入してビジネスをしています。制度上明らかなのは、「輸入コストの増加」は企業にとって大きなダメージになるということです。円安は、立場が違う企業にとっては「利益を削り取る向かい風」となります。

実はシンプル!「円安に弱い企業」の共通点

円安で株価や価値が下がりやすい資産には、明確な共通点があります。

  • 材料を輸入している(海外からドルで買っている)
  • 商品を国内で売っている(日本円で稼いでいる)
  • 値上げがしにくい(お客さんが値上げに敏感)

この3条件が揃うと、円安が進めば進むほど「仕入れは高いのに、売上は増えない」という状態になり、利益が圧迫されます。結果として、株価の下落につながりやすくなります。

【図解】パパの理屈:為替と企業のお財布事情(収益構造)

少し論理的に、「企業の収益構造」から見てみましょう。例えば、1ドル=100円の時と、1ドル=150円の時で、同じ1ドルの材料を輸入する場合を比較します。

項目 1ドル=100円の時 1ドル=150円の時 変化
輸入コスト 100円 150円 50円コスト増
販売価格 200円 200円(据え置き) 変化なし
利益 100円 50円 利益半減

このように、販売価格を変えられなければ、円安になった分だけダイレクトに利益が減ります。投資家は「この会社は利益が減る(=配当や成長が期待できない)」と判断し、株を売るため、株価が下がるのです。

ママの納得:要するに「家計の輸入」と同じことが起きている

これを家計に置き換えてみると、もっと直感的にわかります。

  • スーパーで買う小麦粉や食用油、電気代が値上がりしている(=輸入コスト増)
  • でも、お父さんのお小遣い(給料)は急には増えない(=販売価格据え置き)
  • 結果、家計の貯金(利益)が減ってしまう

これと同じことが企業でも起きています。「家計が苦しい円安」の時は、同じような構造を持つ「国内向けの企業」も苦しいとイメージすると、非常に分かりやすくなります。

円安で株価が下がりやすい“国内銘柄の特徴”リスト

仕組みがわかったところで、具体的に「どのような業種・銘柄」が円安で弱くなりやすいのかを見ていきましょう。ご自身の保有している株や、投資信託の構成銘柄にこれらが含まれていないかチェックしてみてください。

輸入コストが直撃する企業(食品・外食・小売)

私たちの生活に最も身近なこのセクターは、典型的な「円安デメリット」銘柄です。

  • 食品メーカー:小麦、大豆、コーヒー豆など、原材料の多くを輸入に頼っています。
  • 外食チェーン:輸入食材(牛肉、チーズ、野菜など)の価格高騰に加え、輸送コストの上昇も重くのしかかります。
  • 小売(100円ショップ・家具など):海外で安く生産・仕入れをして日本で売るビジネスモデルは、円安になると仕入れ値が跳ね上がり、薄利多売が維持できなくなります。

原材料を海外に依存する製造業(化学・紙パルプ・日用品)

工場で作る製品の「元」となる素材を輸入している企業も苦戦します。

  • 製紙・パルプ:紙の原料となるチップやパルプは輸入比率が高く、コスト増要因となります。
  • 化学・繊維:原油由来のナフサなどを輸入して加工するため、原油高と円安のダブルパンチを受けやすい傾向があります。

これらは企業向けの製品(BtoB)も多いため、私たち消費者には見えにくいですが、株価には敏感に反映されます。

エネルギー価格高騰で利益が削られるセクター(電力・ガス・運送)

日本はエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っています。

  • 電力・ガス会社:火力発電の燃料(LNGや石炭)を輸入しています。「燃料費調整制度」で料金に転嫁する仕組みはありますが、急激な円安には追いつかず、一時的に巨額の赤字を出すことがあります。
  • 運送・航空:トラックや飛行機の燃料は輸入頼みです。特に航空会社は、機体のリース料などもドル払いであることが多く、円安は大きなコスト増要因となります。

値上げ(価格転嫁)が難しい内需中心の企業

「コストが上がったら値上げすればいい」と思うかもしれませんが、そう簡単ではありません。特に日本国内のみでビジネスをしている企業(内需株)は、お客さんが「給料の上がらない日本の消費者」であるため、値上げをすると客離れを起こすリスクがあります。

値上げに踏み切れず、企業側がコスト増を我慢して飲み込む(利益を削る)パターンに陥りやすいのが、このセクターの弱点です。

【共通点】これらは「コスト増」を吸収しきれないのが弱点

整理すると、円安で下がりやすい銘柄の本質は「輸入コストの増加を、商品価格に転嫁しきれない」という点に尽きます。

逆に言えば、同じ食品メーカーでも「海外売上比率が高い(海外でも売っている)」企業や、「圧倒的なブランド力があって値上げしても売れる」企業は、円安でも株価が下がらない(むしろ上がる)ことがあります。「食品=全部ダメ」と決めつけず、「この会社は誰に売っているのか? 値上げできる強さはあるか?」を見極める視点を持つことが重要です。

株だけじゃない!円安局面で“価値が下がる”意外な投資先

「私は株をやっていないから関係ない」「投資信託にお任せしているから大丈夫」と思っていませんか?実は、株式の個別銘柄以外にも、円安によって価値が目減りしたり、思ったような利益が出なかったりする資産があります。

海外資産なのに下がる?「為替ヘッジあり」の投資信託の落とし穴

海外の株式や債券に投資する投資信託には、「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」の2種類があります。ここが大きな分かれ道です。

  • 為替ヘッジなし:円安になると、その分だけ日本円での評価額が増えます(円安メリットあり)。
  • 為替ヘッジあり:為替の影響をなくす仕組みですが、円安の恩恵を受けられません。さらに、日米の金利差が開いている局面では、「ヘッジコスト」という手数料のようなコストが重くのしかかります。

読者からの相談で多いのが、「海外債券ファンド(為替ヘッジあり)を持っていたら、基準価額がズルズル下がっている」というケースです。これは、円安の利益を放棄している上に、高いヘッジコストが引かれているため、手元に残る利益が減ってしまっているのです。

円安の副作用?国内債券の実質価値と価格下落リスク

「安全資産」とされる日本国債や国内債券ファンドも、円安局面(特に金利上昇を伴う場合)では注意が必要です。

一般的に、円安が進み、日銀が利上げ(金利を上げる政策)を行うと、債券の価格は下がるというシーソーの関係にあります。「元本割れしないから安心」と思っていても、物価が上がっているインフレ下では、「100万円で買えるものの量」が減ってしまう(実質価値の低下)という隠れた損失が発生している点にも目を向ける必要があります。

金(ゴールド)も要注意?ドル建てと円建てのズレ

「有事の金」と言われますが、金は基本的に「ドル」で取引されます。そのため、「ドル建ての金価格」が下がっていても、円安のおかげで「日本円での金価格」は上がっているという現象がよく起きます。

これ自体は悪いことではありませんが、逆に「円高」に触れた瞬間、金価格そのものが変わらなくても、日本円での評価額が一気に下がることがあります。「金は絶対に安全」と過信せず、為替の影響を強く受ける資産であることを理解しておきましょう。

見落としがちな「現金(日本円)」の実質価値低下

最も影響を受けるのは、実は「銀行に預けたままの日本円」かもしれません。

例えば、1ドル100円の時に100万円を持っていたら、海外旅行で1万ドル使えました。しかし、1ドル150円の円安になると、同じ100万円でも約6,600ドルしか使えません。海外旅行に行かなくても、エネルギーや食料品の値上げを通じて、日本円の購買力(買える力)は確実に下がっています。「投資をしないこと=リスクゼロ」ではなく、「日本円だけに集中投資しているリスク」があると言えます。

円安局面で“損しにくい”家計防衛の投資術(対策)

円安で弱くなる資産がわかったところで、次は「どうすれば資産を守れるか」という対策を整理します。プロのような複雑な取引は必要ありません。家庭レベルで実践できる、堅実な「守りの投資」の考え方を紹介します。

企業の「中身」を見る癖をつける(輸入依存度と値上げ力)

国内株に投資する場合や、日本株ファンドを選ぶ際は、企業の「稼ぎ方」に注目しましょう。

  • 海外売上比率は高いか?:売上の多くを海外で稼いでいる企業(自動車、精密機器、ゲームなど)は、円安が追い風になります。
  • 値上げ(価格転嫁)ができているか?:ニュースリリースなどで「価格改定」のお知らせを出し、それでも客離れが起きていない企業は、コスト増を吸収できる「強い企業」です。

「知っている会社だから」という理由だけで選ぶのではなく、「円安でも稼げる仕組みがあるか」を一歩踏み込んで確認するのがポイントです。

資産クラスを分散する(円安メリット資産×円高メリット資産)

将来、円安が進むか円高に戻るかは、専門家でも予測できません。だからこそ、どちらに転んでも大怪我をしない「分散」が最強の防御策になります。

  • 円安に備える:外国株式(S&P500や全世界株)や外貨建て資産を持つ。「為替ヘッジなし」を選ぶことで、円安時に資産が増える効果(円安ヘッジ)が期待できます。
  • 円高に備える:日本円(預金)や国内資産を持つ。

これらをバランスよく持つことで、「円安になれば外貨資産が増え、円高になれば日本円の価値が守られる」という、どちらのシナリオでも対応できる家計を作ることができます。

為替ヘッジを使うべき人、使うべきではない人

H2-3で触れた「為替ヘッジ」ですが、すべてが悪ではありません。目的によって使い分けることが重要です。

タイプ おすすめの選択 理由
長期的な資産形成をしたい人 為替ヘッジなし 長期的には為替コストが負担になる。円安リスクへの備え(分散効果)を優先すべき。
短期的に使う予定がある資金
(数年後の学費など)
為替ヘッジあり
または円預金
直前の急激な円高で元本が減るのを避けたい場合。ただしコストには注意。

多くの現役世代(資産形成層)にとっては、「為替ヘッジなし」が基本の選択肢となるケースが一般的です。

投資初心者におすすめの「負けないポートフォリオ」の考え方

「結局、どう組み合わせればいいの?」と迷う方には、全世界株式(オールカントリー)などの「世界中に丸ごと投資するファンド」を核にすることをおすすめします。

これ一本で、円安に強い海外企業と、国内企業の両方に分散投資ができます(比率は海外が圧倒的に多いですが)。その上で、生活防衛資金としての「日本円(預金)」をしっかり確保しておく。「全世界株ファンド + 日本円(現金)」。このシンプルな組み合わせこそが、初心者でも管理しやすく、円安・円高の波に左右されにくい、王道の「家計防衛ポートフォリオ」と言えます。

【シミュレーション】もしも円高に戻ったら?シナリオ別比較表

「今は円安だから外貨を持てばいい」と安易に考えると、相場が逆転した時に痛い目を見ることになります。為替は水物(みずもの)であり、プロでも正確な予測は不可能です。ここでは、「円安が進むケース」と「円高に戻るケース」の両方で、資産がどう動くかを整理してみましょう。

家計と投資へのインパクト整理(円安継続 vs 円高反転)

パパとママが家庭会議をするように、家計全体で見てみましょう。

  • シナリオA:さらに円安が進む(1ドル=160円、170円…)
    • 家計(生活費): 輸入品(食料、エネルギー)が高騰し、生活費の負担が増えます。日本円の価値が下がり、貯金の実質的な目減りが続きます。
    • 投資資産: 外国株や輸出企業の株価は上がりやすく、資産が増えることで家計のマイナスを補填できます(インフレヘッジ)。
  • シナリオB:円高に戻る(1ドル=130円、120円…)
    • 家計(生活費): 輸入品が安くなり、ガソリン代や電気代も落ち着くため、生活が楽になります。
    • 投資資産: 外貨建て資産(米国株など)の評価額は下がります。しかし、生活費が浮く分で新たな投資に回す余裕が生まれます。

一目でわかる!円安で得する資産/損する資産の一覧表

それぞれの局面で、どの資産が強さを発揮するのかを表にまとめました。

資産クラス 円安になった時 円高になった時 特徴
外国株式
(S&P500など)
◎ 上昇 △ 下落 為替の影響をダイレクトに受ける。円安対策の主力。
国内・輸出株
(自動車など)
○ 上昇 △ 下落 海外売上が大きいため、円安で業績アップ。
国内・内需株
(食品・小売など)
× 下落・苦戦 ○ 上昇・安定 輸入コストが下がる円高局面で利益が出やすい。
日本円(現金) × 価値低下 ◎ 価値上昇 購買力が戻る。円高時は「最強の資産」になる。
金(ゴールド) ○ 上昇 △ 横ばい~下落 ドル建て価格次第だが、円高は逆風になりやすい。

家庭の投資戦略に落とし込む方法

この表からわかる重要な事実は、「どれか一つに賭けると、予想が外れた時に生活が脅かされる」ということです。

  • 「円安が怖いから全部外貨にする」→ 円高になった時に資産が激減する。
  • 「損したくないから全部日本円にする」→ 円安が進むと、物価高でジリ貧になる。

正解は、「円安に強い資産(外国株など)」と「円高に強い資産(日本円・国内内需株)」を両方持っておくことです。これが、プロが口を酸っぱくして言う「分散投資」の本当の意味であり、家庭を守るための最も確実な戦略です。

まとめ|円安に強い・弱い資産を知ると、投資の軸がブレない

最後に、本記事のポイントを振り返ります。

円安=全部上がる/全部損する、ではない

ニュースの見出しだけを見て一喜一憂する必要はありません。「円安」はあくまで一つの現象であり、それによって利益が出る企業もあれば、苦しむ企業もあります。重要なのは、「自分の持っている資産は、どっちのタイプか?」を知っておくことです。

構造で理解すれば、ニュースに振り回されない

「輸入コストが増える企業は弱い」「海外で稼ぐ企業は強い」。このシンプルな理屈(構造)さえ頭に入っていれば、株価が下がった時も「今は円安だから、このセクターには逆風なんだな。企業の力がなくなったわけじゃないから、静観しよう」と、冷静な判断ができるようになります。

今後の投資判断への示唆

もし今、手元の資産が円安でマイナスになっていたとしても、すぐに売るのが正解とは限りません。相場が循環して円高局面に入れば、今度はその資産が輝く番が来るかもしれないからです。

明日からのアクションとして、まずは「自分の資産の内訳(ポートフォリオ)」を確認してみましょう。日本円だけ、あるいは特定の国内株だけに偏っていませんか?「世界全体」に分散し、通貨も「円とドル(外貨)」に分ける。このシンプルな基本に立ち返ることが、将来の安心への第一歩です。

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